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325話 「nai-nai error」

【ん?】

【??】

【あれ】


【1ヶ月にはまだあるはずじゃ……?】


「……ふむ。 此所はどこであろうか」


老人が目を覚ましたのは、漆黒の空間。


上下左右いずれにも光はなく、なのに自身の体は――「ないない」された装束のままで、ぼんやりと目に映っている。


「さて、コメント欄が映っているということは、配信は再開したと。 よろしいか?」


【ああ……】

【うん……】

【そうなんだけど……】


「何じゃ、どうした」


――自分の居ないあいだに、地球で何か。


そう戦慄した彼だったが、直後のコメントで笑みが浮かぶ。


【みんな、落ち着け  この爺さん、AED3回使ったんだぞ】

【草】

【えぇ……】

【尊死しそうになって?】

【草】


【良いな! 情報は小出しにして差し上げろ!】

【ないない中に尊死されたらどうしようもないもんな!】

【さすがの爺さんでも助けがないとなぁ……】

【草】

【ご老体にむち打つから……】


【でもそのご老体、よりにもよって全世界注目の中で朗々ととんでもない欲望をさらけ出したぞ?】

【草】

【爺さんすげぇ】


【俺、爺さんについていきます】

【俺も俺も】

【私も!】

【しっしっ】


――何かしらはあったにせよ、現在進行形で地球が大規模に襲われるということはなさそうじゃな。


「ならば、儂のノミの心臓が止まらぬよう、少しずつ説明しておくれ」


【????】

【ノミの心臓??】

【あの、世界中の記者が入ってた国会であんな大立ち回りした爺さんの心臓がノミなら、俺のは一体……?】


【……ゾウリムシ?】

【草】

【待て、アメーバかもしれないぞ】

【俺は単細胞生物にまで落ちぶれたのか……】

【草】

【かわいそすぎて草】


「ふむ、このノリならば問題なかろ。 では早速、――――――何奴」


ひゅんっと抜かれる刀。


それは、彼の後ろへ向けて放たれ――。


「……ほぇ……もう朝ぁ? まだ暗いじゃん……えみちゃん、あと3時間……」


「……お主は」


その刀は、殺気の無さを感知して寸前で止まる。


その刃の先には――眠そうに立っている、深谷るるが居た。


配信でいつも見せていた軽装の鎧に愛用の剣、そして背中には登山リュックという出で立ちの――視聴者たちが見慣れた彼女が。


【ふぁっ!?】

【え? え?】

【るるちゃん?】

【え、何、どゆこと?】

【待って、なんでここにるるちゃんが】


【あの、そういえばるるちゃんの配信とかえみちゃんのとか……爺さんたちのあの時期から、全然……】


【え】

【あー、確かに】

【さすがにこの事態だから、事務所が自粛させてるのかと】

【俺は、療養中だと】


【でも……ないないされてるよ……?】

【草】

【悲報・るるちゃんがないないされてる】

【るるちゃんダメでしょ! いかがわしいこと言っちゃ!】

【まさかノーネームちゃんがるるちゃんをないないするとは……】


【大丈夫? ノーネームちゃん、るるちゃんのこと怖すぎて思わずないないしてない??】

【るるちゃんが怖すぎて思わずないないしたとか……?】


【草】

【ありそう】

【ありそう】

【るるちゃん……もうちょっとだけ優しくしたげて……】

【そうそう、今のノーネームちゃんってば、前よりずっと人間くさいから】


「んぅ……。 ………………………………。 ……はっ!? 朝じゃない!! あとコメント流れてる! あ、会長さん! なんでここに!? あれ、ここどこ!? 夜!? 真っ暗!? なのに見える!! なんかすごい!!」


【草】

【寝起きでこれだけしゃべれるのかるるちゃん……】

【逆にすごいね!】

【完全に分かってないこの顔が好き】

【分かる】


「……それは儂のセリフなのじゃがなぁ……」


寝ぼけていたるるを認め、とっくに武器を納めていた彼は……おそるおそると、こつこつと刀の鞘で見えない床を突きながら、るるへ近づく。


「見えないが、足元はある、か」


【るるちゃーん!!】

【生きてた……生きてた……!】

【リリちゃんの件があるから、居なくなって不安だったのよ】

【全るるちゃんファンが続々と同接に!】

【この絶壁具合……いつものるるちゃんんんんんん】


【!?】

【草】

【さっそくないないされてら】

【ノーネームちゃんガード、とうとうこのワードにも……】


「あれ、配信……」

「されておるようじゃの。 つまりは、ノーネームちゃんの影響力に入っておるということ。 ……しかしこの状況は一体」


「……ハルたん…………戻って来たら一緒にお風呂入って、洗いっこしてぇ……うへ、うへ……ちょっとだけお胸が出てる体を優しく両手で……あ、そうだわ、買い込んであるコス、全部着せながらの撮影大会も……」


「あ、えみちゃん」


ぼうっと、るるの横に現れたのは――立っている状態なのに顔は完全にとろけている、恐らくはこちらも寝ぼけている様子の三日月えみ。


【草】

【悲報・えみお母さん、やっぱロリコンだった】

【えみちゃん……】

【ま、まあ、まだ健全の範囲の発言だから……】


「ハルたん、私のおっぱいで挟んであげたい……」


【だめだった……】

【もうだめだ……】

【草】

【えみちゃん! 配信! 配信してるよ!!】

【草】


【ハルちゃんに関わると配信事故が……】

【ま、まあ、ハルちゃんだし……?】

【いやいや、こんな寝言を言う時点で相当……】

【ああ……】

【るるちゃんのはすっごくまともだったのに……】


【もしかして:えみちゃんの発言のせいでるるちゃんがないないされた】

【草】

【えぇ……】

【巻き添えとかひどすぎる】

【えみちゃん!! 欲望は分かるけどほどほどになさい!!】


「………………………………?」


ぱちり。


彼女の、普通にしていれば切れ長で、実年齢よりも数歳上に見られる端正な顔は、るると老人を認めた。


「あら、おはようございます。 もうないない先に着いたのでしょうか?」


そうしてさらりと軽い微笑を浮かべ、外行きの顔と声を作り出している彼女。


完全に無意識のその行動に――「やはり女は怖いのう」と思う老人だった。

「ハルちゃんがこれから何やらかすのか気になる」「おもしろい」「TSロリっ子はやっぱり最高」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
「何奴」って爺かっけぇ!達人! えみさんの発言よwww
[一言] ついにないないの秘密が。なんか暗いんだけど地獄か? って、えみちゃんが全部持っていったー …いろんな意味で、終了ですね
[気になる点] なにがエラーなんだろう? るるさんが病み状態から回復していること?
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