264話 久しぶりの戦い-VS.ライオンさん2匹目と3匹目
ノーネームさんがじたじたと動いてる感覚が、僕の胸をくすぐる。
服の上から……そのポップアップ、ホログラムみたいに服を貫通して宙に浮くんだね……ぴこぴこと文句言ってるノーネームさん。
でも大丈夫。
女の子の胸でも、先端じゃなければぴりっとしないんだ。
僕は片手で胸元を、服の上からノーネームさんを押さえつつ――腕を上げる。
視線を上げた先のライオンさんたちは、仕掛けない僕の脅威度が下がったと感じてか、じりじりと近づいてきている。
――警戒するモーションってのは初めて見たけども……スキを見せたら攻撃してくるのは変わらないか。
じゃ、好きにして良いよね。
『あるてぇ!』
『のぅむ! のぅむぅ!!』
『あるあー!!』
『めっ!』
『ある! めっ! めーっ!!』
【子供たちが必死になってる】
【大声で叫んでいる】
【子供たちが危険を察知している】
【そらそうよ……】
【ハルちゃんが何するか分かるもんねぇ……】
【でも止められない悲しみ】
【ああ……】
【ちょうど出口が結晶で塞がっちゃって】
【頼みの綱のノーネームちゃんも服の中にないないされちゃって……】
【草】
【ノーネームちゃんがないないされるのか……】
【ないないされるノーネームちゃん……斬新だな!】
【温】
【匂】
【柔】
【胸】
【♥】
【ノーネームちゃん……お前……】
【ノーネームちゃん! 見損なったぞノーネームちゃん!】
【俺たちだってハルちゃんのお胸堪能したいいいいいいい】
【草】
【自分は良くて俺たちはダメなのか……】
【ノーネームちゃん! ずるいぞノーネームちゃん!】
【私欲まみれになったノーネームちゃん】
【人間くさくなってきた途端これだよ!】
【俺たちを学習したからね】
【俺たちがそんなに……ああうん、ハルちゃんの体が映るたびに変態コメントばっか流してたわ……】
【もしかして:ノーネームちゃんがこうなったの、俺たちのせい】
【草】
【やはり最後は人類のせいでこうなるのか……】
【俺たちの責任が世界レベルになってて草も生えない】
【責任取って♥♥♥♥♥♥♥♥】
【えっ】
【ないないされた?】
【草】
【今の何がダメだったんだ……】
【もしかして:責任ってワード】
【えぇ……】
「………………………………」
さて。
いざ魔法を使おうとすると、うっかりでダンジョンの壁という壁や天井や床がぐつぐつ煮えたってどろっと垂れてるあの光景がフラッシュバックする。
……僕だって反省はしてるんだ。
だって、あんなのまたやっちゃったら……ドロップ品、拾えないじゃん?
それはもったいない。
良いお酒……じゃない、こっちじゃレア枠でお肉と野菜の炒めものっぽいスープとかドロップするごはんとか、飲みもののレア枠でフルーツジュースとか出るし。
しかも今は中ボス戦。
ってことは確実に良いもの、おいしいものが手に入るはず。
……じゅって燃えちゃう炎系はダメ。
もったいない。
だったら。
「――――――――あいす、にーどる」
そう口にすると、またちょっとだけお腹から魔力が吸い上がっていく感覚――を最小限に。
ちょうど男だったころ、検尿カップに入れるために息を吸いながらぎゅっと締めつつちょろっと流してた、あの生えてた下半身の感覚で。
僕の手のひらの先には――細くて透明な矢。
【お】
【おお……!】
【ハルちゃんが……!】
【ハルちゃんがついに、制御に……!】
【感動の瞬間】
【あの、たかがアイスニードル出しただけで感激されるハルちゃんって】
【だってハルちゃん、戦の女神でしょ?】
【だから力をセーブできないんだもんな!】
【ああ、普段は神々の戦いしてるから……】
【それをようやくに人間レベルに落とせたんだ、祝わないと……】
【え、でもハルちゃん、炎に続いて氷まで?】
【あっ】
【複数属性……やっぱり元のハルちゃんは】
たしたしって前足をしながらちょっとだけ後ろに下がってるのは、最後に倒されたいライオンさん。
……なら。
「――ごー」
僕の手のひらの先で浮かんでいた透明な矢が、ひゅーって飛んで行く。
……行ったはず。
「?」
「?」
ライオンさんと僕は、お互いに首をかしげる。
【えっ】
【悲報・ハルちゃんのあいすにーどる、今度は威力弱すぎ】
【弱く攻撃するのって難しいのねぇ】
【こういうところで人間アピしないとね】
【今さらしたところで無駄だと思うよ】
【始原もそう思います】
【草】
手のひらを見てみる。
【おてて】
【おてて】
【おててはあんまり大きくなってないね】
【だってハルちゃん、身長もそこまでじゃないし、お胸もももももも】
【草】
【分かったな、これも禁止らしいぞ】
【nai-naiはやだもんな!】
……今のじゃ、ダメージはなし。
もしかしたらあのライオンさんたち、ある程度魔法耐性があるのかも。
……だったら今度は、炎の魔法使ったときみたいな感じで。
「――――――すぅっ」
きぃぃぃぃん。
お腹の中から汲み上げられる魔力。
それは僕の子宮から真上に登っていき、心臓を経由。
そこからわきの下を通って――血管を通って、手のひらへ。
「――――――あいす――にーどる」
手のひらの先。
そこにはさっきみたいな透明な――
「グオォォォォ!?」
「あれ?」
どしんと音がしたから前を見てみると、そこには倒れるライオンさん。
「……なんだ、ダメージ通って……あ、や、ちょっと」
さっきので充分なダメージが通ってた。
そう思って……つい、気を抜いた。
抜いちゃった。
「あ、だめです、止まってっ……や、出ちゃう、だめっ」
【●REC】
【エロいいいいいいい】
【なにこの声……】
【ないないされたくないヤツは気をつけろ】
【でも、ちょっと成長した女の子なハルちゃんの声が……】
ぎゅーっと、かつては生えてた下半身でなんとか漏れるのを止めようとする感覚を再現しようとする。
……けども、今や生えてないつるつるのせいで――なんかあんまり思い出せない。
だから、お酒を呑みすぎてぼんやりしてるときに急な尿意でトイレに駆け込むときみたいな感覚が一瞬で僕を通り過ぎて――
――――――ぷしゅっ。
「あ――――――――……んぅっ」
僕の目の間にあった透明な矢は――涙で歪んだ視界の中で氷の柱になっていて。
それは僕から制御を解かれ、自由になって――――――。
【えっ】
【なぁにこれぇ……】
【あの、矢が柱になったって思ったら全方位に……】
【アイスニードルが……】
【大部屋の全方向に……】
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