519話 譲られた、ボスの撃破
「てことで俺たちが、ちっこい俺たちと……あ、あとリリと討伐しますから適度にお願いしますってこった!」
「そうなんですか?」
「ないない」
「え!? 私、わざわざお迎えに行ったのにそんなついでな扱いなんですか!?」
「ないない」
「え、リリさん、どこまで行ってたんですか?」
「空のずっと先です!!」
「へー」
「ないない」
「イスさんは使いやすいですか?」
「はい! 神器ですから!」
「ないない」
「あ、アルテ様! 終わったら10年ぶりのすんすんさせてくれ!」
「お、お姉ちゃん……!」
「すんすん? よく分かりませんけど良いですよ」
「ないない」
「ノーネームさん、ないないばっかりじゃわかりませんって」
「すんすん」
「なんで僕のこと嗅ぐんですか?」
「あへぇ……」
【草】
【悲報・まとまりがない】
【しまった、元から天然ボケのハルちゃんを全肯定が包んでしまった……】
【草】
【あとノーネームちゃん……さすがにこんなときくらいはそういうの、やめよ? ね?】
【さりげなくハルちゃんのお胸触った手首掴まれてるんだよ……反省しよううううううう】
【ノーネームちゃん!!!!】
【草】
スライディングしてきたイスさんを置き去りにしたリリさんが、おっきな姉弟と駆けていく。
「……じゃ、僕も足止めくらいはしないと……ねっ」
びしゅっ――かんっ。
「む、鎧に弾かれる……」
「ないない……」
子供たち――や、子供じゃなくなってる3人も居るけども――が戦闘に入る中、僕の仕事がなくなっちゃった。
「………………………………」
たぁんっ。
「GU!?」
「あ、足元ならダメージ通るんですね」
「ないない」
【すげぇ】
【諦めないハルちゃん】
【そうか、ハルちゃん、もともとこういう敵は苦手だっけ】
【あー】
【ゴーレムさんとかは岩扱いだったからね】
【草】
◇
「はいっ!」
「おらおら、リリばっか見てんじゃねぇ!」
「こっちががら空き……ですっ!」
リリさん(大)、アリスさん(大)、アレクくん(大)がトカゲさんの周りを――ちょうど3人がお互いに死角になるように走り回る。
その動きは僕が覚えてるよりもずっとずっとすばしっこい。
「あたしたちも負けてねぇ!」
「うんっ!」
それを見てるからか、アリスさん(小)とアレクくん(小)が――自然に彼女たちに加わり、危なげなく攻撃のコンボに加わっている。
【完全なハメコンボ】
【さっきまでよりもダメージ通ってるな】
【そらまぁ2人増えてるし】
【すげぇ】
【え? リリちゃん、確かハルちゃんショック前から世界で1番レベル高いって聞いたけど、くノ一姉弟も負けてなくない?】
【草】
【くノ一姉弟て】
【ショタよ ……ショタよ!】
【草】
【すげぇ……姉御を混乱させてるぜ】
【まぁハルちゃんは女の子でアレクくんは男の子だからね……】
【男の娘だ 間違えるな】
【草】
【まぁリリちゃん(小)と同じくらい戦えてた姉弟が10年間鍛えたらそうもなるわな】
【あー】
「……ずいぶん減ってますね、周りの敵」
「ないない」
ふぃぃぃぃん。
そんな彼女たちを上空から観察してる僕たちは、イスさんの上。
――たぁんっ、たぁんっ。
「とりあえず学校側からは狙いづらいモンスターを撃っていきましょう。ボスさん以外には普通に貫通できますし」
「んむ」
びしゅっ、びしゅっ。
イスさんの上にこんもり乗っていた狙撃銃を始めとする武器――それも、かなり高性能ないいやつだ――があるからか、ノーネームさんも僕の隣に腹ばいになって、2人でイスさんのヘリから周囲の掃討。
こういうのもこういうので、良いよね。
【ノーネームちゃんも実は狙撃スキル高いよね】
【まぁハルちゃんのコピーだし】
【あー】
【確かに、最初からハルちゃんと同じ感じで攻撃できてたな】
【ハルちゃんと一緒に周囲の敵をワンショットだもんなぁ】
「ほら! あの上をふぃーんって飛んでるやつ! なんかすごいやつ! あれが『イス様』よ! アル様とノーム様の乗り物! 神様の乗り物よ!」
「イス様……」
「ありがたやありがたや……」
「え? あれって学校のイス……」
「ばっか、女神様の乗り物だぞ? たまたまだろ」
「それもそうか……なむなむ」
「むしろ学校のイスがあれを模した可能性も……?」
【草】
【草】
【朗報・イスさん、イス様へ昇格】
【イスさん……】
【イス様……】
【ハルちゃんお気にの乗り物だもんね】
【お気に入りっていうか唯一無二の性能っていうか】
【すごいよね】
【性能がすごいんだから見た目は……うん……】
【おい気をつけろ、ハルちゃんの神性にあてられてガチで意思を持っているかもしれないぞ】
【草】
「――――ハル様ぁぁぁぁ!!」
「ん?」
上空から淡々と撃ち続けるのにハマってて無心になってた意識が、リリさんの声で戻ってくる。
「一撃お願いします!」
「頼むぜア――ハル様!」
「え? あ、うん……えいっ」
――たぁんっ。
僕の意識は、自動で「1個だけ残ってる、半分割れてるコア」を狙って引き金を引き――その事実を後で認識する。
【「えいっ」かわいい】
【かわいい】
【ハルちゃん、こういうときはほんと幼女】
【それな】
――――――――びしゅっ。
「……GUAAA――……」
――どさっ。
「……あ、最後のコア」
「ないない」
……え。
もしかしてこの子たち……僕にトドメ、譲ってくれた?
「――女神様が妖怪王を打ち倒したぞぉぉぉ!!!」
それを見たお爺さんが大声を上げ――校舎が揺れるほどの歓声が上がる。
「……こういうの、ずるいですよね」
「ずるくない」
「そうですか?」
「そう」
うーん。
僕、普段はひとりでやってるから……手柄を譲られるとか、こそばゆいなぁ。
「あ、見て! 空が!」
屋上でたなびく赤髪からの声につられて、僕も上を見上げる。
――空が、割れていく。
「おー」
「おー」
真っ暗だった世界に――目がくらむほどの、朝日――じゃない、もう昼間の光。
あったかい光。
この世界にとって、ダンジョンに包まれてから初めての、光。
「……綺麗ですね」
「しゅきぃ……♥」
……あったかくて、思わず昼寝したくなる心地良さが、僕たちを包んでいった。
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