302話 VS.異世界魔王さん軍@地下3
1番邪魔な空からの攻撃――鳥さんをちょっとだけ倒す。
その鳥さんたちが落ちたとたんにちょっとだけ収まる、地上からの矢。
「……………………?」
一瞬の静寂。
鳥さんたちがどすっと地面に落ちて結晶になると、またひゅんひゅんって飛んで来始める矢。
「………………………………」
一方で、空からは――僕に対応できてないってのもあるけども、槍を持ってるのに降らせてこない。
……たまたまの可能性もあるけども。
「同士討ちを気にしてるのかな……それはそれで良いけどね」
普通のモンスターなら、同士討ちなんて気にしない。
……っていうか、そもそも遠距離攻撃自体が少ないからそんな状況が起きないのか。
ブレス吐くモンスターとか……あ、そういや同士討ちしてるの見たことないや。
まぁ僕は遠距離から一方的なのがほとんどだったから、たまたまかもだけどね。
でも、そうか。
「それなら、鳥さんたちが居るあいだは降りすぎなければ大丈夫」
ばさっと、ぐいぐいと、力いっぱいに舞い上がる。
舞い上がって舞い上がって――すぐに、天井だ。
【速い】
【10秒くらいで天井!?】
【えっと、ここ、歩いて20分くらいある階段の下の空間よね……?】
【ハルちゃんの出力は普通じゃないから……】
「ふぅ」
ようやく、1方向――背中だけは安全になった僕。
振りかえると、結構速く登ってきてる鳥さんたち。
僕は、光る弓矢さんをもう1回取りだして――。
「………………………………」
身体の中で、無意識で魔力が出力されていく。
その、1回経験した感覚に、身を任せてみる。
普段の光る弓矢での攻撃よりも、ずっとずっと威力のある攻撃。
分裂する矢の数を、ずっとずっと増やしていって。
ずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと――。
「――ホーリー、ジャッジメント」
ぽつり。
僕の口が、その攻撃を放つ。
【えっ】
【ハルちゃん、その技の名前知ってたの!?】
【知ってたんだろうなぁ……】
【ノーネームちゃん命名じゃなく、元からあるのだったのか……】
【やっぱりハルちゃん=女神か……】
天井いっぱいが、まばゆい光に包まれる。
ちらりと見てみると、魔法陣みたいにびっしりと書き込まれた金色の光が編み目のように広がっていく。
「キィー!!!」
それを見て慌てて加速してくる鳥さんたち。
――でも、魔力の充填は完了して。
「――ギィィィィィ――――――!?」
数十の航空戦力を叩き落とし、その勢いのまま――何千にも分裂した光る矢、いや、線が――地面へと、降り注いでいった。
【あらきれい】
【美しい……】
【きれい】
【これが、聖なる光……】
【ハルちゃんから放たれた光……】
【ごくりりりりりり】
【草】
【えぇ……】
【ノーネームちゃん! 子供たちは無事なのかノーネームちゃん!】
【どうでもいいコメントばっかないないしてないで、ちゃんとお仕事しなさい!】
「ふぅ……」
やっぱこれ、疲れるんだなぁ。
なんか無意識に出たけど……ホーリージャッジメント、だっけ。
この魔法……魔法?
多分魔法。
魔力使うし、魔法使えなかった幼女時代でも男時代でも知らなかった感覚だし。
すっかり忘れてたけども、そういや僕、このダンジョン来たときに使ってたもんね、これ……で、そのまま魔力が切れて寝ちゃった形か。
だんだん思い出してきた。
だって、僕にとってはあのときのどうでもいいのよりも、そのあとの子供たちとの時間の方が、大切だったから。
魔王さんの自爆からなんとか逃げてきて疲れてた、あのときほどじゃない。
けども、それでも体はだるい。
「何割の魔力使うんだろ、これ」
【これだけの威力だ、消耗は激しいだろうな】
【前のときは墜落寸前だったしな】
【子供たちが居なきゃ、そのまま地面に落ちてたもんねぇ】
【これだけの攻撃だもん、さすがのハルちゃんでも厳しいだろ】
【かなり長くかけて回復してきたとは思うんだけどね】
【これが、聖なる裁き……】
【ふつくしい……】
「何割」って感覚がある程度には消費の激しそうな攻撃。
最大でも10回しか使えないと思うと、うかつには使えないね。
それに、魔力が回復するのにも時間がかかるんだ。
今回みたいに数が多くなければ使うのは危険かな。
……一面は、土ぼこり。
降り注いだ光の矢がモンスターを、外れたのは地面を穿って削って、粉塵が飛び散っててどうなってるのかがよく分からない。
「これ……欠点は様子がしばらく分からないことかぁ」
魔法を使った僕は、どうやらちょっと疲れたらしい。
気が付いたら高度が落ちていて――。
「……キィ――――――!」
「!」
叫び声とともに、多数の飛翔物が放たれる気配。
もくもくからひゅんひゅんと矢が飛んできて、ばさりと上に回避したところへ、横から上から鳥さんたちが突っ込んでくる。
「……君たちも、索敵スキル高いんだね……やっぱ、このダンジョンは強いや……けど!」
索敵スキルに関しては、僕は得意って自覚があるんだ。
それに、ここに来る直前から生えてる羽は、今や僕の意志で完全にコントロールできる。
だから、処理する数は多いけどもほとんどのそれらは回避できて。
「ムリなのは……こうっ!」
ちゃらっと石を何個も手に取って構え、射出――飛んでくる攻撃を相殺するように。
さすがに綺麗にかわすようにはできないけども、僕に当たらないんならそれで充分だもんね。
【もくもくで何も見えない】
【見えない中から矢が飛んでくる】
【こわいよー】
【そして冷静に回避して撃ち落とすハルちゃんよ】
【さすがは遠距離攻撃の女神だな】
【しかも石を何個も投げて相殺とか】
【しゅごい】
【ここまで行くと芸術だな……】
【さっきから被弾してないし、安心して見れろろろろ】
【草】
【ああうん、カメラワーク、俺たちのこと一切気にしてないからな……】
【鳥さん視点ってこんな感じなんだろうって】
【こんな動きでも正確に狙えるんだ、地面に立っての狙撃はお手の物だろう】
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