297話 脱いで、ご対面
僕は、せっかく用意してきた通常火器をしまっていく。
……せっかく楽しめそうだったのにね。
けども、あの数じゃ使う余裕ないって思ったらねぇ。
まぁしょうがない、歯ごたえがあるって思えば。
そもそも僕、この体になってからそこまで苦戦したことなかったんだ。
最後の大変だった戦いは、魔王さんとのやつ。
でもあれは幼女体型のときだったし、今みたいに羽とか生えてなかったし……最後は使えたっけ……とにかく非力だったんだ。
だから、これが実質初めての戦い。
「……ふふっ。 楽しみだなぁ……ぎりぎりの戦いって」
【 】
【 】
【 】
【 】
【ひぇっ】
【じょばばばば】
【ウォーモンガーハルちゃん】
【こわいよー】
【配信を意識してないから全部ハルちゃんの中で完結してて、だから何にも分かんなくって怖すぎる】
【ハルちゃんの思考回路が謎すぎて……】
【ハルちゃん……ちょっとで良いから解説して……こわいの……】
【ぽつぽつ言っててこわい】
【かわいくてこわい】
【こわいい】
【これが異種族コミュニケーション……】
【一方的だけどな!】
「……邪魔だな」
ぷちぷち、しゅるしゅるって、余計な装備を外していく。
なんとなく。
なんとなくだけども、この体の力を発揮するには、この白い布1枚以外は邪魔なんだ。
理屈はよく分からない。
けども……あれだ。
やけに薄着な装備なのにすっごい防御力とか回避力とか、あと特殊能力が備わる系の装備みたいな感じ。
「服、邪魔」
理由もなく、白い布以外の装備がこれ以上なく邪魔に感じる。
なんでだろうね。
お酒飲んでるときみたいな感覚。
ぷちっ。
しゅるっ。
かちゃっ。
石造りの空間に、衣擦れの音がこだまする。
【●REC】
【ハルちゃん!?】
【もしかして:脱いでる】
【!?!?】
【なんでぇ……?】
【ひとりになったからって急に脱ぐハルちゃん……】
【やっぱり裸族……】
【裸族の女神とか最高かよ】
【ハルちゃん教により深く帰依します】
【草】
「ふぅ」
しゅるんっと、布1枚。
と、腕と手と足首のリング、それにサンダル。
加えて羽と輪っか。
それ以外、僕は裸だ。
「結局、生まれたまんまの姿かぁ」
魔王さんの自爆に吸い込まれたあとの、この体に生まれ変わってからの姿。
謎の白い布。
ブラジャーなし。
ぱんつなし。
ブラジャーは普段からしてなかったけども、ぱんつまでしてないのは……家ではしてたから、外ではかなり新鮮だ。
はいてないからといって男みたいにぶらぶらするものはないし、すーすーする感覚にはすっかり慣れたし、慣れると太ももとかお尻がスカートの布にこすれて何とも言えないもどかしさがたまらなくなる、この感覚。
男に戻ったら……困るだろうなぁ。
「解放感いっぱいって良いなぁ」
【あっあっあっ】
【ノーネームちゃん! ノーネームちゃん!!】
【せめて! せめてカメラを!】
【ハルちゃんの頭の上だからなんにも見えないのぉぉぉぉ】
【ああああああ!!!】
【草】
【阿鼻叫喚で草】
【さっきまで絶望だったのに】
【ハルちゃんがいきなり脱ぎ始めたからね……】
【え? ハルちゃん、まさかの痴女?】
【まぁ普段から白い布1枚な服装だったから大して変わらないが】
【いや、変わるだろ……】
【冷静に考えたらそうだったわ】
【草】
【やばいよね……裸って】
【ああ……】
【もし万が一にでもハルちゃんの裸体が映ったら、人類の何割がないないされるんだろうなぁ……】
【草】
【ノーネームちゃん! ノーネームちゃん!!!】
【やばすぎて草】
【地球の人口が10億単位でごっそり減る可能性が出て来て草】
【草生やしてる場合じゃないんだが】
【っていっても俺たちには回避不可能だし……】
【人類社会が一瞬で崩壊しそう】
【しそう】
【まさか魔王軍の復讐の前にないないで壊滅するとはな……】
【草】
【でも見えない】
【見えない】
【見え】
【見えない】
【人生の先が見えない】
【そこまで!?】
【草】
【どうして俺たちはハルちゃんの体を見れないんだ】
【だってカメラさん、暗いからか映像が待機モードだし……】
【カメラさん! カメラさん!!】
【戦闘モードのときはハルちゃんの頭から飛んで自動追尾のカメラさん!!】
【どうか……どうか……】
【ないないされる準備はできてるから、せめてひと目……】
【終活は終わったから、どうかどうか……】
【その神秘さえ見せてくれたら、もう後の人生は捧げます……】
【お前ら、現世をもっと大事にしろ】
【こんな状況なのにばかばっか】
【しょうがない、ハルちゃんが脱いだんだから】
【主神の女神の御姿なんだ……信徒にはそれだけで命を捧げるに値するんだ……】
【分かる】
【このためだけに全財産と全人生を捧げる用意がある】
【家族も持って行って良いから……】
【ひどすぎて草】
【お前、人の心がないって良く言われない??】
たしん。
たしん。
サンダルが石段を軽く踏む音が響く。
……さっきまで聞こえてた、子供たちの声は、もう聞こえない。
たしん。
たしん。
かなり上の方まで連れてってくれたんだね。
ありがと、ノーネームさん。
「……さて、子供たちも多分大丈夫、ノーネームさんも大丈夫。 僕に何かあっても、あの子たちだけでなんとかなる」
んーっ、と伸びをして。
「久しぶりに緊張してるなぁ……いつ以来だろ」
ちょっと考えてみる。
「………………………………」
……男のときの体で、ようやく中級になれる直前くらい……?
スキルもレベルも経験もぎりぎりで、でも楽しくって。
たまに痛い目見ながらも、やっぱ楽しかった試行錯誤の日々。
「……わくわくする」
【こわすぎて草】
【こわいよー】
【ハルちゃんが緊張するって】
【あの、20階層前のでっかいライオンさんたちでも、俺たちは画面のこっち側で震えてたんですけど……?】
【大丈夫? 今のうちにおトイレ行っといた方がいいよ?】
【あと胃薬と吐き気止め、げろげろ袋におむつもだな!】
【リストバンド持ってるやつはつけとけ バイタルやばくなったら即転送してくれるから】
【最悪の使い方で草】
【コスパ悪すぎだけど、命に比べたら安いわな】
【何でもっと早く言ってくれないの!!】
【どうした】
【俺の机! げろげろなんだけど!!】
【んなの知るかよ】
【草】
【えんがちょ過ぎて草】
【これが嵐の前の静けさか……】
【言うほど静かか?】
【コメント欄めっちゃ加速してる】
【なお海外勢】
【あっちの方が数倍阿鼻叫喚】
【そらそうよ……】
【うちの国みたいにお気楽な方がちょっとおかしいから……】
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