483話 九島さんはお役立ち
「そうですか。 どこもモンスターとダンジョンだらけなんですね」
「はい……我ら国境警備隊も、国境条約により簡易的にしか取り締まらなくなっていたために装備も不十分で……ために、道中の町々では不甲斐なさを……」
「あー」
そっか、そうだよね。
この町みたいな事が、今、たぶん世界中で起きてるんだもね。
この世界はどうか分からないけども、僕の世界なら――有史以来では比較的に平和な時代が続いていたんだ。
ここもそうなら、こういった突然の脅威に対する備えなんてないはずだもんね。
「かろうじて数百名を救出し、軍用車でこちらまで……しかし、やはり中央政府どころかどの国も通信が途絶しており、もはや現場での判断でしか動けず……小型の敵しか倒せず、弾薬も足りず……」
「こうなりました以上、話し合いまして……貴女様の庇護下に、と」
「そうですか。 良いですよ」
「そのためにはどんなことでも……宜しいので!?」
くわっとすがり付いてこようとした軍人さんから、さっと距離を取る。
「あ……」
「ごめんなさい。 僕、近い距離苦手で」
なんだかすっごく傷ついた顔してる厳つい軍人さん……ちょっとかわいそうだけど、なんか汗だくな男の人に抱きつかれるのはちょっと……。
女の人なら良いんだけど……ほら、僕、中身は男だし……ごめんね?
【草】
【すっごいすばやいよ!】
【今一瞬で動いたな】
【さすがは元野良猫ハルちゃんだ……】
【まぁあの図体に迫られたらな】
【ハルちゃんも一応は女の子だからね】
【でも今は……】
【おっぱいがががががががか】
【草】
【ショタかも】
【しっしっ】
【なんで姉御はないないされないの? ずるくない?】
【草】
「……ハルさん? その、話は大丈夫そうですか?」
お、九島さん。
ちょうど逃げた先の、良いところに。
「あ、はい。 軍人さん、この人は九島さんです。 この人の指示に従ってください」
「え? ちょっと、ハルさん!?」
軍人さんたちの後ろに、今にも話したさそうにしている人たちがいっぱい居てめんどくさそうだったから、そのまま九島さんに丸投げ。
ずい、と彼女の背中を押して前に出して、僕は隠れる。
九島さん、こういうの得意だもんね。
がんばって。
僕?
僕は狙撃専門だから人とのコミュニケーションはちょっと……。
「あの、こちらの方は……?」
「学生……小学生の子供か……?」
「……これでも高校生で、兼任ですけど社会人ですっ」
ぷりっ。
珍しく九島さんが怒る。
【かわいい】
【かわいい】
【拗ねてるくしまさぁん!!!!!】
【やっべ、めっちゃレアだわ】
【それな】
【あー、俺たちの地方の人間は幼く見られるからなぁ】
【あー】
【けど小学生はないだろ?】
【いや、ハルちゃんたちが居る地域の人たちは成長が早いからな……】
【小学校低学年くらいまではそんなに変わらないのに、そこからの発育具合が半端じゃないんだよなぁ】
【てことはハルちゃんも、あと数年で……】
【いやぁぁぁぁぁ】
【待て、女神だぞ きっと幼女ボディと少女ボディを行き来できるに違いない】
「えっと、この人は聖女って呼ばれてて……とりあえず、この九島さんの言うことは僕たちの言葉も同じってことで」
「ハルさん!?」
「承知しました!!」
「聖女様……どうか、我らをお救いください……」
羽を広げてばっさばっさ。
「ハルさん!? ちょっと、ハルさぁん!? 都合良く私を使わないでくださいよハルさん!?」
下の方から九島さんが叫んでいる。
けども、僕はもう飛び立ってるから……あとはなんとかがんばって。
【ひでぇ】
【草】
【悲報・ハルちゃん、丸投げ】
【悲報・くしまさぁん、押し付けられた】
【草】
【草】
【ああ、羽があるからね……】
【めっちゃ自然な流れで飛び立ったなハルちゃん】
【自然か?】
【少なくとも助けを求めてくる人たちにとっては】
【ああ……】
ひらひら。
町の上空――って言っても4階5階建ての家の屋根くらいだけどね――から見る町は、さっきまでとは違う形で騒々しくなっている。
町の中心部から制圧したおかげでバリケードは町の外の大通りに展開してるけども、そこが一部どけられてごつい車が10台くらい。
その他も車が何十台も止められてて、そこからわーっと人々が押し寄せしている。
「あー、逃げて良かった。 あんなに囲まれたら疲れちゃうもん」
【草】
【ハルちゃん……】
【くしまさぁんに全部押し付けちゃって……】
【ま、まあ、ハルちゃんはそういうの得意じゃないし……】
【嫌なことがあれば華麗に逃げ出す それがハルちゃんだ】
【このへんはノーネームちゃんと似てるよね……】
【まぁ双子だし】
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