588話 西海岸ダンジョン――ボス、クリア
――もくもくとした煙が、晴れていく。
衝撃が伝わらないように――僕自身もそうだけど、それぞれの戦艦さんや、ちょっとだけ離れたところの小さい駆逐艦さんたちもまた木っ端みじんになっちゃわないように展開していた防御のおかげで無事の様子。
うん、僕だって学習するよ。
るるさんを最初に助けたときもゼロ距離射撃で吹っ飛ばされて気を失いかけたし、それ以外にもいろいろあったし。
何かあってもノーネームさんがないないしてくれるらしいけども、負担はかけたくないし。
煙が――晴れる。
「……ごめんなさい、ティラノさん」
それを見た僕は、警戒を完全に解いた。
ティラノさんの居た場所――海中から突き出している、まるで氷山みたいな物体。
でっかいでっかい魔石が――「ダンジョン最深部でボスを撃破したときと同じように」、そびえていた。
謝った声も、きっと届いていない。
でも、話しかける。
そのうちどこかに届くって、信じてるから。
「また、どこかで会いましょう。……次は、お話相手として」
そのお返事は、もう、無い。
彼は完全に、この世界から消え去ったから。
彼は完全に、この世界から帰ってたから。
【………………………………】
【………………………………】
【なぁ】
【ああ】
【倒した……?】
【ああ……】
【本当に、あんなマジのバケモンを……?】
【おう】
【ハルちゃんと5隻の戦艦でのゼロ距離射撃でな】
【違うぞ、それまで戦ってきた他の船や船員たちもだぞ】
【町で逃げ惑うだけだった人たちも、1秒でも引きつけたんだ】
【そうだったな】
【うん……倒したんだ】
【………………………………】
【………………………………】
【………………………………倒したぁぁぁぁぁ!!】
【ああああああああ!!!!】
【長かった……長かった……】
【強すぎだよあのガッドなジーラ!!】
【ティラノさんだよ?】
【魔王よりも魔王らしかった魔王】
【単純な力の恐怖だったよなぁ】
【Gよりしぶとかったもんな!】
【草】
【Gみたいに自爆魔法とかはしてこなかったか】
【あれはGがしつこすぎたからだよ】
【Gはハルちゃんが好き過ぎて、最後までハルちゃん自身へは本気で攻撃できなかったはずだから……】
【一方的に迫ってフラれたから心中しようとしてきてたストーカーだったもんな、あの炭火焼きは!】
【草】
【草】
【何回でもいじられる魔王G】
【ハルちゃんのこと好きな人ほどヘイト溜めまくったからね】
【当時はまだ女神だとか分からなかったしなぁ】
【始原は血の涙を流しながら憎みました】
【でも「ごんっ」ですっきりしたよ】
【ハルちゃんがたまーに思い出すレベルでしか覚えてないのもポイントだな!】
【草】
【始原が役に立たなくて草】
【ひどくない!?】
【そうだぞ、あれがあったから予定どおりにノーム様が生まれ直したんだし……あっ】
【あっ】
【キーボードから手を離せバカ】
【!?】
【待って!? 今何言った始原!?】
【ピーヒョロ】
【ガー】
【ザー】
【wi-fi】
【非通知】
【草】
【草】
【ノーネームちゃん!!】
【いろいろと間違えてるぞノーネームちゃん!!】
【おもしれー女神】
【でもさ、ノーネームちゃんがへたくそな誤魔化し方してるってことは本当なんだな……今の……】
【あっ】
【草】
【あーあ】
【そうだよな、ノーネームちゃん、ウソつくのヘタすぎるから……】
【え? 神様って生まれ直せるの?】
【※ノーネームちゃん、ハルちゃんとちゅーしてセルフ百合妊娠出産でハルちゃんそっくりになってました】
【あっ】
【草】
【え、あれガチで? 冗談じゃなくって?】
【ノリで言ってただけ……ゑ?】
【もしかして:ノーネームちゃん、元は双子女神→何かがあって体がないない状態→ドラゴンさんに変身してハルちゃんを守るついでにいちゃついた→Gに倒されたけど生まれ直した が、ネタじゃなくて本当にそうだった説】
【もはや神話だな……】
【俺たちはこれまでもこれからも、ずっと神話を目の当たりにしている】
【壮大すぎて感覚追いつかないはずなのに理解できちゃう】
【※ハルちゃんのカメラさんのおかげです 主にハルちゃんが異世界に行ってからずっと大活躍してたMVPです マジで】
【カメラさん……!】
【カメラさんまじかっこいいっす!】
【草】
【良かったねハルちゃん、リリちゃん助けるためにお高い機材買ったおかげで長持ちしてるよ!】
【過酷な1年半を耐え抜いてる奇跡のカメラさんだからな……】
【ハルちゃんの数々の攻撃の爆風とかを耐えきってるカメラさんだからな……】
【感動した】
【わかる】
【草】
【ハルちゃんがリリちゃん助けに行くときに買った新作がここまで役に立つとは】
【繋がってしまったな……】
【ああ……あのときの行動が、ここまでずっとな……】
【ハルちゃんの気まぐれが、ここまで役に立つとは……】
【やはりお猫様の気まぐれには頭を下げるしかないんだな】
【草】
【大丈夫? そのお猫様、頻繁に脱走するよ?】
【お酒とか飲むよ?】
【それはそれで……】
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




