566話 お船ごとレベルアップらしい
「そんなに慌てなくてもノーネームさん――この子は大丈夫ですよ」
「ないない」
ぶらぶら。
気絶して真上向いてるリリさんに抱っこされたままで、赤ちゃんみたいにぱたぱたしている黒髪の子。
……いつも通りにへっちゃらそうだけども、
「でも、両手両脚をぷらぷらしながらそれ言うの、さすがの僕でも……」
「ないない……」
「元気そうなのは分かりましたからおとなしくしてましょうね」
「ないない」
「……これは、いわゆるパライソギャグというものなのか……?」
「おお、神よ……! 天使――堕天使のように見えるがきっと彼女もまた天使! 祝福あれ……!」
【草】
【ノーネームちゃん……】
【ノーネームちゃん、ほんと「ないない」好きよね】
【言葉の響きが好きなんだろうか】
【nai-nai?】
【やめて!!】
【それどころじゃないでしょ今は! 早くおててとあんよ治しなさい!!】
【草】
【おもしれー女神様で草】
【やっぱノーネームちゃん、愉快な性格してるよな】
【今さらでは……?】
意外とへっちゃらそうだから気にならなくなってきたノーネームさんのことはともかく、「ここがゲームみたいな世界ですよ」って伝えておく。
これから、民間のダンジョン潜りさんたちになる人たちと同じくらいに働き詰めに――や、身の回りが平和になってもずっと戦い続けるはずの軍人さんたちは、きっと大変なはず。
レベル上げをがんばってもらわないとね。
あ、でも、ダンジョンじゃないけど経験値効率とかはどんな感じなんだろ?
んー。
……やっぱ、ダンジョンの中に居るよりは上がりやすくない気がするけどなぁ。
「まぁとにかく、モンスター狩ってたらそのうち強くなれますから大丈夫です」
「ないない」
「ゲームと同じで、経験値です。パーティーと活躍で貯まります。レベルアップすると強くなります」
「ないない」
「なのでとにかく……乗ってる兵器で何度も同じように倒し続けてください。そうしたら、なんかこう……ダメージとか入りやすくなりますから」
「ないない」
「お船とか飛行機がどんな感じなのかは分かりませんけど、あれです。パーティー組んだ扱いになるんじゃないでしょうか」
「ないない?」
「おやノーネームさん、ちょっと違うんですか?」
「ないない」
違うらしい。
ふるふると頭を振る彼女の表情は、微妙な否定のニュアンスを含んでいる。
【パーティーじゃないのか】
【ダンジョンの中ってわけじゃないしなぁ】
【しかしぽんぽんと新情報が飛んでくる】
【あの砲弾みたいに?】
【あの51センチ砲弾みたいに】
【あの16インチ砲弾みたいに】
【情報の暴力……そうか、これが大艦巨砲主義……!】
【草】
「……なぁ。『nai-nai』とは何だ? 暗号か?」
「『いないいないばあ』とかじゃねぇだろうしなぁ……」
【そら分からんよなぁ……】
【草】
【分かったらおかしいもんな】
【だって初出はここから11年後のハルちゃんの配信でだし】
【因果の法則が乱れる】
【本当に時系列どうなってんだよこれ……】
【ノーネームちゃんの魔法ってことでもう納得しないと頭おかしくなるよ】
【そうだぞ うちの教授、精神に異常きたして入院してるんだぞ】
【かわいそう……】
【草】
ふむ。
……ダンジョンの仕組みって、思ったより奥深いのかもね。
「ま、続けてたらなんとかなりますから。あとは……気合です。なんかこう、ぐっと。がんばれば……多分?」
そうそう、男だったときの僕だってそこそこには行ってたんだから。
「気合……」
「神様も根性論か……」
【ハルちゃんってさ女神様だからさ、まるで『僕ができるんだからみんなももちろんできるよね?』ってノリでいろいろ投げつけてくるよね】
【草】
【ああ、だから最初期もなんかとてつもないスキルとか見せてきて『ちょっとやればできますよ』とか平気な顔で……】
【草】
【え、でも、ハルちゃん、普通にダンジョンの中がじめじめして何日でも居られるって……ああ、そういうのも女神様メンタルだからか】
【それな】
【神様特有の「逆になんでみんなはできないんだろう」みたいな】
【繋がっちゃったね♥】
【おう 1年半以上ぶりにな】
【特大の繋がっちゃったに歓喜】
【分かる】
【あれってさ、多分魔力とかあるダンジョンって空間が快適って意味だったんだろうね】
【あー】
【じゃなきゃ、あんなじめじめじとじとして24時間モンスターに狙われる場所が楽しいとか言わないよな】
【草】
【草】
【言ってたなぁ……】
【あ、そういやハルちゃんだけだよな ダンジョンに生えてる、明らかに毒々しくてごく一部の研究者とか以外触るのも恐れるキノコとかむしって「おいしいのに」とかほざいてたの 誰1人賛同しなかったからむくれてたの】
【草】
【草】
【言い方ぁ!】
【ま、まあ、実際食べられたっぽいし……】
【それは知られていたんだ ただゲテモノ食いしか手を出さないって意味でだ】
【草】
【だからちょっとおかしい幼女って……】
【神様だからな】
【ガチで上位種族なんだ、むしろハルちゃんレベルで話とか通じる方が奇跡だろ】
【確かに】
【それな】
◆◆◆
「おうえん」「したの【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】」「ぶくま」「おねがい」




