514話 アイドルユニットらしい
校舎や校庭のあちこちにぼうぼうと燃える松明。
そのオレンジの光が、校門近くで乱反射している。
そして――金属のぶつかる音、野太い掛け声、そしてモンスターの断末魔。
「みなさん、大丈夫ですか?」
「女神様! この通りでございまする」
「大丈夫ですロリ金髪ダウナー酒乱女神様!」
「どうやら私たちにも何やらの力が芽生えたらしく、全力でなければ数十分走り回っても息切れで済みます! あと息子がご無礼を!」
うん、元気な袴姿の人たち。
……あ、これ、近接戦闘のダンジョン適性でレベルとかスキルがもりもり上がってそう。
【草】
【じじいが1番まともな集団か……】
【本当にこの孫は……】
【こいつ、ハルちゃんがそういうの気にしないって理解してやがる……!】
【てかここって11年前のあの日の2日目――3日目の深夜だろ? 町が丸ごと隔離されてモンスターが襲撃してきてもうダメだって思ったら降臨した女神様にこんな口叩けるの、ある意味すごくね?】
【草】
【草】
【ある意味じゃなくてもすごいって言うか……】
【もしかして:やべーやつ】
【ま、まあ、動揺してるだけかもしれないし……】
【まぁな、恐怖で気が狂っても仕方がない】
【しかし道場の人たち、すげぇな】
【普通、剣とかやってても猪サイズの化け物が自分の命狙ってきて立ち向かえないよね】
【それな】
【11年前、どんだけ怖かったか】
【ノーネームちゃんのおかげでみんな異世界へないないされてるって知ったとはいえ、それまではマジでトラウマだったからなぁ……】
【まぁこの人たちはあの日の襲撃で「自分たちが唯一戦えるんだ」って思ったんだろうし、肝も据わったんだろう】
【ああ、子供を守る母親的な……】
【人って守るものがあると覚悟が決まるからね】
【あれ? この中の何人か、前に見たぞ?】
【え? どこで?】
【いや……ほら 異世界の魔王軍戦で、ジジイと一緒に出現したやつら あの修羅のじじいども】
【あー】
【あっ】
【もしかして:このあとどっかのタイミングでないないされる】
【んで10年後に国会議事堂で世界生中継の中すげぇこと宣言してる途中でないないされたじじいと同じタイミングでないないアウトすると】
【草】
【草】
【ああ、ありましたねぇ……】
【なんかどんどん繋がってくね】
【お前はこの1年間何を見て何を考えて過ごしてきたんだ?】
【そこまで言うのはひどくね?】
【草】
「………………………………」
ノーネームさんが張り付いてきた。
まぁいつものことだから気にする必要もなく、心なしか前に僕のレベル測定とかで会ったときよりも若いおじいさんたちと情報交換。
10年だもんね。
中学生だった僕が社会人新人を過ぎるくらいだからね。
そういえばあの日、僕は何してたんだっけ?
………………………………。
思い出せないってことは何もなかったんだろうし、どうでもいいや。
「いい」
ノーネームさんがなにか呟いてるけど、この子はいつもぴこぴこぽつぽつひとり言が好きな子だからそっとしとこう。
「じゃ、今のところここは任せて大丈夫そうですね」
「左様でございまする。この学校の柵を乗り越える化け物は居らぬようですゆえ、このペースなら交代しつつ、我らだけで迎撃可能かと」
「我らのように特殊な力に目覚めた市民たちも、校舎の2階などから遠投で攻撃を始めています。自分の手で迫ってくるモンスターを少しでも撃退できる状況なら、水と食料が持つ限りは人心も穏やかかと」
「ロリ女神様のおかげでみんな幸せなんです! やはり戦場にアイドルは必要――あ、あとでサインとかもらえますか!! 家宝にします!」
「サイン? 僕、書いたことないから分からないのと、事務所に聞かないと……」
そういや僕、今でもえみさんのとこに所属してることになるんだろうか。
まぁいいや、めんどくさいのは全部丸投げする代わりにるるさんのおもりしてるんだし。
「事務所! 神様も今はアイドルの時代ですか! ユニットですか!」
「ユニット? うーん……しいていえばノーネームさんとですかね」
「しゅきぃ……♥♥」
【草】
【ノーネームちゃんがごきげんでなにより】
【ユニット……そういうものもあるのか】
【普通はそんなこと考えつかないと思うよ】
【それな】
【始原もそう思います】
【王国もそう思います】
【異世界も同意見です】
【ショタよ!!】
【草】
【草】
【なんか増えてる……】
【ハルちゃん、この1年半であっちこっち行ったからね……】
【まさか姉御が癒やしになるとは……】
【ショタショタうるさいこと以外は無害だからなぁ、あのショタコン】
【草】
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