442話 「輪廻の女神」
【速報・ここ、11年前のあの日】
【速報・リリちゃん】
【速報・全方位串刺し】
【速報・ハルちゃんたち、2対ずつ居る】
【速報・どっちかだけで良いからほしいいいいいいい】
【草】
【草】
【なぁにこれぇ……】
【んにゃぴ……】
【たったの数分の密度とは思えない情報量】
【もうやだぁぁぁ! やだもうううう!!!】
【かわいそうに……】
水平線までを覆い尽くす――まさに「極大魔法」でも呼ぶべき大出力の魔法を、数度に渡って繰り返す女神。
そうして円環が天を埋め尽くしたタイミングで数度目に黒い渦から魔王軍が出現しだし――ある程度の数が出たところで、天から無数の光の雨が降り注ぐ。
「つぎ、40びょうご」
「はいはい、ジャッジメントジャッジメント」
【草】
【軽ぅい】
【なんかもう流れ作業になってない……?】
【まぁ偽ハルちゃんの出力半端ないし】
【これ、初日の大被害完全に防げるんじゃ?】
【いや、でも……】
【ああ……】
【ハルちゃんたちが……】
「ふぅ……あの子たちは?」
「かり」
「……狩り?」
「ん、かり」
こてん。
白い女神が、首をかしげる。
「狩り?」
「ん」
「……ああ、堕としきれなかったちっちゃいのを倒すついでに、ないないしてない人たちを助けてくれるんだね」
「ん」
黒い女神が、首を縦に振る。
【草】
【草】
【ノーネームちゃん! 偽ハルちゃんには「かり」じゃわからないって!】
【あいかわらずに言葉が足りないノーネームちゃん】
【でもそんなところが?】
【しゅきききききききき】
【大好きききききききき】
【ノーネームちゃん愛してるるるるるる】
【あーあ】
【ノーネームちゃんがかわいすぎるからね、しょうがないね】
【けど、偽ハルちゃんたち……】
――首をかしげたり振ったりしている女神たち。
彼女たちの周囲を包んでいた、長くて美しい髪。
それらは――肩に届かないどころかショートボブほどにまで短くなっていた。
【やっぱあれ……】
【ああ……】
【魔力……】
【使っちゃうとああなるのか……】
【体も縮んで、髪の毛も……】
【また髪の毛の話してる……】
「んー……急だったし、邪魔も多かったし、そろそろ限界かな」
「ん」
「まぁ突貫工事の割にはうまく行った方だよね」
「ん」
2人は――2柱は、周囲を見渡す。
「ま、とりあえず片っ端からないないできるようになったし、あとはどうとでもなるよね」
「なる」
「えーっと、ダンジョンシステムは?」
「まもなく」
「ついででお酒は?」
「ない」
「えー」
「しゅん……」
「や、怒ってない怒ってない、ちょっと残念なだけ」
「しゅん」
【かわいいいいい】
【かわいいいいいいいいい】
【かわいいいいいいいいいいいいい】
【2人の掛け合いは俺たちの知ってる2人そのものなのになぁ】
【そっくりなのにね】
【アル中なところまでね】
【草】
【まぁ女神様だし】
遠くの方で、かすかに炎が上がり始める。
空に響き始める、エンジン音。
それらはまだまだこの地域にたどり着くことはないが――まとまった数の軍隊が、動き始めた証拠。
「人間さんたちも迎撃し始めたね」
「ん」
「取りこぼしの分は私たちがやったし、あとは自力でがんばってもらおっか。 まぁ援軍も来るし、大丈夫でしょ」
「ん」
「……それに、さすがに数万年稼働してると疲れてくるし。 ちょうど休憩には良いかな」
「つかれた」
2柱は脱力し――サンダルを履いた足先が、光の粒子になり始める。
【えっ】
【何万て】
【偽ハルちゃん……】
【消えるのか……?】
【ああ、ノーネームちゃんの方が消えるの早い……】
地上では「イスさん」に乗った子供たち「6人」が、地上に現れたモンスターを迎撃しているのが確認でき。
――ぼこっ。
町の中、住宅の密集していたエリア。
そこが黒い光に包まれ、一瞬ののちに岩でできた空洞――入り口が出現する。
【!?】
【ふぁっ!?】
【町の1区画が盛り上がって】
【もしかして:ダンジョン】
【あー】
【ダンジョン化……ってことは】
「よし。 これであのやんちゃなモンスターさんたちはみんな、最低でもダンジョンを攻略しないと地上に出てこれなくなったね」
「まりょく、たかいじゅん」
「うん、ありがと。 強さに応じて深い階層から。 こうすると人間さんたちは対応できるんだよね」
「けど、まだ」
「ちょっとは漏れもあるけど……人間さんが全滅するほどじゃないだろうし、なんとかなるでしょ」
【ああ……】
【もしかして、ダンジョンのあのやり方って】
【私たちのために……?】
【そうだよな いきなり空とか地上にポップされてたら、今みたいな平和なんてたかが10年で……】
【だよな】
【偽ハルちゃん……】
【いや、この子もハルちゃんだよ】
【そうだよ】
【体が消えるほどに魔力使って】
【ああ……】
2柱は、もう胸元から上しか維持できず。
しかし――消え始める前からずっと繋いでいた手は、繋いだままなのだろう。
「あとは、任せよう」
「ん」
「きっと、うまくやってくれるよね」
「ん」
遠くで特大の煙が上がる。
「んー、そこそこの武器あるみたいだし、思ったよりさくっと撃退できるかも。 要らなかったかなぁ」
「んーん」
女神たちは――最後、消える寸前に、託す。
「ま、どう転がっても、次の私たちがなんとかしてくれるさ」
「ん」
【ハルちゃん……】
【ノーネームちゃん……】
【消えちゃった……?】
【消えちゃった】
【なんで、誰にも知られないで消えちゃったんだよ】
【この配信がなきゃ、誰もハルちゃんたちのしたことなんて】
――――――ぶん。
ちょうど、彼女たちの消失した地点。
そこに黒い渦が出現し、
「――――――ぷはっ……あれ。 ここ、どこ?」
「ちきゅう」
「地球……え、戻ってきた? 子供たちは?」
「ん」
「あ、あんなとこに。 良かった、イスさんも元気だね」
「いすさん」
【あああああああああ】
【ああああああああ】
【ハルちゃんが】
【ノーネームちゃんも!?】
【出てきたぁぁぁぁぁ】
【生きてるぅぅぅぅ】
【偽ハルちゃんたちが消えちゃった代わりに、ハルちゃんたちが……】
【だめだ、嬉しいのに涙が止まらない】
【ハルちゃんたち、知ってるのかな】
【分かんない】
【けど、子供たちと】
【リリちゃんがずっと待ってた、ハルちゃんだ……】
【え? あの、ノーネームちゃん……何匹居るの……?】
【草】
【匹でカウントしないの!!】
【だってぇ……】
【1匹くらいちょうだい? ほら、手乗りサイズの】
【そんでノーネームちゃんを撫でくりりりりりり】
【あーあ】
【つまりはコピーノーネームちゃんとノーネームちゃん、偽ハルちゃんと一緒だったノーネームちゃんの3人は最低でも居るのか】
【なるほど】
【なんで泣いたままにさせてくれないのぉ……?】
【ハルちゃんの配信だからな、泣いたら必ず笑わせてくるんだよ】
【だな】
【あんな顔していつも俺たちのことを気にかけてくれるのがハルちゃんだからな!】
【女神様だからね】
【ままぁ……】
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