445話 子供たちをようやく見つけた
「で、子供たちは――――」
――ずぅん。
「……なにあれ」
「だんじょん」
「……今さら新ダンジョンが? しかもあんなにでっかい……」
確か、町中とかへのダンジョンの出現とかは10年前のあのときだけのはず。
なのに、町の中にぼこっとでっかい洞窟の入り口が出現している。
「……まぁた、あの誘拐魔王さんが? ほんっとうにしつこいんですから……次はもう適当で良いですよね」
「いい」
「この前のは悪かったかなって思いましたけど、こんだけしつこいんです、もう絡んでくるナンパみたいな扱いで良いですよね」
「いい」
【草】
【事情知らないっぽい?ハルちゃんの誤解が炭火焼きを襲う!】
【まぁしつこさは本物だし……】
【ごんっされてたけどな、つい最近】
【草】
【草】
【すっかり忘れてたわ草】
【けど本当にしつこいな】
【ハルちゃんをお嫁さろろろろろろ】
【攫って子供ろろろろろろ】
【ああああああ!!!】
【ハルちゃんが追っ払ったの知ってるくせに弱すぎる】
【だって眷属だし……】
【始原のオフィスもただいま清掃中です】
【草】
【始原!?】
【お前らもかよ草】
【ちょっと黙っててもらえます? みんなのげろげろ片づけるので今忙しいんで】
【草】
【あれ? 姉御は?】
【さっきので浄化されたからなんかおとなしくなっちゃって詰まんない】
【あのショタコン、騒いでてくれないと落ち着かないんだよなぁ……】
【草】
【草】
【始原からもキワモノ扱いで草】
【わりと序盤からでは……?】
【てかハルちゃんをナンパするとか】
【自殺志願者かな?】
【いや、そもそも幼女なハルちゃんをナンパするとか】
【気持ちは分かる】
【お巡りさんこの人たちです】
【え?】
【え?】
【草】
索敵スキルには――たくさんの適性存在が確認。
「んー……地下が大半ってことは、まぁたあのときみたいにダンジョンがぽこぽこ産まれてる……地上に少し、空に少しかぁ」
まぁ、この町周辺しか確認できてないんだけどね。
――ノーネームさんによると、僕たちは弱体化している。
ないないの代償。
すごく離れた場所へ、そのまま――それこそ、モンスターさんたちに食べられそうな瞬間のまま時間が凍って、ないないから出てきてから始めて動くっていう、僕たちが羊飼いしたときに見た光景になるほどのすごい魔法。
……その代償がこの程度なら、確かに安い。
安いどころかおつりが来るくらいだ。
「……まずは子供たちと合流しましょう。 あの子たちなら、ここにないないされてきてもすぐに陣形組んで生きてるでしょうし。 なによりイスさんはがんじょうですから」
あの子たち、それくらいは鍛えてあるからね。
あとイスさんは、無茶な運用しなきゃ結構飛べるみたいだし。?
【イスさん!!】
【思いだしてもらえてるイスさん】
【イスさん……今1番輝いてるぜ……】
【偽ハルちゃんからはさんざんな言い方されてたイスさん……】
【草】
「ん」
「あ、今、魔法の光が。 あの大通りっぽいとこですね」
ノーネームさんが指した先で、炎と氷と闇がほとばしる。
――5人の属性が3つ、ちゃんと戦えている。
「………………………………」
「なかないで」
「な、泣いてないですって……」
ただちょっと、安心しただけ。
僕は軽く目じりをこすると、羽をすぼめて再度急降下を開始。
【ハルちゃん……】
【なかないで】
【本当に泣かないで】
【ままぁ……】
――待っててね。
すぐに、会いに行くからね。
◇
「次、そこの角! いちなな――です!」
軽い音を立てながら煉瓦色の屋根の連なる道路を――地上10メートルほどの、旧市街だからこそすべてが均一で連結されている道を走る、リリ。
その下の通常の道路で飛んでいる飛行物体上の5人が、彼女からの「よく知った索敵情報サイン」に応じつつも――疑問はまだ残る様子。
『おう! いちななだな!』
『あのお姉さんってやっぱり……?』
『それよりあの人、建物の屋上走って索敵とか大丈夫なの!?』
地上――道路上には、放置された車を押しのけながらモンスターたちがうごめいている。
『あちらです! 人が!』
『はい!』
完全自動運転で安定した動きの乗り物から、見える範囲で襲われている人たちに向けて弓矢と魔法での攻撃が続く。
「皆様! 最寄りの建物の最上階へ! モンスターの密度が低いので建物の中にまで入ってくるのにはまだかかります!」
命からがらで助かった人々や、すでに建物内で身を潜めていた人たちは――リリからの「自分たちの母国語で話しかけられる指示」に従い、次々と上を目指していく。
「「GAAAA――――――――!!」」
『わっ!?』
『ドラゴン……いや、もっと小さいけど飛んでやがる!』
順調に進んでいた「かり」と救助は――――――――
『あ、あの洞窟! あそこから出てきてる!』
『ダンジョンが溢れている……アルア様の御業でも、こんなに早くに……!』
明らかにレベルの違うモンスター。
ワイバーン。
それらは小さな人間の幼体たちを見つけると、歓喜の声を上げ。
『かっ、かいひ――――――――』
「……もー、ほんっとしつこいんですから。 動かないでね、みんな」
『……え?』
『今の、お声は……!』
5人が見上げた先――そして1人が正面に捉えた姿。
白い女神と、黒い女神。
姿形は先ほどの2柱と変わらない――が。
「ノーネームさん」
「ん」
2柱――2人は、「ないない」で減った魔力の都合上、出力を可能な限りに絞り――片手づつを挙げ。
「ホーリー」
「じゃっじめんと」
細かい光の矢をまき散らし――ワイバーンの群れを、なぎ払った。
【居たぁぁぁぁぁ】
【子供たちがぁぁぁぁ】
【リリちゃんも無事ってか屋根の上でこっち見てるぅぅぅ】
【かわいいいいいいいいい】
【かわいいいいいいいいいいいいい】
【ないないされてる人、手挙げてね】
【草】
【ないないされてたら無理だろ草】
【やっぱりハルちゃんだ……】
【ああ……】
【ノーネームさんって呼んでたよ……】
【ああ……!】
【帰ってきた 俺たちのハルちゃんが、帰ってきたんだ】
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