554話 【悲報・ハルちゃんママ、まさかの死因】
「かにかに」
「カニ……そういえば最近食べてないですね」
最近っていっても、もうずいぶん前からだけど。
具体的には……あ、リリさんたちも一緒に500階層で遊んだときだ。
「帰ったら食べましょうね、カニ」
「かに」
【蟹食べ放題の当店は女神様たちのご来訪を心よりお待ちしています】
【港町ではどこでも新鮮なカニをご用意しておきます】
【草】
【行動が早い】
【ま、まあ、ハルちゃんたちの配信見てればいつ来るかは分かるし……】
【来たら絶対、案件とかCMってレベルじゃない大盛況だろうし……】
【草】
【カキ! 牡蠣は!? ねぇ牡蠣はどうなのハルちゃん!!】
【カニなんかよりカキだよハルちゃん!】
【ノーネームちゃんも牡蠣おいしいよ?】
【お?】
【あ?】
【やるか?】
【草】
【なんで争ってんだよ草】
【おもしれー視聴者たちで草】
「カキ……はどうかと皆様が! ムール貝に近い味と聞きますが!!」
「牡蠣ですか……茹でたのは好きですけど……うーん」
「おや、どうしましたかマイレディー?」
「いや、実は僕の――お母さん、昔、生牡蠣に当たっちゃって……」
あのときは……地獄だったなぁ。
何がとは言わないけども。
ほら、牡蠣っていう貝――だよね?ってば、あったかい浅瀬で取れるんだけども……その、昔に比べたらかなり綺麗になったとはいえ、川には下水とかがある程度流れて、それが海にどばーってなるわけで。
だから、生牡蠣をおなかいっぱい食べた僕たち家族――の中で、なぜか母さんだけ盛大に当たって、お家の中がえらいことになったんだよね。
あれって、生食用のでも確率で当たるんだよねぇ……ほら、たまたまきちゃないのが多かったり、お腹が耐えられないとさ。
あれは……確かまだ中学の頃だったかなぁ。
辛そうなんだけども、救急隊の人に聞いたら「天敵はしますけど、もう上と下からマーライオンのごとく出し尽くすしかないですねー」って言われたっけ。
なお、父さんと僕は苦しむ母さんになにもしてやれず。
父さんは病院に付き添いで、僕はといえば母さんが残したいろいろを1人寂しくきれいきれいしてたっけ。
「あのとき、すっごく辛そうだったから……」
「ないない……」
【お母さん?】
【お母さん……あっ】
【え?】
【ハルちゃんのお母さんって確か……あっ……】
【最初期から追ってるわけじゃないから知らないんだけど、ハルちゃんのお母さんって?】
【え、女神――神族じゃないの?】
【だよなぁ】
【いや、ハルちゃんが最初期――具体的には3章までで言及してるんだよ】
【章って何だよ草】
【この配信、たまに変なの湧くよな】
【言うほどたまにか?】
【しょっちゅうだな!】
【草】
【変なのはほっといて、はよ】
【ハルちゃんはな お母さんを亡くして、病弱のお父さんを養うためにダンジョンに潜ってるって……本当に最初の頃、ぼそっと言ってたんだよ】
【え】
【え?】
【あ、そういやそんなことが】
【????】
【は?????】
【それって……?】
【もしかして:神族のバカンスかなんかで親子3人で地上に降りて放浪してたハルちゃん家族、まさかのお母さんが生牡蠣で衰弱死とかで大惨事】
【えぇ……】
【草】
【お母さんが居ないってことは……もう……】
【神様、生牡蠣で死ぬの!?】
【どうしよう、笑うべきじゃないって理解してるのにおなかいたい】
【草】
【しゃあない】
【ハルちゃんの言い方もかわいすぎて危機感ないし】
【牡蠣に当たると地獄って言うもんなぁ】
【いや、まあ、体力がない人はやばいっていうか……】
【この落ち着きよう……死んじゃってるわけじゃないのか……?】
【いや、でも、昔のバージョンのハルちゃんWikiで……】
【草】
【既に過去のこととしてるのか、単純にハルちゃんだからこの調子なのか……】
【確かに、健康な男の俺でも死にかけたからなぁ】
【成仏して】
【大丈夫大丈夫 なんとか生還したら体重が10キロ減ってただけだから】
【ひぇっ】
【こわいよー】
【でも……やばくね?】
【これがやばくないとでも?】
【ああ……】
【ハルちゃんが特定の飲食物を話題に出すと……】
【それに、仮に事実だとしたら……】
【生牡蠣が、女神の女神の命を……】
【……やばくね?】
【やばいよ?】
【ああ! 今来てるスーパーの水産コーナーで生牡蠣が全部、血走った目をした店員に持ってかれた!】
【ああ! 近所の港直結の食堂で「生牡蠣」のメニューが黒く塗りつぶされた!】
【あ、隣の牡蠣を養殖してる家、看板下ろしてる】
【みんな泣きながらないないしてる】
【草】
【待て、早まるなと伝えろぉ!!】
【そうそう、加熱! 加熱ならセーフ……かもだから!】
【ダメなのは生牡蠣! 生だけだから!!】
【草】
【草】
【大惨事で草】
【ああ、かわいそうに……】
【うまいんだけどなぁ……】
【確率で当たって、それはそれは辛い目に遭うからなぁ……】
【それで神様が死んだとか……え? マジ?】
【ハルちゃん、ぼそってつぶやくことは大抵マジだから……】
【ハルちゃんの表情がなんともいえないことに】
【なんか思い出したくないことを思い出しちゃった感がガチで出てるんだよなぁ】
【神族……食あたりで死んじゃうんだ……】
【ハルちゃん……】
【え? てことは神族、復活できない条件とかある……?】
【!?】
【えっ】
【え? え?】
【ノーネームちゃん……嘘だよね……?】
【ノーネームちゃんは大丈夫っぽいけど】
【ハルちゃんたちが、大ダメージ負っても万が一が……?】
【ああ! 神社の鈴が!】
【ああ! お寺の鐘が!】
【ああ! 教会の鐘が!】
【うるせぇ!!! 静かに祈れ!!】
【草】
母さんと生牡蠣。
あー、懐かしい惨劇。
毎年その季節になると、みんなで笑いながら話してたもんなぁ。
まぁそのあともなんだかんだ、母さんは年に数回くらい生牡蠣を楽しんでるんだけどね。
なんでだろうね。
あんな目に遭ったのに、それはもうおいしそうにほおばるんだもんね。
なんでだろうね。
もっとも、父さんと僕は――上から下から液体という液体を振りまき、悲鳴を上げてのたうち回ってた母さんを見てたから、もう生牡蠣は無理なんだけどね……。
や、だって、あんな苦しい思いしてまで食べたいものじゃないし……火が入ったのでも充分おいしいし……。
けど、絶対食べるって聞かないんだ。
母さんってば、食い意地張ってるから。
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