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543話 おててが、ないない

「ノ、ノーム様ぁ……」

「うぇっ!? ま、まだ続くんだったんですかノーネーム様ぁ!?」


「女神様!? あれは!?」

「まるで映画で出てくる……!」


突然、海面から姿を現した恐竜みたいな姿に――パニックにすらなれない、みんな。


あまりのことで、反応が追いつかないんだ。


だって、あのサイズなんてダンジョンの中じゃ、


――――――きぃん。


ふと、その黒い塊の上部から、まぶしい光が放たれて――じゃない!


すでに――攻撃されてる。


「み、みなさんっ、建物に隠れ――――――」


――駄目だ。


恐竜の口から、閃光。

あれは、普段僕が使ったりしてた光の矢と同等の速度が出ている。


ビーム。

光線兵器。


ドラゴンさんたちのブレスがのろのろに感じるほどの速度、ブレスがそよ風に感じるほどの暴風。


「間に合わ――――――」


「――だいじょぶ」


――――――ぎぃんっ。


「――! ノーネームさんっ!」


太陽がぶつかってきたようにしか感じないエネルギーの塊。


質量。

加速度。


それを――ノーネームさんが、両手で受け止めている。


ものすごい力同士の、正面からの殴り合い。


まるでそれは――ノーネームさんと魔王さんが、ドラゴンさん同士で戦ってた、あのときみたいに……人の領域を超えた戦い。


【ノーネームちゃん!?】

【みえない】

【なんにもみえない】

【みえないなった】

【もうだめだ……】

【言ってる場合か!】


【画面の光度を落とせば、何が起きてるか分かるぞ】

【あ、ほんとだ……ってノーネームちゃん!?】

【ひぇっ】


【何十キロ……あるよな?から放たれて一瞬で到達したビーム攻撃を、素手で……!?】


両手を突き出すようにして、まぶしすぎるはずの光を真っ暗な光で押し返しているノーネームさん。


――そういえば、僕たちは敵の攻撃を……それほど直撃を受けたことはないんだ。


だってそもそも僕は隠蔽特化、見つかっても回避に専念して――僕自身が痛い思いしたのなんて、地下に迷い込んできた魔王さんのときくらいだもん。


だから、怖いだなんて思ったことはなかった。


なかったのに。


「――――――ノーネームさんっ!」


「あと3びょう」


ぽつり。


普段通りの声で宣言した彼女は――。


永遠にも感じる力の奔流で、目を細めることしかできない。


――――――………………………………。


――しゅんっ。


息継ぎ無しで泳いで限界まで我慢してからぷはって上がったみたいな感覚。


……あんなの、魔王さんでも――ノーネームさん相手で本気になってたときのくらいじゃないと。


じゃあ、あれも魔王さん?


怪獣みたいで、あの魔王さんみたいに話しかけてはこないけども。


そんな、頭だけ回っていた僕へ、彼女が振り返ってくる。


「ね」


「攻撃が、収まった……」


【あっぶねぇ】

【なんだあの攻撃】

【ハルちゃんが慌てるほどって】

【!? おい、ノーネームちゃんのおてて!】

【あっ】


耳をつんざく音が収まって、ノーネームさんと僕の声だけしか存在していないような空間から、一気に後ろの人たちのざわざわで現実に戻ってくる。


ほっとした僕が、なんとはなしに――僕が意識していなくって、でも僕の目は気がついたその違和感へ、吸い寄せられる。


「――――――ノーネームさん……手が」


「……ないない?」


攻撃を受けるために差し出していた、彼女の――いつもいつも、僕をくすぐってきてた、その小さな手は。


――肘から先が消失し――切断面が、ノーネームさんの魔力の色の煙で包まれていた。


血や骨や肉ではなく、黒い煙。


――人ではない証。


【ないないって……】

【ノーネームちゃん、なんでそんなに簡単に……】


【そうだった  ノーネームちゃんってば、ドラゴンのときでもさ、ハルちゃん守るためならでかい魔王――格上相手でも傷だらけになって戦ってたんだよ】

【あっ】


【そうだよな……あのときノーネームちゃん、1回ドラゴンとしての体を失った――死ぬレベルのダメージ受けたんだよな……】

【そうだった……だから、今の姿に……】


【百合出産とか笑ってたけど  ハルちゃんを救ったご褒美だったんだよな】

【いや、それはやっぱりハルちゃんの同意得てないから駄目だと思う】

【確かに】



【ないない】



【ゑ?】

【草】

【ノーネームちゃん!? それ平気なの!?】

【ないないとかこっちに言うんじゃなくってハルちゃんに大丈夫って言ったげてぇ!?】

【元気だって意味でおちゃらけてるのか、それとも……】


「……僕のせいですか? 僕が、あの攻撃を予測できなかったから」


「ないない」


ぽつり。


冷たくなった頭で、僕は言う。


「いえ、違いますよね。……全部敵を倒したと思い込んで、のんきにしていたから」

「ないない」


ノーネームさんの、腕がなくなった。

こんなこと、今までなかったのに。


――それは、油断しきってた僕のせいだ。


普段なら――特に遠距離からの攻撃だなんて、索敵特化の僕がいちばんに――あ。


「普段だったら絶対に索敵を怠ら――あ、そうだ。……僕の索敵、もう、半径が500メートルくらいしか……」

「ないない」


目に魔力を込めて見ようとしても、物理的なものでさえ――さっきの敵でさえ、見通せず。


ましてや、町の中の人たちと――その周囲でうごめくゾンビさんたちしか分からなくなっているんだ。


「僕は……僕は」


「はる」

「ノーネームさん……」


いつの間にかにうつむいていた僕が、顔を上げると――


「おてて、ないない」

「えへ」

「えへへ」


「……ノーネームさん」


ぷらぷらと、無い手と腕を振っているノーネームさん。


その顔には、作ったような笑みが張り付いていた。


「ハルちゃんがこれから何やらかすのか気になる」「おもしろい」「TSロリっ子はやっぱり最高」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
ノーネームちゃん! ハルちゃんの事を大切にするのは構わないけど、自分の事も大切にしなきゃ駄目でしょ!
ぬぇっ!?ノーネームちゃん!?大丈夫なのそれぇっ? ハルちゃん能力が落ちてるのを気にして……
だって…ノーネームちゃん…腕がぁぁぁ…‼︎ ないない(安いもんだ腕くらい、無事で良かった) ないないしただけって…
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