438話 【半径300㎞の大魔法】
「うーん……まぁないないできるし、いっか」
女神はつぶやく。
【何が「いっか」なのハルちゃん……】
【いつにも増して動きが予測不能すぎる】
――ヴォン。
つぶやいたのちに――半径が10「キロ」はある、巨大なリングを頭上に展開。
【は?】
【え?】
【なぁにこれぇ……】
【え、あの】
【いつもの頭の輪っかさんじゃ】
【いや、サイズが】
その光は、世界へ響く重低音とともに次々と出現し――10を重ねるあいだに、水平線の彼方へ到達。
けれどもまだまだそれは、数とサイズを拡大させながら上空へと展開していく。
『なんだこれ……!?』
『アルテさまが、こんなに……』
「――ハル様。 私たちは、何をすれば?」
そんな女神にも動じず、「リリ」が問う。
「ん? ああ、ちょっと待っててね」
んくっ、と酒瓶を煽りながら、金色の女神は――まるで「この1本を飲み干すまで待って」とでも言うように。
「……ぷは。 ノーム、その奇妙な物体さんの運転は?」
「じどう」
「ん、なら大丈夫だね。 君たちは……そのへんの武器の準備でもして待ってて」
【!?】
【この子……ハルちゃんじゃない……!?】
【だよな!? やっぱそうだよな!?】
【だってハルちゃんなら、この……不可思議な存在のこと、イスさんって優しく呼ぶもん】
【ハルちゃんなら不思議な形のイスさんって呼ぶよな】
【この得体の知れない存在のことでさえさん付けで呼ぶんだからな】
【ハルちゃんは優しいんだよ】
【草】
【草】
【そっち!?】
【イスさんかわいそう】
【だって……】
【一瞬だけ流線形の戦闘機みたいなのになってたとき以外はなぁ……】
【学校のイスをひっくり返したのがベースだからなぁ……】
『みなさん。 このあとでお仕事みたいです』
そう、「リリー」が言う。
『ハル様たちが、このタイミングで私たちに仕事をくださいます』
そう、「リリ」が言う。
『……あなたは、妹のリリー……なのね?』
そう、「姉」が問う。
『ええ、ノーネー……ノーム様が、遣わしました』
『分かりました。 妹がふたりに増えた「だけ」、ですね』
自分よりも背の高い――スレンダーな美人に育った妹を見上げながら、まだ10にもならない姉は理解した。
『どういうことだ!?』
『アルア様とノーム様のお導きです』
『よく分かんないけど! でも、この欧州っぽい町に住む人たちが……あんな風に皆殺しにならないんならっ!』
『だ、だよねっ! ぼ、ぼくたちもできることを……!』
【お】
【子供たちがしゃがんでる】
【いや、武器を集めてるな】
【もしかして:まだ戦う】
【まぁこの光景見ればなぁ……】
「「「――――――――――――――――!」」」
空に無数に空いた虚空から、次々とモンスターが現れる。
鳥系統のモンスターから人間を模したハーピー、哺乳類に羽の付いた形をしたキマイラ。
小さいが数億匹の群れで蹂躙する虫系のモンスター、魚から鯨まで多種多様な形とサイズをした水生系のモンスター――それらはもちろん羽を生やしていて。
そして、当然ながら――竜/龍/ドラゴンも、姿を現し始める。
それも、それぞれが数千、数万、数十万単位で――またたく間に、空という空を埋め尽くしていく。
【ひぇっ】
【じょばばばば】
【悲報・見たことないモンスターの方が多い】
【こわいよー】
【数と種類とサイズと規模がケタ違いすぎる】
【何だよこれ……なんだよこれ!】
【つい今日、こっちに現れて偽ハルちゃん?が討伐したのってただの前哨戦かよ!?】
【こっちでも魔王が出てたのに……】
【こわいよー】
【数が……】
【異世界で見た規模だな……】
【まさか魔王軍の本格襲来が、欧州からとは……】
【ねぇ、この画像見て 下の大通りの看板、やっぱ美食の国の言葉で書かれてる】
【マジかよ】
【てことは……】
【場所が確定したか】
【ああ……】
【たった今、欧州上空に魔王軍が】
【こっちで撃退したのは囮か?】
【いや、うちの国のはハルちゃんが来ただろ】
【あー、成功報酬にお酒何百本持ってたもんな】
【草】
【ハルちゃん! もっと持ってって】
【うちの酒蔵に来てくれてない……】
【草】
【草】
【いや待て、それだとおかしいんだ】
【は? 何がだよ】
【仕事でこっちに居るんだが――「欧州の配信のどこを見ても、こんな光景起きてない」】
【は……?】
【え、でも】
【あー、ムームルマップで場所分かったわ、プロヴァンス地方だわ】
【でかした】
【それどこよ?】
【あれだ、10年前、いや、11年前にあのムカ着火ファイヤー女王様が建国した国の首都になった町だわ】
【草】
【草】
【分かりやすくて草】
【ありがとう】
【どういたしまして】
【優しい世界】
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