266話 怒られた、泣かれた
『……あるてー!!』
『あるあ!』
「ほっ、だいじょう……あ、痛い痛い、あ、や、別に大して痛くはないけど心理的には痛いって言うか!」
【草】
【子供たちが怒っている】
【そらそうよ……】
【ここんとこずっと毎日封じてたのを解放しちゃったんだもんな!】
【まーそらこうなる】
水浸しで雨みたいに降り注ぐのが弱まってきたからか、なんだか熱帯雨林みたいな気候になってる大広間。
見渡してみると、天井も壁もかすんで見えてる。
なんか幻想的だね。
僕はじゃぶじゃぶって水たまりから結晶が積み上がってるとこへジャンプ、降り立つときの力任せに羽でぶわっとそれらを吹き飛ばし――その、相当奥に隠れてたらしい子供たちを発見。
もう大丈夫だって安心しようと……したら、なんだか一斉に駆け寄ってきて取り囲んできて、僕をぽかぽかと叩いてくる。
「ごめんって、心配させちゃったねって」
【違う、そうじゃない】
【ハルちゃん違うの……子供たちはね? 魔法使ったことに対して怒ってるの……】
【ハルちゃん自身の心配だなんてこれっぽっちもしてないの……】
【草】
【ひでぇ】
【じゃあお前、この戦闘で心配した瞬間ある?】
【あるよ? ハルちゃんがこんな感じでしでかすんじゃないかって】
【草】
【多分大体の人がそう思ってたよね……】
【で、実際にそうなったと】
【子供たちに総スカンなのもやむなし】
泣きながら心配されて叩かれる経験なんて、僕にはそうそうない。
少なくとも大人になってからは。
だからたまらなくなって、出口へ――またさっきの水たまりな空間へ、ばしゃばしゃって飛び出す。
『……のーむ?』
『のうむー?』
『のーむ、――、――――――!』
【弁明】
【挑戦】
【静止】
【不可能】
『めっ!』
『のうむ! めっ!』
【悲】
【かわいい】
【草】
【ノーネームちゃんが、ハルちゃんの管理不行き届きで怒られている】
【まぁあれは止めようとも無視されてたけどな】
【でもハルちゃんのお胸で喜んで……ずるいぞノーネームちゃん!】
【ノーネームちゃん……お前……】
【欲望まみれで草】
逃げるときに投げたノーネームさんがデコイになって、みんなに囲まれて怒られてくれてる。
ありがとね。
僕はそういうの苦手だけど、君なら大丈夫でしょ?
「……に、しても」
ぱしゃぱしゃって足元で立ててた音が止まる。
さらさらと細かい雨が降る感覚の、巨大な空間。
それはまるで夏の日の雨上がりのような感覚。
「……地上……行きたいな……」
【悲報・ハルちゃん、やっぱ地上侵攻の用意あり】
【まるでハルちゃんが魔王みたいな風格だな!】
【草】
【見た目は天使とか女神なのに、いろいろなやらかしのせいでそうとしか思えなくて草】
【でも、確かになぁ】
【ハルちゃん、もう相当地下暮らしだもんなぁ】
【けどさ……普通もうちょっと早く地上が恋しくならない?】
【普通なら数日だよなぁ……】
【ハルちゃんは普通じゃないから……】
さらさらと髪の毛や顔にかかる雨粒。
それがシャワーみたいで気持ちいい。
「ふぅ……」
両手を広げてみ――ようとしたら、体に張り付いてる布。
……あ、そういや僕、今……っていうかここに来てからずっと布1枚だったんだ。
だから……感覚的には薄いバスローブ着てるようなもんなわけで。
「体に張り付いてる……」
ちょっと膨らんでるおっぱいの形。
それが、はっきりと服の上から見えてる。
なんならぽちりと。
その下におへそ、そしておまたへと。
【!!!!】
【●REC】
【もう少し下! カメラさん下!!】
【いや、やばいだろ……ハルちゃんノーブラノーパンだし……】
【雨で腕とか、こんなに張り付いてるってことは……】
【もしかして:ハルちゃん、やらしいことになってる】
【この前までの完全幼女じゃなくって、ちょっと女の子な感じだから……やばいな】
【ああ……】
【あれ? もし仮にお胸とか映ったら……見てる俺たち全員ないないされる?】
【草】
【えぇ……】
【でもやりかねない……ノーネームちゃんならやりかねない……】
【えーっと、今の同接13億人が一斉に地球から消えるのか……】
【なぁにそれぇ……】
【やばくない?】
【大惨事すぎて草】
【10年前の比じゃなくって草枯れる】
【地球人口がごりっと減る理由が「推定JS~JC?の見た目な女神のセクシーなシーンを見せらられたから」とかひどすぎる】
【あまりにもひどくて草】
【さすがにないよね? ないよね??】
『……あるあ?』
『ある……?』
しばらく上をぼんやり見てた僕。
かけられた声に振り向くと、5人が心配そうな顔をしてこっちを見ていた。
「……大丈夫、君たちを置いてどっかには行かないよ」
『ん……』
『んっ』
言葉が通じなくても、最近はわりと意思疎通はできてる気がする。
だからか、子供たちが安心してか、僕に抱きついてくる。
「君たちもぐっしょり濡れちゃうよ? ……けど、ま」
温まった水蒸気で、垂れ下がって光ってる僕の前髪を見ながら。
「……こういうのも、たまには良いよね」
【いい話だ……】
【ああ……】
【でもこれ、ハルちゃんがやらかした惨状なんだよね……】
【ああ……】
【ハルちゃんが素直に光の弓矢使ってたら、今ごろこんなになってなかったんだよね……】
【普通にドロップ品回収と……あ!】
【中ボスフロア……ってことは】
【←】
【宝箱】
「え? あ、ノーネームさん……宝箱?」
ふわふわと僕の目の前に来たノーネームさんが、ぴこっと矢印を大広間の先へ向ける。
「……そっか。 このダンジョンは僕の知ってる、普通のダンジョンだから宝箱もあるんだ……」
ノーネームさんの先導で歩き出すと、僕の袖とか裾とか髪の毛とか羽が軽く引っ張られる感覚。
でも止めるわけじゃなくって、ゆっくり歩くと一緒に着いて来てる足音が、ぱしゃ、ぱしゃっと。
「……広いなぁ、ここ」
ぱしゃぱしゃ。
ぱらぱら。
ドロップ品が1個もなければモンスターもぐろかったあのダンジョンほどじゃないけども、やっぱり広い気がするこのダンジョン。
……ほんと、ここってばどこなんだろうね。
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