300話 VS.異世界魔王さん軍@地下1
――しゃりんっ。
光の矢は、放たれてすぐに分裂する。
「まずは命中率は度外視で、とにかく離れないとっ」
いつもみたいに分裂させた1本1本に意識を飛ばす余裕もない僕は、矢を放った瞬間に羽をばさりと、とにかく上へ、後ろへと下がる。
「キィィィィ――――――!!」
「っ!?」
上からの気配で、とっさに身体をよじって羽の片方を盾にすると……かきんと弾いた音。
あ、羽って痛くないんだ……子供たちに触られるとこしょばゆいのに。
まぁ痛くないならそれはそれで。
あと地味に硬そうな音したし、飛行中は硬いのかな?
「……上にも……本当に大歓迎だね」
【なぁにこれぇ……】
【これ、普通のモンスターのルーチンじゃ……】
【ああ、まるで……】
【あのときの魔王みたいに……】
【集団で狩りする動物以上だな、確実に】
【ハルちゃんの逃げる先予測して、上空で数匹が待機してたとか】
【もう、完全に戦争なんよ】
【ルーチンどころじゃない、群れとして、軍として動いてる】
【10匹程度ならまだ良いんだが、万の群れとか】
【そうなると、たったひとりのハルちゃんは不利か】
【圧倒的な力はあるんだけどなぁ】
【どんだけ最新鋭の武器VS旧式の武器だったとしても、物量が極端に違うとなぁ……】
【リアルでもシミュでも、損耗度外視の大軍で突撃されるとひっくり返るからなぁ】
【昔から物量こそ正義って言うしなぁ……】
【速度は落ち着いてるとはいえ、ダンジョンから無限にポップしてくるから厄介なんだもんなぁ】
【うわぁ、モンスターたち、光の矢を結構すり抜けてるぅ……】
【当たってかなり堕ちてるし、地上にも降り注いでるんだが……】
僕の上に居た鳥さんたちは、羽の先?に生えてる腕で槍を構えていたり、弓矢を構えたりしていて、
「――っ!」
しゅんっ。
僕の顔を狙って来た矢を羽で防ぐ。
でも、その一瞬で僕の動きが止まったところに投げてくる槍。
……これ、ほんと……この姿になってなかったら、この時点でアウトだったね。
あ、いや、そもそも入り口の時点で「あ、これムリだ」って悟って諦めてたか。
それならそれで諦めが付いて、素直に地上に向かってたかも。
とりあえずで入り口から延々狙撃して削るのもできただろうけどね。
「……地下の地下でこれなら、地上はどれだけ魔王さんの手下さんたちが居るんでしょう……ねっ!」
僕は再びに光る弓矢を――構えず、そのまま腕を突き出し、
「ファイヤーボール」
「――ギィィィィィ!?」
ごお、と、すごい熱風が戻ってくる。
火傷とか痛いからイヤだから、そのまま羽で僕を包んで爆風の勢いに任せる。
【ひぇっ】
【とうとうふぁいやーぼーるを……】
【草】
【ノーネームちゃん、止めないな】
【まぁとっくに離れたっぽいし】
【それでも止めないあたり、本当に危険なんだな……】
……ざっと見ただけで、万を軽く超えてる「軍隊」。
地上兵力は圧倒的、航空戦力もとにかく徹底的に邪魔してくる。
しかも、鳴き声か何かで常に意思疎通してるらしく、熱いのが収まってきたから羽を広げると、目の前の地面には槍衾――ハリネズミを僕に集中している始末。
本当に、厄介だ。
……これが、本物の戦いだね。
今までは「ダンジョンっていうシステムに守られてた」ような「チュートリアル」じゃなくって、これが――異種族との、生存競争。
【 】
【 】
【おろろろろ】
【こわすぎる】
【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】
【ルーチン無視、圧倒的兵力、種類も豊富……何このクソゲー】
【クソゲー過ぎる】
【え? 魔王軍来たらこんなのになるの??? モンスターたち??】
【いや、10年と数ヶ月前の戦いじゃ、こんなには】
【ああ、地上に出て来たモンスターたちも、全てルーチンがあった だからこそ、それを逆手に取ればって……】
【実際10年前でも、ある程度情報が揃ってきた後半戦では、無傷で撃破できたりもしてたんだが……】
【……これじゃ、やばくない?】
【やばいも何も、やばすぎるぞ】
【戦術も戦略もひっくり返るな】
【各国が必死で構築したのが全部白紙とか】
【おろろろろろろ】
【おろろろろろろ】
【ぼくのじゅうねんかん……】
【草】
【かわいそう】
【そっとしといてやれ……】
【それって……やばくない?】
【やばい(語彙消失】
【やっばーい☆ やばすぎ】
【ハルちゃんが苦戦してる時点でやばいんだよ?】
【こわいよー】
【これ、もう10年前の後半戦みたいに、合衆国軍とかの軍事国家が圧倒的火力でねじ伏せる以外にないんじゃ……】
【処理しきれない数が集まってる場所に損害度外視で現代兵器叩き込むくらいしか……】
【いや、これはもう、10年前の比較にならないっていうか……】
【ヘタすると、使用禁止兵器まで乱発しないと……】
【地球……もつ?】
【地球はもつだろ 人類とかその他は分からんが】
【もしかしたらないないされるのが大正解になるかもな……】
【ああ……】
【ノーネームちゃんが優しく管理してくれるからな……】
【!!】
【ノーネームちゃんってとってもかわいくてすてききききき】
【ノーネームちゃんをお人形さんとして優しく愛でてお着替ええええ】
【ノーネームちゃんのおっぱいのサイズズズズズズズ】
【ハルちゃんの胸もととととと】
【草】
【早まるなよ!?】
【まぁムリもない】
【こんなやべーのが来るかって思ったらねぇ……】
【戦力差を理解してるほどに絶望するんだ、発狂するもやむを得ない……】
【大丈夫、ノーネームちゃんがないない先でゆっくり大切にしてくれるから】
◆◆◆
300話です。ずいぶん遠くまで来ました。
いつも応援、ありがとうございます。
コメントには返信する余裕がありませんが、嬉しく拝見しています。
ハルちゃんが異世界?に旅立つ前と後が同じくらいになりました。
7章の終わりから年をまたぎ、もう半年くらい経っていますね。あと3ヶ月もしないで1周年です。
ハルちゃんの冒険は……もうちょっとかかるようです。
これからも応援してくださいね。
大丈夫です。
これからもっとはっちゃけてくれますから、安心してお楽しみください。
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