456話 みんなと、がんばる
【私、えみちゃん……ううん、えみお母さんが新人のときから応援してるの】
【あっという間に事務所メンバーたちのリーダーになったえみちゃん 今はちょっと残念なことになってるけど、応援してるんだ】
【草】
【ま、まあ、欠点なかった時代に比べたら親しみやすくなってるから……】
【我ら絶壁応援委員会はるるちゃんの姿を見た瞬間から全力でサポートしています】
【ひぇっ】
【草】
【こわいよー】
【最近はヤンデレ好きも合流してるからな……】
【るるちゃんの視聴者層がどんどんイロモノになっていく……】
【普通に健気な元気っ子なのに……】
【くしまさぁんに癒やされてます】
【委員長系だからお堅い職業の人たちに人気の女神】
【マジメな女の子ってやっぱり良いよな】
【ポニテが好き】
【でも変なツボで笑っちゃうのがかわいいんだ】
【我ら始原は、ハル様の登録されたその日から1回も欠かさずに拝謁していました】
【それまでも、それからも忘れた日はありません】
【いつか、この日が来ることを】
【王国「私たちは――アル様が降臨されたその日に、存在する意味を与えられました」】
【王国「どうか――過去の私たちを、よろしくお願いします」】
僕は、ちょっとだけ目をつぶって思い出す。
――ダンジョン配信のことを調べて、お役所行って、ちょっとだけだけど遠距離職の適性があるって聞いたときの嬉しさ。
――おっかなびっくりで、あとお値段にもびっくりしながら初心者講習とかして、しばらくはそのときのひとたちと潜ったりしてた初心者時代。
――それからソロになって、ひとりでもくもくとやるようになって――気がつけばダンジョンに潜っていろんなスキルを鍛えたり、モンスターさんたちの特性を知っていって攻略を楽しんでいた時代。
――そこからなぜか幼女になって、ちょっと勝手が違って戸惑ったり。
――けどもダンジョンでやってけるってほっとしたと思ったら、お仕事は有無を言わさずクビになったりしたり。
――そして。
目を開けた、先。
僕を見上げている――もう泣き止んで、いつもの元気に満ちている笑顔を向けてくる、るるさん。
あの子を助けようとして、ドラゴンさんになってたノーネームさんに潰されそうになって、それなのに僕に逃げろって踏みとどまった、桃色の髪の子。
ちょっとばかりぐいぐい来られすぎるし張り付いてくるしお風呂に突撃してくるしで大変だったけど、楽しかったこの子たちと過ごしたあの時間。
……ああ。
僕は――ダンジョン配信、すっごく楽しんでたんだね。
だから、僕は言う。
いつか、この人たちも――――――――
「そのときこそ」
そうして、楽しくなれるから。
そうしたら。
「――――――人類は、モンスターっていうファンタジーに――勝利、しているんです」
【ハルちゃん……】
【まえがみえない】
【奇遇だな、俺もだ】
【私も……】
【始原一同大泣きです】
【あねご「あ、やっば、ばばあが……AED!」】
【草】
【草】
【始原、お前らぁぁ!!】
【泣いてたのに笑わせられたぞ、どうしてくれる!】
【草】
【あー、そういや恰幅が良い婆さんとか居たねぇ……】
【そっか ハルちゃん的には、俺たちはもうすでに……】
【ああ……】
【そうだよな 人類が半壊――実はノーネームちゃんに助けられてたけど――しても、反対も多かったけどそれでもダンジョン配信がブームになって、なりたい職業第1位になってるって】
【それだけ余裕があるってことだもんな】
【最初の数年は配信どころじゃなかったし】
【普通に死んじゃう人とか……あれ、もしかしてその人たちもないないされて……?】
【私、ダンジョン攻略……もっとがんばろ】
【今でもときどきダンジョンがあふれたりするもんな】
【つい最近も、ユニコーンサキュバスロリと偽ハルちゃんが撃退した魔王軍が来たりしたもんな】
【草】
【それでも、少なくとも今現存してる国家は、ある程度は押さえ込めてるんだ】
【みんな、がんばったんだよな】
【ああ】
【犠牲になった人たちも、あっちの世界でちゃんと生きてるんだよな】
【ああ……!】
【どうしてもあのトカゲが来るんだ なら、ちゃんと迎撃しないとな】
【女神様が言ってるんだぞ 「ダンジョン攻略も配信も、両方とも楽しめ」って】
【ハルちゃんが言ってるんだ、楽しまなきゃダメだよな】
【そうだぞ、楽しんでがんばるんだぞ ほら、映像に映ってる――あの日の人たちが浮かべてるみたいな笑顔でさ】
「……そうだな」
ぽつり。
声が、漏れる。
「……やろう」
「ええ」
「おうよ」
「もちろん!」
しばらく、しんとしていた広場が――動き出す。
「俺、なんとなくだけどさ、モンスター倒してからやけに物が軽く感じるんだ」
「私、なんか遠くのものが……あ、メガネかけなくても見えてる……これが、適性……」
ぽつり、ぽつり。
「……あなた、さっき、治癒魔法を……初級のものですが、使えていましたよ。 もう何回か使えば、きっと治癒の力で――救護班に、なれますよ」
「……わたしに、そんな力が……」
九島さんに話しかけられた小さな子が、じっと自分の手を見つめている。
「見ろよ! さっきレンガ投げてから、近くなら石ころでもすごい勢いで飛ぶようになってるぜ!」
「儂も、さっきから車椅子がなくても走れるように……これが、力……」
「……もう、大丈夫そうですね」
「ん」
ふわりふわりと高度を下げ、僕たちは地面に降り立つ。
「あとは、子供たちに教えたように戦いを」
「ハル様ぁぁぁぁぁ!!!!」
「わぷ」
「ぷ」
いきなり視界がなくなって、目元が柔らかくてあったかいものに包まれる。
【!?】
【リリちゃん!?】
【草】
「素敵な演説でしたぁぁぁぁ!!!」
「……! ……!」
「みえない。 みえないない」
ばしばしって彼女の腕らしきものを叩くけども、彼女はやたらと強い力でがっしりと僕を抱え込んでいる。
あと、声的にノーネームさんも巻き添えだね。
……うん。
九島さんよりも小さいけども、リリさんも女の子だから
「………………………………」
【ひぇっ】
【ああ! るるちゃんが! るるちゃんが!】
【こわいよー】
「……いいもん。 お母さんになったら大きくなるって言ってたもん」
【!?】
【ふぁっ!?】
【闇堕ち解除!?】
【てかお母さんって何、るるちゃん!?】
……よく分からないけども、久しぶりに感じる、るるさんからの例の感覚は消えたみたい?
なんでだろ……彼女も成長したからかな。
とりあえずあの子については、顔以外で思考するのを放棄しとこっと。
◆◆◆
去年から恒例のないないがありますので、次回は16日木曜日からとなります。
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