477話 【王権神授】
「……ハル様」
「なんですか?」
「ノー……ネーム様とともに。 その剣を……この子たちに、授けてくださいませんか」
「? 良いですよ」
ノーネームさんが――ちょっと飽きたのか、剣先をふりふりして遊んでるのがほほえましいね――持っていた剣を差しながら、小さい姉妹へと促すリリさん。
よく分かんないけども、どうやらリリさんはそうしてほしいらしい。
……話の流れ的に、たぶん本当に小さい白髪姉妹の妹さんだったらしいリリさんが言うんだ、なにか理由があるんだろう。
どうしてそんな七面倒くさいことになってるのかさっぱりだけども、そうしてほしいんならそうしよう。
思えば、短い時間だったけど一緒だった彼女は――すんすんしてくる以外は特になんにも、してほしいこととか言ってこなかったもんね。
るるさんのわがまま聞くのに慣れてる僕からすれば、こんなことでいいならって気持ちだ。
【軽いノリのハルちゃん】
【ハルちゃんって基本断らないからね】
【そもそもハルちゃん視点だと、この状況ってほぼ確実によく分かってないだろうし】
【あー】
【ハルちゃん、コメント欄見る術がないもんね】
【コメント欄を一切に見る気がないとも言うがな】
【ていうか基本、戦いかお酒かお風呂か寝ることにしか興味ないもんね】
【実に神話に出てくる神様らしい性格してるもんなぁ……】
【草】
【草】
【ハルちゃん、どうして……】
【そうだった……】
【ああ、るるちゃんたちから脱走したときから変わってない……】
【はじめてのだんじょんはいしんからだよ】
「ん」
「はいはい」
なんだか大事になっちゃったせいか、適当な剣じゃ悪いと思ったのか――ノーネームさんが寄ってきて、持ってたちょっとボロい剣をきちゃない袋さんに突っ込んで、突っ込んだ腕をごそごそしている。
「ん……む……んぅ……」
「入れたのは無くなってないですから落ちついて探しましょうね」
ぐいぐいと僕に体重を乗せるほどに必死に探してるもんだから、ついつい子供をあやす感じにしゃべっちゃう。
髪の毛が僕のほっぺたをくすぐってきてこそばゆい。
【ノーネームちゃん……お前……】
【これ、絶対わざとだよね】
【ああ、確実にな】
【始原もそう思います】
【王国もそう思います】
【草】
「女神様たちが……!」
「百合……なのでしょうか……!?」
「有史以前の神々は、性別など超越しているという話だが……」
「もしかして……生えている……!?」
「どうしてでしょう……なぜか、心が高揚します……!」
【草】
【もしかして:この町の人たち、なんか汚染されてる】
【ほぼ確実にサブカルに染まっているな……】
【あー、地上でくしまさぁんがお世話してる人の荷物、ちらっとうちの国の文化汚染の塊持ってますねー】
【ああ、美食の国はマンガとか好きだから……】
【文化爆弾とはよく言ったものだよなぁ】
【不敬すぎる思考を刷り込んでしまったのか……】
「……あった」
「お、綺麗ですね」
「ふんす」
しゅらりんと彼女が抜いたのは――なんだかきらきらしている剣。
「結構良いものですし、500階層のときのドロップかもしれませんね」
「どろっぷ」
「そういえば500階層の件なんですけど」
「ぴーひょろ」
「話す気、ないんですか?」
「ないない」
「いつでもないないって言えば良いって思ってません?」
「ないない」
きらきらした剣を振りながら、ぷいっと顔を背けるノーネームさん。
すっごく前のことになっちゃったからすっかり忘れてたけども……そういや君ってば、500階層の攻略とかさせてきた「呪い様」ってやつだったんだよね。
ついでに80階層だっけ?とかから床を抜けさせて250階層まで落としてきたり、るるさんのこといじめてたり。
……ま、あっちの世界でるるさんがノーネームさんのこと存分に撫で繰り回して恍惚としてたし、本人が許してるなら僕はなにも言わないけどさ。
【草】
【ノーネームちゃん! だからピーヒョロは古いの!】
【そうだぞ、俺たちの前の世代のそのまた前の世代がネット黎明期に光回線どころか電話回線で通信してたときの音だぞ!】
【古い! ネタが古いよノーネームちゃん!】
【え? じゃあ昔は何ギガまで使えてたの?】
【そんなものはない】
【当時なら数百万行くんじゃないかな……】
【は?】
【ああ、ここにも世代間格差が】
【パソコン通信(80年代~90年代】
【え、生まれてない】
【私のお父さんはギリ産まれてるかな】
【話には聞いてる】
【動画で見た】
【教科書に載ってた】
【 】
【 】
【 】
【 】
【俺はおじさんじゃないおじさんじゃないおじさんじゃない】
【私はおばさんじゃないおばさんじゃないおばさんじゃない】
【かわいそう】
【かわいそうに……】
【この話、やめよう? みんなを不幸にするよ?】
【え、なんで】
【それが分からない時点で俺たちには致命傷なの】
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