303話 VS.異世界魔王さん軍@地下4
「むぅ……」
飛んでくる矢をかわしては、残った鳥さんたちの襲撃が来る。
襲撃をかわそうとすると少しであっても高度を下げざるを得なくって、そうするとまた矢がぎりぎり届く位置。
……僕みたいに、飛行系の敵――人間とか――と戦うのを想定した戦いだね。
魔王さんが告げ口したのかな?
いや、どうだろう……もしかしたらこれが、この世界での普通の戦いかもしれないし。
正直、やりにくい……や、敵の嫌がることをやるのが戦いだから、むしろこれが正解なんだけどね……。
これまでみたいに決まったルーチンで楽々さくさくだったのがおかしいんだもん。
魔王さんのだもんね。
これくらいは当然か。
大丈夫、まだこれでもこのダンジョンでは血飛沫上がらないから。
あのグロさと鉄臭さと生臭さはやっぱりヤなんだ。
【お】
【もくもくが晴れた……けど】
【半分くらい残ってるか……?】
【あ、あそこ! 仲間を盾にしてる!】
【なんてやつらだ……】
【モンスターだからこそできるのか、多少でも知性があるからできるのか】
【ああ、だからわんにゃんたち、みんな鎧と盾つけてるのね……】
【上空からの一斉射も、固まって防御して】
【倒された仲間の鎧とかでさらに固めるのか】
【あ、でも、結晶にはなってるね】
【鎧とかは結晶にならないのもあるのか】
【……ドロップ品とか?】
【あー】
【えぇ……】
【モンスターが、仲間のドロップ品使ってくるのぉ……?】
【やばくない?】
【やばい】
【それ、ヘタすると回復アイテムとか……】
「……まじかぁ……結構残ってるじゃん……」
【マジだねぇ……】
【ハルちゃんでも困るレベル】
【そらそうよ……】
かなり残ってるモンスターさんたち。
綺麗にお掃除できたって思ったら全然残ってたときみたいに、途端にがくっとくる疲労感。
……なまじ最初にうまく行ったもんだから、無意識で「これでさくっとやれてるでしょ」って思っちゃったのかなぁ、僕。
「じゃ、しょうがない」
考えるために停止するヒマもなく、ひゅんひゅん飛んでくる矢。
そのほとんどは外れるコースだけども、さすがに数が多いもんだから1秒に数本は僕に向かってくる。
それらをかわしていると、ちょうどヤな位置と方向から襲撃してくる鳥さんたち。
よく見てみると、地上では落ちてくる矢の位置を予想してか、僕の真下だけかなりすかすかだ。
……こういうのがヤだから、遠距離隠密特化だったのにね。
「まずは――邪魔な、君たちからだね」
羽を振り絞り、ひゅんっと全力で飛翔。
突撃してくる鳥さんたちを、くるくる回りながら石で撃って方向転換させる程度。
別に、倒す必要はない。
ただ、時間を稼げたらそれで充分。
有利な場所に着いたら、勝ちなんだ。
とにかく命中率重視で、威力は無視。
ちょっとでも落ちてくれたら、それで充分だ。
【おろろろろろ】
【おろろろろろ】
【ダメだ、酔った】
【女神視点は人間には厳しい】
「キィィィ――――――!」
あ、ちょっと悔しそう。
やーい。
なんかちょっと嬉しい。
そんな気持ちを味わいつつ、僕は魔力で高く高く飛翔する。
そして――――――とんっ。
僕の足が、サンダルの裏が、ちょっとだけでこぼこしてる面に張り付く。
それで僕がしたいことに気が付いたのか、鳥さんたちがさらに悔しそうな声を――上から、出す。
上。
僕の上のはるか遠くには――地面が、広がっている。
【おろろろろろ】
【おろろろろろろ】
【天地が逆転してる……】
【大丈夫、首を180°回転させたらちゃん見えるよ】
【あ、ほんとだ】
【そっかぁ、これが天地逆転の視界かぁ……】
【ひぇっ】
【成仏して……】
【草】
「――――――――さぁ」
羽の力で無理やり天井に立った僕は、再びに光る弓矢をしゅいんっと出す。
髪の毛がばっさりなってるし、スカートもばっさりなってすっごくすーすーしてて解放感抜群だけども、それらを無理やりに魔力の風を作って下に押し流して。
そうして僕は、重力に完全に逆らう形で――壁に、下向きに、立つ。
ばさっ。
羽が、1回大きく天井を引っ叩く。
「どっちが先に倒れるか――根比べ、してみよっか」
しゅいん、しゅいんっ。
光る弓矢に魔力を流していくにつれ、僕の頭上――頭の上の輪っかを中心に、光る輪が2つ3つ、4つ5つと増えていく。
しゅいんしゅいんっ。
さすがに天井まで飛ぶのは大変らしく、一生懸命にばさばさして、怒りながら僕の方に飛んで/堕ちてくる鳥さんたち。
「じゃ、さっきの倍」
ぐぅっと体から魔力を吸われていく感覚に、がんばって羽で重力で逆らいつつ――――――――上空の411匹と地上の15746匹に、照準を合わせる。
「行って、みよっか」
【きれい】
【ハルちゃんの輪っかが……】
【あれ、1個1個投げられるんだよな……】
【草】
【だから!! 今、良いとこだって言ってるだろ!!】
「キィ――!!」
「君たちが数で来るなら、僕も数だ。 悪い、とは言わないよ」
ばっさばっさと槍を構えて突撃して来た鳥さんたち。
それに対して、きりりと真上/真下に構えた、光る弓矢さん。
――もう、遅いよ。
「ホーリー、ジャッジメント」
浮かぶその言葉と同時に、まばゆい金色の光が矢の先端に収束。
それは勢いよく射出されると――いつの間にか僕の頭から離れて目の前に移動していた、光る輪っかの中心を突き抜け。
その輪っかから数本の光る矢が次の輪っかへ射出。
それらは輪っかを通るたびに数を増やしていって、まるで何十もの輪の中心から放射状に伸びていくようで――――――。
「――あは。 きれい」
光る花火、光る花輪、光る魔法陣――それが、僕の頭を頂点に、地面に向かって巨大な円錐という名の砲台になって、形成されていく。
ああ。
こんなに綺麗なもの、あったんだね。
金色に輝く輪が視界いっぱいに20個くらいに広がって。
その輪っか同士を綺麗な細い線が無数に繋いでいて。
「ほんとうに、きれい……」
【きれい】
【綺麗……だけど】
【ハルちゃんこわいよー】
【これが……畏怖か……】
【ああ……】
【やっぱり女神様なんだ、俺たちとは感覚が違うんだ……】
【種族がやっぱ違ったんだなぁ……】
【これが、上位種族……】
【徹底的に距離を取って、範囲攻撃……この世界で魔王に対抗するには必要な力なんだ……】
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