440話 【朗報・魔王軍、串刺し】
【場所は南美食――11年前にダンジョンポップの直撃受けて壊滅しかけた地方】
【特に欧州は地続きなもんだからダンジョンの被害が大きくって】
【だから各国の軍とかが手が回らなくって】
【そのせいで主要都市しか守らない国家に不信感を抱いた民衆、ダンジョン適性持ちの覚醒、市民たちが自力で退けたのに国が役に立たなかったって結果になって反乱祭り、勢いで都市が国家から離脱、次々に建国って流れだったか】
【それが100を超える地域で同時に起きたからな】
【なんなら今でも独立運動とか多いけど……】
【……南美食のこの町の首都って】
【ああ】
【11年前に建国された「ソレイユ王国」の首都……だな】
【……その王国の女王様って】
【激おこぷんぷん丸銀髪っ子】
【クンカーのお姉ちゃん】
【国連会議でことごとく妹のためにぶち切れてた、姉の鏡】
【あの顔した女王様に踏まれたい】
【草】
【まじめにしようね?】
【はい】
【ごめんなさい】
【よし】
【そんで、ついさっきまで生死不明、行方不明だったのが】
【その女王様の妹のリリちゃん……】
【……そのリリちゃんってさ 単独で来てたよな、うちの国に……】
【あっ】
【それも、ハルちゃんが騒がれ始めたけど、ダンジョン配信に興味ない一般層には少ししか知られてなかった時期に】
【確かお供の人の代わりにリストバンド使えなくなって、ハルちゃんが救出したんだったか】
【あー】
【……もしかしてさ】
【ああ】
【繋がっちゃった……?】
【繋がっちゃったね……】
【え 冗談じゃなくて?】
【おう、こんだけの状況証拠があるぞ】
【しかも、この映像にはしっかりと11年前って証拠が】
【いやいや……いやいや】
【11年前の実況とか不可能だろ!?】
【忘れたのか? あの異世界と地球、1日の長さすら違うんだぞ?】
【あっ】
【大手配信サイト使ってるクセに、肝心のそのサイトが何してもチャンネル停止とかできない技術力のノーネームちゃんorコピーノーネームちゃん】
【ないないっていうワープでも1年とかかかる?距離の異世界とラグ無しでコミュニケーションすらできるんだし】
【ノーネームちゃんならできるよな】
【できちゃうよねぇ……】
【ノーム様……】
【ノーネームちゃんだぞ】
【11年前のあの日、大陸の多くの地域がたったの1日で壊滅、そこから1年かけての長い戦いがあった――これが、その初日としたら】
【その日ってさ あんまりにも被害が大きくって、初日の記録って残ってないんだよね】
【でも、生き残った人たちの回顧録みたいなので載ってたよ】
【「女神様と我々で、町を取り戻したんだ」って】
【ただの比喩だと思ってたけど……】
【あっちの信仰的に違和感ない表現だったけど】
【……そのまんまだった……?】
「……うん、よし。 じゃ、」
天上をまばゆい金色で埋め尽くし続けた金色の女神は、特に力を込める様子もなく――手を振り下ろし。
「ジャッジメント。 とりあえず主力はみんな吹き飛んでね」
「「「「――――――――!!!!」」」」
金色の雨のスコールが――南欧州一帯に、降り注いだ。
『わぁ……』
『綺麗……』
『これが、アル様の本気なのね……』
『光の雨とか……もはや弓すら引いてないもんな』
『こんな大魔法使うんだもん、あんなにちっちゃくなっちゃうよね』
まばゆい光が、見渡す限りを縦に突き刺している。
無数のモンスターたちが――全て、串刺しにされていて。
それはまさに、空に掲げられた墓標――「害獣」の死体を吊し、近づいてくるなと警告するかのよう。
【ふつくしい……】
【ぐろいはずなのに】
【あ、そっか、血とか下に垂れてるもんな】
【ぐろいよー】
【それを相殺するのがあの金色の矢だな】
【綺麗に光ってるからなぁ】
【まあ遠くの映像だしな】
【あいつらが生きたまま地上に来てたらもっとグロい展開になってたしな】
【しかしまさかあれを一撃でとは】
【普段のハルちゃんでももっと時間かかるのにね】
【偽ハルちゃんの方が強いのか……】
【偽ハルちゃんでもなんでもいい 地上の人たち、救ったんだぞ】
【ああ……!】
【え、でも、あの日の初日が最大の犠牲者数……】
【忘れたのか? さっきハルちゃん、「ないないシステム」とか言ってたんだぞ】
【え】
【あっ】
【もしかして:先に、命の危険ある人たちのないないだけやった】
【やってたんだろうなぁ】
【ひぇぇ】
【ポップする場所とか分かってたらやりようあるもんな】
【ああ、だから町ごととか国ごと生存者皆無だったり……】
【まーた繋がっちゃったねぇ……】
【そうじゃなきゃ、こんなにのんびりしてないもんな】
【ああ、誰よりも人助けに敏感なハルちゃんだからな】
「――ふぅ。 じゃ、そこの銀髪の子」
「リリー……いえ、リリと申します」
「うん、じゃあリリちゃん。 その子たちと一緒に……」
【やっぱリリちゃんのこと……】
【初対面か】
【ハルちゃんだったら「リリさん」って言うもんなぁ】
【けど、それじゃ俺たちのハルちゃんはどこへ……?】
【ノーネームちゃんは……ダメだ、基本無言だし突っ立って偽ハルちゃん見てるだけだから違いが分からない……】
【草】
【え、そんなの簡単でしょ ノーネームちゃんかわいいいいいいいい】
【ほらね?】
【なるほど】
【草】
【え、でもさ コピーノーネームちゃんが配信に張り付いてるんじゃ?】
【あっ】
【悲報・ムダないない】
【お役所と!! 残された家族の!! 負担!!】
【なんでお前らはこうも抜群の連携なんだよ】
【だってもう1年以上やってる定番のだし……】
【なんで、いつでもないないされる準備できてるんだよ】
【おいしいとこでないないされないかなーって】
【えぇ……】
【ま、まあ、実質的に安全になった異世界に飛ばされるだけだから……】
金色の女神が「イスさん」へ降下し、リリーと5人の子供たちへ、下の町で食べられそうな人たちを救助して回るようにと告げる。
「君たちが太刀打ちできないレベルのは、今のでみんなやっつけたから。 ……えっと、たぶん教えてあるやり方で引き撃ちしつつ、できる範囲で助けて回ってね。 その……奇っ怪な物体……に乗ってる限り、たぶん無事だから。 うん、見た目はともかく、性能は良いみたいだから」
【草】
【イスさんの呼び方】
【まぁ実際現代アートっぽいオブジェっぽい何かだし……】
【現代アート展にそれっぽく置かれてたら納得しそうだもんな!】
【まぁ現役女神様の持ち物だからそのまま安置されそうだけどね】
【草】
金色の女神は――子供たちと一緒に乗っていた黒い女神の手を掴みつつも、目線は既に別の戦場を向いている様子。
【でも……】
【ああ】
【ハルちゃん……】
【ハルちゃんじゃないけどハルちゃんだ】
【ハルちゃんじゃないけど、でもハルちゃんなんだよな】
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