322話 おさけ
「やー。 嫌なことがあったらお酒だよねー」
【草】
【ハルちゃん……】
【発想が完全に俺たちなんよ……】
【分かる】
【すごくよく分かる】
【会社終わったらお酒さんに頼らないと……】
【時代遅れの感性しか持ってない上司にいびられたときー】
【「男なんだからこれくらいしなさい」っていびられときー】
【「女なのに結婚しないの?」っていびられときー】
【「え、そっち系? はやってるよね」っていびられときー】
【「今どきだからね、はいはい」って放置されたときー】
【良いんだ……良いんだ、どうせ誰にも理解されないんだ……】
【もうやめよ?】
【視聴者の闇があふれてる……】
「お酒飲んでるあいだだけは、ヤなこと忘れられるよねー。 起きてるといろいろ考えちゃうからさー」
【分かる】
【すごくよく分かる】
【さすがハル様】
【まさに女神がごとき発想】
【草】
【大人って、大変なのね……】
【朝っぱらに横たわってる大人見ても、哀れんでやってな……】
【今度から、そっとあったかいお茶でも置いといてあげよう……】
『あるて』
『おしゃ』
『しゃけ』
『おいし?』
「うん、ありがとー」
【草】
【かわいいいいいい】
【かわいいいいいいいいいいいいい】
【子供たちに晩酌させてるハルちゃん】
【ま、まあ、神様だし……】
【てことは子供たちってば神職?】
【巫女か……】
【ショタっ子も巫女で!!!】
【姉御、お前……】
【でもちょっと分かる】
【お前……】
【<URL>】
【お前……】
【草】
あれ?
僕、どこに居るんだっけ?
僕は、くらくらする頭にくらくらする目線をどうにかして揃える。
こんなにくらくらするのって滅多にないのに。
あ、そっか、魔力。
あんなに使っちゃったからなんだ、きっとそうだ。
――いつの間にかに忍び込んでた建物の中。
壁には幾何学模様の溝がうねうねと掘られていて、明るくって、人工的な安心感があって。
暑くも寒くもなくって、ただそれなりに居心地の良い密閉空間で。
「……人間の作った構築物って、安定してて良いよねー」
【朗報・ハルちゃん、ビルとか好き】
【ハルちゃんは人工美がお好みか】
【なるほど】
【それならなおさら現代の地球とは相性良いよね】
【あー】
【ちょっとわかる】
【にしても、異世界のビルってすげぇな……】
【内部が、まさかSF系のゲームとか映画に出てくる感じとはな……】
【SFマニア歓喜】
こくり。
いつの間にか手にしていたコップになみなみと注がれてるお酒を口に運びつつ、初めて見る気がするけども見覚えのある気がする光景を見渡す。
よくあるビルのワンフロア。
天井は電灯……じゃなくて、掘られた溝に沿って灯りがあって。
壁にも掘られた溝から灯りが……こっちは右に左にと、何かの通信をしてるっぽい感じで。
いくつかのイスとかソファが無造作に置いてあって、何も置いてないテーブルらしきちょうど良い高さの台もそこここにあって。
「まるでごく普通の会社の……あれだ、フリーアドレスのあの感じだぁ」
僕がクビになった会社のオフィスみたい。
リモートのあとにリノベートして良い感じになってたんだよね。
クビになったけど。
幼女になったからって言い訳、通じなかったけど。
【ハルちゃんったら博識】
【え? ハルちゃん、そこまでくわしいの?】
【まぁ10年くらいぶらり旅だったし】
【ハルちゃんの能力ならどこでも行けただろうし】
【フリーアドレスとかいう、お子ちゃまのお口から発せられるはずのない語彙よ】
【ハルちゃんだからね】
【ノーネームちゃんほどでないにしてもくわしいよね】
よく見ると、壁の角とかにボタンっぽいのがあるのもまた、僕がかつて働いてた会社っぽい感じ。
「学校とはちょっと違うなー……やっぱ会社かなー」
1口飲んで、ほうっと息をつくたびに子供たちから注がれるお酒。
これならいくらでも飲めるね。
この体の限界……や、幼女ボディでの限界が、確か焼酎で数個、日本酒のでっかいので10本くらい、ワインだと20本くらいだったし、まだまだ行ける気がする。
「んー、今日はロゼワインが良いかなー」
【ロゼワインを捧げよ!】
【もう注文した】
【今や、どこの神社でもお寺でも教会でもハルちゃん宛て受け付けてるからね】
【宗派を超えるハルちゃん……】
【結構な宗派で、ハルちゃんは例外って断言してるからね】
【まぁガチで地球外の存在だし】
【なお、ハルちゃん教もロリかショタで完全に2分している模様】
【なお、さらに両性派と無性派も存在する魔境】
【人間ってバカばっか】
【まーた宗派分裂して内ゲバ始めてる……】
【その宗教対立、姉御が原因じゃない??】
【マジで姉御のせいで草】
【失礼ね! 百合教団も半分くらいあるわよ!!】
【それでも姉御は、個人でハルちゃん教の25%を支配しているわけだが……?】
【ハルきゅんって言いなさい!!】
【草】
【ダメだこの人……】
【このノリがわりと海外でも力持ってるのがなぁ……】
【なにそれこわい】
「……あ、赤毛の子」
『?』
なんとなくで目に入った、赤毛の子のくせっ毛の髪の毛。
「……君、キャシーって言う名前?」
『!?』
【ふぁっ!?】
【えっ】
【ハルちゃん、いきなり何を】
【でも赤毛の子、めっちゃびっくりしてる】
【……ってことは?】
【朗報・赤毛の子、子供たちの中では長女的な子、キャシーちゃん】
【マジか】
【あ、めっちゃ喜んでる】
【ただ適当に名前をつけたのか、それとも……】
【なんか地球っぽい名前ね】
【多分地球の名前に変換したんじゃない?】
【あ、似てる発音ってことね】
【ハルちゃんの発音、未だに子供たち、ぜんぜん話せてないしな……】
あれ、なんでこの子が「キャシー」って分かったんだろ。
……まぁいいや、なんかだんだんこの子たちのことが分かってきたし。
「……あれ。 そういえばノーネームさんは?」
「ここ」
「え?」
僕は、足元から聞こえた返事に視線を落とす。
「……ノーネームさん、なんで寝てるんですか?」
「ねる」
「疲れたんですか?」
「ねむ」
「眠いんですか。 だから床で寝てるんですか?」
「んぅ」
【悲報・ノーネームちゃん、力尽きてた】
【垂れノーネームちゃん】
【かわいいいいいいいいいいいいい】
【かわいいいいいいいいいいいいい】
【さっきから見えないと思ったら】
【まさかの床で寝てた】
【というかハルちゃん、普通にビルの中入ってるね……】
【なんかもう堂々と階段降りて、座れるとこ見つけて座って、おもむろにお酒取り出したよね……】
【流れるような動作 さすがは呑兵衛】
【神様だからね、お酒が好きなんだよ】
【とりあえずうまい酒を提供すれば滅ぼされないな!】
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