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577話 残存戦力の、突撃

【え? このティラノさん、本当に11年前に倒せたの? 実はもしかしてまだ現代にも残ってるんじゃないの?】


【いや、そんな話はどこにも】

【だよなぁ】

【残ってたら間違いなく沿岸部襲い続けるから、数ヶ月後に回復した通信とかでも絶対に……】

【それに、今の西海岸どころか太平洋のどこも、破壊された痕跡は……】


【ノーネームちゃん、ハルちゃん……本当に大丈夫だよね……?】


――すごい魔力だった。


あれだけ追い詰めたのに、それでもここまでの――いや、おかしい。


いくらなんでも――それこそ、まるで無尽蔵としか思えない力。


だって、魔力は僕たちを構成する材料。

使い切っちゃったら、あんな巨体を維持できるはずがない。


だって現にノーネームさんだって手脚の再生にすごく掛かったんだから。


「……ノーネームさん。あれは一体」


「もって」

「きてる」


ぽつり。


目を見開いて――ばさばさと、広がりきった羽を風に任せ。


「まかい」

「まりょく」


「そんなことできるんですか」

「できる」


リリさんの胸の中からティラノさんを眺めながら――僕を見て、言う。


「――Iが、してる」


「ノーネームさんと、同じことを。……すごいんですね、ティラノさん」


【ふぁっ!?】

【ノーネームちゃんと同じ!?】

【ひぇぇ】

【え、ノーネームちゃん、今自分のこと「アイ」って】


――――どぉん。


「GA!?」


巨大な質量――砲弾が刺さり、大きくよろける恐竜さん。


その向こうは上下逆さまだった滝が重力に負けて、普通の滝になっている。


――その水のカーテンの中から、一筋の光。


次の弾が、発射される。


【お】

【おおおおお】

【生きてた!】

【そうだよな、9割ってことは1割は……!】


【船はな、戦車と違ってサイズが全然違うんだ  隻数が9割減でも、大打撃受けても残る艦種は――】


「……戦艦5隻は、中破以下なるものの……健在なり……! ただ、大和は右舷に直撃して浸水が止まらねぇか……」

「それ以外の戦艦も、ビームが貫通したりして……後方の空母も、衝撃波だけで大破……護衛艦も、もうほとんど……」


お兄さんたちが、顔を真っ青にしながら焦りながらそれでも嬉しそうに言うっていう、すごく器用なことをしながら教えてくれる。


――あと、少し。


あと、ほんの少しの攻撃が通れば。


「……本当に、乗員は……仲間は」


「はい。ノーネームさんが、時間はかかりますけど安全な場所に『ないない』してます。確実に、生きています。ね?」

「ないない」


わきわき。


よく見たら、さっきまでは二の腕の真ん中くらいまでしかなかった彼女の腕が、肘の先まで再生してきている――けども、その中から黒いもやもやを揺らめかせ、たぶんおどけて安心させるようにぱたぱたとしながら言う。


「……神よ!」

「そうだぞ、神様だぞこいつら」


「敬意の欠片もありませんね!?」

「ないない」


「神様ですけど万能なタイプのじゃないですね」

「ないない」


「あれです、精霊とか妖精とかケセランパサランとか、そんな感じです」

「ケセランパサラン!?」


「精霊……いえ、それでもここまでの存在は、もはや……」

「ないない」


「……! それでは、万能な神も実在すると!?」

「居ますね」


あれ?

居るんだっけ?


ああ、居るんだった。


けど、万能とはいっても厳密には万能じゃなくって、万能だったとしてもしょせんは1個の宇宙の中で万能ってだけで――――――


「?」


あれ?


なんで僕はこんなこと……ああ別にどうでもいっか、なぜか知ってるってのはお得でしかないんだし。


「はる」


「はい」


水しぶきが収まった先には――さっきまでは真横を向いて砲撃していた戦列が、こちらに縦を向けて前進してきている姿。


まるで海の中に出現した小山のような戦艦さん、その周囲を――前と横を固めたいけども数が少ない、数隻の小型艦。


それらの後方には、小さなボートで脱出している船員の人たちの姿。

けれど、全員じゃない。


――それらを振り切って煙をもくもくとさせながら進む姿は、決死の覚悟。


質量をもっての、突撃。

敵の体力がわずかだと分かってるからこその、自爆。


「………………………………」


でも、そんなのは。


【あああああ】

【戦艦が傾いてるぅぅぅ】

【けどまだ沈んでない!】

【泣いた】


【あれは大和か】

【だな】

【ないないされてないってことはまだ浮いてられるのか】

【あの攻撃で浮かんでるってすごいな】

【でも、後方が炎上してる……】


【……全艦、全速だな】


【ああ……】

【船艦が……沈むのか……?】

【ああ……】

【いくらないないされるとは言っても、この時点のこの人たちには確証はないし、なにより弾薬庫が爆発したら……】

【ボートに乗ってる人たち、手を振ってる……】


【昔の戦艦――海戦はな  船をぶつけての衝突――ラムが、攻撃手段だったんだよ  敵のどてっぱらを食い破っての、な】


――たんたんたんたんっ。


小型艦が、主砲を打ち始める。


まるで高回転の豆鉄砲――でも、ひとつひとつが戦車の主砲と同じくらい強いんだって、聞いたことがある。


ならきっと、わずかでもダメージは通るんだ。


「……みなさんに、頭部を狙うように伝えてください。もうちょっとで」


「1%」


「そこに残ってる、体力の1%を削り切れたら――勝てますから」


あと、ちょっと。

あと、ほんの少し。


僕が届かなかったところを――。


「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」

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― 新着の感想 ―
「I」?今後が楽しみなワードがまた一つ出てきましたね! ハルちゃんから漏れ出てる謎知識! 1%って聞くとかなり少なく見えるけど、実数値としては100ぐらいなのか、100万とかいったりするのか……
さぁどうなるかな?突貫でどうにかなるか、あっちの粘りが上か…
最後勇姿と戦艦の維持を見せ時とばかりにですわ!!
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