443話 ないない中だった僕たち
「………………………………んぅ?」
僕はふと目を様した。
「……? ……寝る前って何を……」
「ないない」
そういえば顔と体にすごい風が当たり続けている。
風切り音が耳に刺さりすぎて、意識しないと分からないくらいになってる。
「ないない……?」
「ないない」
「……あー、子供たち探しに」
「ないない」
「あのワープホールみたいなのってないないだったんですか」
「ないない」
「ノーネームさん」
「ごめん」
僕は、何度目かにした記憶のあるやりとりで目がすっきりした。
ちょっとだけ後ろを見てみると、無意識で広げて滑空してた白い羽。
その奥には――真っ暗な空間が広がっている。
「暗いのに明るい」
「ないない」
「これが……ないない中の景色なんですか」
「ないない」
「……あれ、カメラさんがない。 カメラさーん」
「ないない」
「ノーネームさん」
「ごめん」
手を繋いだまま、羽を広げたまま眠りこけてたらしい僕。
……まぁ普通の状態じゃないよね。
あ、にぎにぎしてきてる。
ノーネームさんも今起きたばっかなのかな。
「みんな、こうしてないないされてきたんですか」
「ないない」
「……んーっ。 あー、これ、完全に寝てるのと変わらなかったんですね」
「ないない」
「ずいぶんよく寝たこの感じ……あー、そういやあの、魔王さんが来たあの地下のダンジョンで目が醒めたときみたい」
「ないない」
「けど、あのときみたいに疲れてなん……か……」
僕は、とりあえずで体を確かめるために真下を見て――つい最近まであった、心しかでもちゃんとあって、あるだけでちょっと嬉しくって、あとるるさんにすごい目で見られてた、ちょっとだけ成長してた体のおっぱいが消失していることに気がついた。
「ないない」
「ない……」
「ないない」
「ないないしちゃったんですか?」
「だいしょう」
適当に「ないない」って、たぶん言葉の響きが楽しくってしゃべってただけだろうと思って聞いたら、普通に答えてくれたノーネームさん。
「代償……あのときは、すっごく疲れて弱くなってましたけど」
確か、レベルとかスキル自体が下がってたんだっけ?
まぁあのダンジョン協会の水晶とかないから、あくまで僕個人の実感でだけども。
「よわくなった」
「どれくらいですか?」
「ん」
ぴこん。
【★10000→★100】
「……その星って、レベル表記なんですか」
「ないない」
「もはや僕自身が何者なのかよく分かりませんけど、女神族とかそういう?」
「ないない」
あのときは、レベル測定の水晶に手を当ててぱーんってはじけちゃったけど。
「……もし、おっぱいある体のときにあれやってたら」
「ばーん」
使える方の手を大きく開いて、その爆発度合いを表現してくれるノーネームさん。
「それはやばいですね」
「やばい」
「あのときおっきかったら、みんな巻き添えに……」
「やばい」
「そういう意味ではあのとき幼女で良かったですね。 もう幼女に戻ってますけど」
「ないない」
「あ、ノーネームさんもちっちゃくなってる」
「むふん」
どやぁ、ってしながら無くなったお胸をぽんぽんと叩いてるノーネームさん。
「つけたし」
「かのう」
「?」
「付け足しって……いや、偽乳はダメでしょ……」
「だめ?」
「うん。 男を喜ばせておいていざとなったら裏切る偽物はダメですね」
「だめ……」
「あ、るるさんに言ったらだめですよ?」
「ん」
「本物の女の子なるるさんにとってはアイデンティティーと等価の話題なんです」
「ん」
すかっ、すかっ。
ノーネームさんが、なくなったお胸を揉もうとして風を切る。
「良いじゃないですか。 ノーネームさんは成長すればまたお胸生えますよ」
僕はどうなんだろうなぁ。
またああなるのかなぁ。
……おっきくなって、子供たちと一緒だった期間で、実は心配だった……その、生理とか。
結局無かったから安心してたけど、やっぱ成長するってことはそういうのが
「こども」
「うめる」
「……思考を読まないでください」
「うむ?」
「産みません」
「うむ……」
「や、知ってるでしょ……僕、意識は男のままなんですって……」
これでも一応は元男なんだ……そういうセンシティブな話題は、たぶん意識そのものも女の子だろうノーネームさんとしたくはないんだ。
分かってる。
こういうの、彼女とか居れば普通にする話題だって。
でも、僕に居たことないんだから免疫無くって当然じゃないか。
「で、僕が起きたってことは」
「ないない」
「終わるんですか?」
「ん」
何もない、ただの虚空。
僕たち以外は光を発していなくって、けども僕たちだけはお互いになぜかくっきりと服の色から瞳の色までが分かる程度には明るく光ってて。
まるで、大きな管の中を後ろから押し流されるままに進んでいるかのよう。
「ないない……不思議な空間でしたね」
「すき?」
「え? あ、はい、好きですね。 怖くないですし」
「すき……♥」
なぜか下向いてほっぺ紅くしてるノーネームさん。
……ほんと、ずいぶん人間味出てきたなぁ。
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