291話 【朗報】白髪妹ちゃん、ぬけがけ
こちらは本日2話目の投稿です。
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くぼみに敷いた、布団の上。
寝入ったら起きない、ハル。
1人を5人が囲むという狭苦しくも匂いが充満するため、子供たちが好んでいるらしい空間。
それは、視聴者たちの周知の事実。
つい2時間ほど前まで繰り広げられていた「サバト」もまた、事実。
【そういやこっちとあっち、時差あるよな】
【正確には1日の長さか】
【あっちの方……異世界の方が2、3時間は早いよな】
【だからすぐに昼夜逆転生活になるんだ……】
【ハルちゃんのアクティブな時間に合わせるとなぁ】
【いいもん、どうせ仕事もなくなったしハルちゃんの追っかけしてればいいもん】
【えぇ……】
【もしかして:ダンジョン潜り】
【潜れないし、かと言って自宅待機だしでもーなんにもできないの】
【かわいそう】
【一応休業補償は出るけど、正直ダンジョンの稼ぎと比べちゃうと……】
【そのせいで、普段のペースで組んでたローンが……】
【リボが……】
【もう働く気力が……】
【うぅ……】
【つらい】
【かわいそう】
【そういやるるちゃんたちで思い出したけど、リリちゃんは結局どうなったんだっけ?】
【さすがにもう……】
【俺は信じてるぞ あのクンカー&全肯定銀髪っ子をな】
【草】
【でも、リリちゃんのお姉さんも国連で暴れる以外何もしてなくね? うちの国に人員とか送ってこないし】
【そもそもうちの国にぶち切れてもおかしくないし、乗り込んできても不思議じゃないのにね】
【そういやそうだ】
【え? こっちの捜索を当てにしてるんじゃ?】
【バカ、新興国のできたばっかの王朝だとしても、一国の王女だぞ?】
【そうだったわ】
【どう考えても、これ、諦めてるよね……】
【ああ……】
【かわいそう】
【ちょっとノーネームちゃんが暴れたばっかりに……】
【合衆国が発狂して新兵器ぶっ放してきたから……】
【草】
【あの国は仮想敵を過大評価しすぎるせいで、毎回必ずチョンボして大損こくから……】
【実際今回も、10年前からの新興国合わせて実に200近い国から会議で毎回ちくちくやられてるからなぁ】
【おかげでリリちゃんの存在も全世界に有名に】
【まぁハルちゃんが助けたって時点で有名だったし】
【なにしろ爆発落とし穴でダイブしまくってたちょっとおかしい配信だったからな!】
【草】
【あれはやっぱり、ハルちゃんの本能だったのね……】
むくり。
ちいさな影が、起き上がる。
ハルの居る世界での時刻は深夜――空は見えないため、ハルと子供たちの体内時刻換算で。
『………………………………ある、あ』
ハルはいつも通りに温泉と酒を楽しんで、あとは子供たちに見られながらの火薬を使った工作を楽しみ、タブレットで少し読書をし、新刊に想いを馳せながらぐっすりと眠りにつき。
子供たちは、昼間はダンジョンを駆けての戦闘、夜はハルが寝入ったのを確認してからひたすらに鼻腔から腹腔へとその香しい物質を吸収するので精根尽きる。
そして、朝まではほぼ目を覚まさない。
だからこそ、薄暗い空間と6人の寝息を映すだけの映像を――ほとんど惰性と習慣でつけっぱなしにしていた視聴者たちのいくらかが、それに気がつく。
【お?】
【白髪の妹さんが】
【起きたか、珍しい】
【どうしたの? おしっこここここ】
【草】
【お前……】
【ちょっとノーネームちゃん! 小さい子に対して今のセリフは健全なの!!】
『………………………………』
彼女は、寝ぼけた様子で周囲をきょろきょろと観察している。
そして。
『……あるあ』
今日は真横で張り付いて寝ていた彼女。
香しい脇の下という特等席をちょうど勝ち取っていた彼女は、しばらくのあいだ、ただただハルの寝顔を眺める。
【かわいい】
【かわいい】
【子供たちへのかわいいは、ないないされないんだよなぁ】
【不思議だね】
【かわいいいいい】
【そしてハルちゃんへのと思しきかわいいは、ないないされるんだよなぁ】
【不思議だね】
【マジで不思議だわ】
【なんなの? ノーネームちゃん、書き込みどころか心も読めるの?】
【いやいや……いやいや】
【じゃあノーネームちゃん、俺が今考えてててててて】
【!?】
【えぇ……】
【もしかして:不純なこと考えて書き込んだらアウト】
【ノーネームちゃん! それくらいは許してよノーネームちゃん!】
【いやいや……もっとやらしいこと書き込む寸前でないないされたんだろ、多分……】
【じゃなきゃマジで怖すぎる】
【こわいよー】
【割と初期の呪い様な雰囲気が漂ってて、怖すぎて草】
じぃ、と、その金髪のくせっ毛がおでこに乗り、横髪が片方口元にカールしている寝顔。
彼女は、そんな「女神」を見るともなく見ている。
『――――……』
ぽつり。
まるで寝言のようにそうつぶやいた彼女は、ハルの顔へと自身の顔を――。
【!?】
【えっ】
【ふぁっ!?】
【えっ えっ】
【ノーネームちゃん! カメラの感度もうちょい上げて!!】
【見え】
【見えない】
【みえないよぉ……】
【草】
【えっと……妹さんが、その……ハルちゃんの顔に……】
【キス……】
【いやいや……いやいや】
【もしかして:ぬけがけ】
【よりにもよって、最年少がやらかすとは……】
【マジか……マジか……】
【悲報・手元で補正してみたら、すっごい近いけど唇はくっついてない】
【ああ……】
【悲しい】
【でも、多分おでこらしきとこにちゅってした】
【!!!!】
【おっと? まさかの伏兵がリード】
【いや、いつかは誰かがやると思ってたよ】
【それな】
【あんだけやべー勢いでくんかくんかしてるんだもんなぁ】
【小学生だから安心と思っていたら……】
【ま、まあ、唇へとか、もっとやらしいことじゃないから……】
『……、あるあ』
ゆっくりと体を起こした彼女は、そのまま何ごともなかったかのように――ハルの腕を持ち上げ、自分の頭をそのくぼみにうずめ、腕を自分の背中に回す。
『すんすん……すんすんすんすんすんすん……』
【草】
【よかった、いつものこの子たちだわ……】
【いつもので安心できちゃうのが草】
【まぁねぇ、サバトだからねぇ……】
【いつもハルちゃんの脇の下が奪い合いだからな!】
【ハルちゃん、良い匂いしてそう】
【してそう】
【女神だしな、きっと良い匂いなんだ】
【でもその匂い……だいぶお酒臭そう……】
【草】
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