45話 『80Fダンジョン攻略RTA&救出作戦』3
【ハルちゃんが宙を舞いだして、爆発音と光ばっかりになってるな】
【なぁにこれぇ……】
【これ、ここから見始めたらなにがなんだかわかんないだろ】
【今来た人用に書いていこうぜ】
【やさしい】
【まずハルちゃんはるるえみとお買い物中】
【そしておもむろに脱走】
【草】
【草】
【待って文脈がおかしい】
【2行目で崩壊してて草】
【なにがおもむろなのか全然わかんない】
【わかったら人外だからな、安心しろ】
【大丈夫、疑問に思ってアーカイブ見てもやっぱりわかんないから】
【草】
【ハルちゃんは文脈でさえヘッドショットかますからね、しょうがないね】
【草】
【救助要請のためだけど、保護者に何も言わない悪い子ハルちゃん】
【そうだよ、救助要請があったからなんだよ】
【でもやっぱりそこで脱走する意味がわかんない】
【考えるな、感じろ】
【え、いや……ちょっと無理かも……】
【草】
【で、装備品を普通にお店で買って普通に入るところまでは普通】
【まあ普通だね】
【そこだけは省略できないからね】
【普通のままでいてほしかったね】
【もうだめだ……】
【ま、まだ、こんなレベルのダンジョンに素潜りするよかマシだから……】
【草】
【その途中で救助要請出したパーティーメンバーの情報聞いたりしない落ち度はあるけど、幼女だからしょうがない】
【ここまでなんとか理解できるな】
【ああ……】
【それでもっていざ、救助要請に応じるソロ攻略をRTAする配信へ なお配信の理由は新しい機材を試したいから】
【かわいいよね】
【だからなんでそうなる!?】
【だってハルちゃんだし……】
【一応、るるえみへの連絡のためだって言ってたぞ、配信自体は】
【いや、んなのスマホで電話かメッセージ1本で済むじゃん……】
【ほんと、走りながらでもできるのに……】
【それすら面倒くさがるのがハルちゃんだ】
【ああ、まちがいないな……】
【えぇ……】
【草】
【普段はちょっとおかしいハルちゃんが、まさかの普通の装備で普通に走っての攻略とかいう貴重すぎる映像】
【店売りの普通な装備で普通に走って……うん、理解できた】
【けど最初からおかしいもんだからヘッドショットで一切止まらずに進軍】
【だからそれがわからない】
【情報を投げつけるのはやめろ】
【草】
【だって事実なんだもん……】
【嘘じゃないもん……】
【ふぇぇ……】
【駄目だ、視聴者まで幼女になっている】
【かなりおかしいことに落とし穴の罠を探して歓喜なハルちゃん】
【んー? なんで落とし穴の罠で歓喜するのー?】
【やべーことに、落とし穴の罠をわざと起動して階段降りる時間ショートカットし出すハルちゃん】
【えー? なんでそこまでタイム短縮したいのー?】
【なにもかもわかんなくて草】
【いい子のみんなはマネしちゃダメだぞ!】
【安心しろ、下の階の状況次第じゃ何十メートルのダイブを自分からしようとする人間などほとんどいない】
【ああ……】
【草】
【真っ暗な穴に飛び込めないよね、普通】
【普通なら足がすくんで無理だよね】
【下手すりゃ高いビルから飛び降りるより怖いよね】
【なんでできるんだろうね】
【ハルちゃんだからさ】
【そっかぁ……】
【なぁにこれぇ……(思考放棄】
【で、だいたい半分の階層をさくっとカットしたハルちゃん】
【ちなみにこの時点で、このレベルのダンジョンの攻略タイムとしてはワールドレコードをとっくに大きく突き放しています】
【そらそうよ……】
【世界標準を軽く超える幼女だからな……】
【お気軽に世界最高峰までヘッドショットかますハルちゃん】
【なぁにこれぇ……】
【ちょっと休憩したハルちゃん】
【かわいかったハルちゃん】
【ハルちゃんをかわいいって援護できたのはもはやここまで】
【ここからは修羅の道ぞ】
【草】
【え、まだなんかあるの……】
【あるよ?】
【あるんだ……】
【あの、ここまでですでに情報がカンストしてるんだけど】
【そこから落とし穴の罠と爆発の罠が連続しているところを探します】
【探しました】
【なんで?】
【ちなみに最初はモンハウの中でした】
【モンハウの中でした】
【だからなんで?】
【どんだけ高い隠蔽スキルかは知りませんが、どのモンスターもだらけている超レアな映像が流れました】
【※この配信をリアルタイムで実況し始めた学者先生が失神しました】
【うちの研究室、嬉ションで大変だったんですけど!!】
【草】
【ほんと、なんでこんなことしたんだろうね……】
【なんで……ああうん、そうなんだね……】
【草】
【なにかを理解してて草】
【モンスターたちかわいいね】
【かわいかったね】
【でももういない】
【だってこのあとに全部……】
【モンスターたちかわいそう】
【ハルちゃん、おもむろにモンハウの中で大爆発を起こしました】
【起こしました】
【そっかぁ……】
【宙に舞うモンスターたち】
【爆風のダメージですでに致命傷っぽい】
【そっかぁ……】
【そんな中を、優雅に下へダイブするハルちゃん】
【しかも爆発での加速を背負って】
【は?】
【草】
【鬼神かな?】
【奇人だろ】
【天使だっつってんだろ】
【爆裂天使だね】
【殺戮の天使だよ】
【女神はどうかな?】
【もうなんでもいいや】
【なぁにこれぇ……】
【草】
【地獄のような場面が延々と続いて、やっと今に至ります】
【ありがとう】
【いいよ】
【よくわかんなかったけどわかった】
【わからないっていうことがわかったってだけで収穫だね】
【大丈夫だ、最初から見てた俺たちも理解はできていない】
【ただ追っているだけなんだ、それだけで充分なんだ】
【完璧に理解できる人類はハルちゃんしかいないと思うよ】
【でもなんで途中から説明風?】
【じゃないと俺たち自身が正気かわからなくなったからに決まってるだろ!】
【脳が……ねじれる……】
【俺の書いた文章……ちゃんと読めるか? 大丈夫か……?】
【草】
【大丈夫、わからないことがわかるだけですごいから】
【合いの手たちが壊れていくのがはっきりわかったな!】
【かわいそうに……】
【よかった……書いたのは現実だったみたいで……「それはあなたの想像上のハルちゃんなる存在ではないでしょうか」とか「病院行け、頭のな」とか言われたら、もう立ち直れないところだった……】
【草】
【わかる】
【わかりみしかない】
【同意しかできない】
【お前はよくがんばったよ……】
【なぁにそれぇ……?】
【哀れな鳴き声に微妙なバリエーションあって草】
【三日月えみ「このたびは……この度も、うちのハルさ……ハルがご迷惑をおかけしております……本当に……」】
【深谷るる「ハルちゃん……」】
【ああ、保護者たち】
【ようやく合流か】
【ハルちゃんが爆発を背負い始めてからしばらく無言だったからな】
【無理もない】
【むしろよく復帰できたってレベルだよ】
【保護者が2人もいるのにどうして……】
【おい、るるちゃんはちがうぞ】
【ああすまん、呪い様保持者だったな】
【そうだぞ、るるちゃんもまた特別な存在なんだ】
【深谷るる「保持者ってなに!? なんか聞いたことない新しい呼び方されてるんだけど!?」】
【草】
【いじられてるいつものるるちゃんでほっとするな】
【ああ……】
【トリップしてた脳がちょっと回復した】
【るるちゃんのこの反応がいいんだ……】
【心が洗われるな……】
【わかる】
【るるちゃんの扱いで草】
【不幸が緩和されて普通にいい子になったはずなのに】
【だって今までの今までが今までだし……】
【それ言ったらハルちゃんが配信バレしたのだって……なぁ?】
【深谷るる「ちゃんと謝ったもん!」】
【草】
【ほら、ハルちゃんはほんと、よくも悪くもこだわらないから……】
【何しても怒らないだって?】
【閃いた あ、ちょ*****】
【え?】
【まーた呪い様だよ】
【呪い様怖っ……】
ひと息ついて、コメント欄。
始原さんたちしかいなかったころとは違って、すっごい速さで流れていくから拾い読み中。
……うん、まーたみんな適当な悪ノリしてる。
学生の人が多いのかな、それとも配信はこういうノリが必要なのかな。
うーん、まだわかんない。
で、るるさんたちがいたから、たぶん視聴者さんたちから事情は伝わったんだろうってのがわかって安心。
でも、るるさんが見てるっていう恐怖もちらっとある。
……大丈夫だよね?
「るるさん、またなにか飛ばそうとしてるんですか? 今回はやめてくださいね? 人命救助なので」
【深谷るる「してないよ!? ……たぶん」】
【草】
【自分でわかんないもんねぇ……】
【ようやく見てくれたね……よかったね……】
【けどこれまででっかい不幸なかったし大丈夫なんじゃ?】
【いや、待て……思いついてしまった】
【まぁた何か繋がっちゃうの……?(畏怖】
【なぁにこれぇ……?(先行入力】
【それで?】
【ああ……あのさ? ハルちゃんってば、最初っからヒャッハーして落とし穴の罠踏みまくってただろ?】
【そうだな、ついでに近くのモンスタートレインしたりして巻き添えで落下ダメージで倒したりしてたな】
【経験値すごそう】
【そっか、こういうことしてるからレベルが……】
【スキルも爆上がりだよな……なんだよ、モンハウまとめて落下ダメージとか爆風で倒すって……いろいろおかしいだろ……】
【モンハウを素通りするついでに全モンスター爆破したなら、経験値効率は確かにいいはずだな……】
【あれは倒したって言うのか……?】
【倒したっていうか巻き添え事故っていうか……】
【ま、まぁ、罠張ってハメて倒しても経験値入るし……?】
【もんすたーさんたちかわいそうです】
【草】
【でさ、途中からはそこに爆発の罠も加わったじゃん?】
【ああ、SNSにアップされた映像が暴力的なコンテンツとかで消されてたな……】
【草】
【ま、まあ、ハルちゃんの配信知らないAIさんならまちがいなくそう思うし……】
【普通の人だってそう思う、誰だってそう思う】
【思わないのはハルちゃんただひとり】
【その、さ ……ハルちゃん、るるちゃんが来てからの不幸の分とかもさ 今回みたいに自分から踏み抜いたり爆破したりして消し飛ばしちゃってたんじゃね?って……】
【え】
【あっ】
【あえ?】
【えっ】
【ああ……】
【ああ……(諦観】
【ほら……ふたりはるるハルでもさ、るるちゃんの周りを囲むようにあった罠とか、丁寧に起動させてたし……そもそも踏まないように誘導してたみたいだし……あとコカトリスさんもアウトレンジで画面外だったし……?】
【悲報・呪い様、爆死】
【何十回もやられらたらなぁ……】
【草】
【呪い様かわいそう】
【呪い様消し飛んじゃった】
【まーた繋がってるよ……(通算3回目】
【まーだ他にも繋がりそう】
ちょっと体の状態確認してたけども、けっこう走り続けたから久しぶりに汗かいて息も上がってる。
それに、
「ふとももがじんじんしてるのでちょっと休憩です。 あ、腕も」
【!?】
【●REC】
【ふとももがじんじん】
【ふとももがじんじん】
【ふとももがじんじん】
【ハルちゃんハルちゃん、そういうの女の子が言っちゃいけない】
【そうじゃないとここみたいに男が反応しちゃう】
【でもハルちゃん、そういうのも気にしなさそう】
【天然ってすごいね】
【まぁ幼女だし気にする歳には遠そうだし……】
【ハルちゃんなら確実に気にしないことはわかる】
【ああ……】
【なぁにこれぇ……(歓喜】
【お前らなんでもかんでもそれ言ってたらいいって思ってない?】
【だって頭空っぽにしないと持たないもん】
【脳が……ねじ切れる……】
【草】
「けど久しぶりに疲れてますね。 これくらいのは……前に、最低でも500階層?くらいのダンジョン潜ったぶりくらいかな。 あれ、物資が尽きてギブしちゃったんですよね。 あのときは、この前の収納袋も持ってませんでしたし」
正確な日付は覚えてないけども――女の子になってから、ちょっとしたころ。
なんだかレベルアップした感覚のあった僕は――実際にそうなってるどころか★とかついちゃってたっぽいけどね――遠出したところで、未踏破のダンジョンに潜った。
深いって聞いてたから3日分の用意はしてたけども、1週間かけても攻略できず。
僕は成人の半分以下の水と食料しか必要ないから、それでもぎりぎりがんばったけども――モンスターとかはともかく、単純に広すぎて遠すぎて大変だった思い出。
食べものも飲みものもなくなって、1週間お風呂に入れなくって湧き水での水浴びのみ、しかもお酒も呑めない絶望の環境。
しょうがなくで、泣く泣く撤退した記憶がある。
……いつか再挑戦してやる。
けど、あれどこにあったんだっけ……うーん。
【ご……ひゃく……?】
【お前は何を言っているんだ】
【なぁにこれぇ……(畏怖】
【なぁにこれぇ……(混乱】
【ハルちゃん……さすがに冗談だよね?】
【フカシだよな?】
【ねぇ、そう言ってよぉ……】
【ふぇぇ……】
【たったのひとことで同接150万全員させる幼女】
【は?】
【????】
【ひゃく……ごじゅう……?】
【おう、ミラー含めるとそんくらい行ってるぞ】
【あー、分散してるからぱっと見じゃ少ないのね】
【有名配信者たちによるハルちゃんのミラー実況の視聴者とかもカウントすると、そのくらい……行くのか?】
【ねぇ、それって本当に幼女?】
【もしかしたらショタだったりしない?】
【草】
【姉御、最近よくコメントしてるな】
【三日月えみ「不勉強で申し訳ありませんが、確か国内のダンジョンで確認されています突破記録は」】
【250階層ですね、えみお母さん……】
【えぇ……】
【なぁにそれぇ……】
【あ、本当だぞこの話 深すぎて電波が悪くなったのか、途中から配信が途切れ途切れになったから、通しでの映像はないけど】
【ハルちゃんの代わりに始原が申請したけど「あり得ない」とか「画像が不鮮明です」って、見る目のない担当者から却下されたんだよなぁ】
【始原!】
【配信をちゃんと確認せずに却下されてて草】
【いやだって、実際あり得ないって思うし……】
【見る目がないっていうか、ごくごく常識的な判断っていうか】
【やる気のない担当者なら……まぁ、そうねぇ……】
【本人の申請でもなかったんなら……まぁ……?】
【あ、あとでその配信のアーカイブ探さないと……】
【ハルちゃんってばほとんど全部のアーカイブそのまんまだから、探すこと自体はできるんだよな】
【ただし、その数は3年分】
【始原、その日時とかわかる??】
スポーツドリンクと栄養補給なゼリーを飲み干していく。
こういうときでも固形物取っちゃうと夕飯食べられないからね……なにしろ胃袋がちっちゃいから……。
【三日月えみ「……事実関係確認のため、申し訳ありませんがこちらでハルのアーカイブを只今すべて非表示にしました みなさんには深くお詫びいたします」】
【あら】
【えみちゃん手が早いねぇ】
【事務所さんの判断だろ】
【まぁな】
【ハルちゃんが困るかもしれないからな】
【えみままー!】
【で、るるちゃんは何してるの?】
【深谷るる「私たちも今15層くらいを全力で追ってるよ!?」】
【三日月えみ「それでも全く追いつける気はしませんね」】
【草】
【知ってる】
【2人も配信してるもんね】
【ちょっといじわるしただけ☆】
【いつまでもこんな扱いのるるちゃん】
【不幸が薄れた分、完全ないじられキャラである】
【せっかくハルちゃん、休憩してるのに……配信アプリ、ちらっとでも見たのに……】
【なんでこの子、ひとこと、直接……お世話してもらってるはずのえみるるに相談しないの……?】
【ほら、ハルちゃんってば、野良猫だから……】
【ああ、気ままなお猫様……】
【お猫様はな……飼い主を下僕って見てくるからな……】
【ハルちゃんの下僕になりたい】
【落ち着け、それは修羅の道だぞ】
【草】
【落とし穴使って飛び降りる猫?】
【爆風でモンスターを爆死させる猫】
【ああうん、なんかもう猫ならありって気がしてきた……】
【そうだな、もうそれでいいや】
【なぁにこれぇ……(同意】
【草】




