262話 久しぶりの戦い-VS.鳥さん2匹目
「キェェェェェ!」
「ふむ、モーションは5種類ですか……多めですね」
地上で吠えてるライオンさんたちはチワワ的だから今は無視。
それよりも僕は、鳥さんを観察するためにしばらく逃げてみた。
その結果が、5種類のモーション。
普通のモンスターなら多くても3種類ってこと考えると破格だね。
「でも、僕の羽の方が性能良いんです……よっ!」
しゃんっ。
……逃げてるあいだに何回か攻撃した弓矢。
ふと考えついて、撃つときにちょびっとだけ魔力を込めてみた攻撃。
矢を離した瞬間、透き通った音が僕の耳をかすめる。
……あれだ、和弓とかアーチェリーで、寒い季節に聞こえる音。
そこまで経験はないけども、これでも市民講座的なやつでそこそこやった経験はあるんだ。
「キェェェェェ!?」
「……まだ倒れませんか」
よく見てみると3本刺さっている鳥さん。
それでもまだ動きは衰えず、僕を見すえて5種類のモーションのどれかを展開しようとしている様子。
【手に汗握る展開】
【どっちの意味で?】
【もちろんハルちゃんがやらかさないかって方】
【タスケテ】
【草】
【ノーネームちゃんがんばって!】
【ノーネームちゃん……】
【おいたわしい……】
【そういやノーネームちゃん、ハルちゃんに張り付いてるから1番怖い場所だよな】
【まぁその分ハルちゃんにセクハラかましてるし……】
【じゃあ別にいいや】
【!?】
【泣】
【HELP】
【草】
【見捨てられてて草】
羽の性能テストも兼ねて、倒さずにひたすら逃げてはたまに攻撃する僕。
突撃して来たら――上下左右、360度に回避。
そんな急な動きにも酔ったりもしない便利仕様。
生えたばっかりの羽も、何回か使えばすぐに馴染んで思った通りの動きをしてくれるらしい。
普段は……50センチくらいの長さなはずなのに、今ちらっと見ると1メートルくらいはありそうな長さになってる、白い羽。
……これで空を飛んだら気持ちいいだろうなぁ。
『――――――!!』
「?」
何か聞こえた気がしたからそっちを見てみたら……子供たち。
階段、セーフゾーンの出口から5個の顔がぴょこんと出てて、何かを叫んでる。
「危ないよー、ライオンさんにぱくりだよー」
【かわいい】
【緊張感皆無のハルちゃん】
【この力が入ってない声が好き……】
【分かる】
【だるだる系な声……良いよね】
【あー、でも結晶が壁になってライオンさんも近づけないのか】
【でっかいキマイラ、怖いだろうに】
【まぁハルちゃんが動いてるんだし】
【むしろキマイラさんの心配するまである】
【確かに】
よそ見をしていた僕へ、横から迫ってくる気配。
「……だから無駄ですって」
ダメージ無しの状態ならともかく、今の鳥さんは矢が刺さって動きも鈍い。
羽をくいっと動かして、適当に斜め上に回避――した瞬間、なんとなくで動いた手が――僕の頭の上に伸びる。
――――ぱぁんっ。
「キェェェェェ!? ……キェェェェェ……」
【えっ】
【は?】
【……ブーメラン?】
【いやでも、ハルちゃん、そんな武器は】
あ。
なんか、できちゃった。
【もしかして:頭の上の輪っか】
【えぇ……】
【あ、戻って来てる】
【草】
【チャクラムかよ!?】
【さすがは遠距離特化の女神……】
【頭の上の輪っか……ヘイローってチャクラムになったんだ……】
【頭の上の輪っか……そんなに鋭利だったんだ……】
【頭の上の輪っか……取り外して投げられたんだ……】
【頭の上の輪っか……投げたら戻ってくるんだ……】
【草】
【普通自分の輪っか、投げるぅ……?】
【やっぱりちょっとおかしいよなぁ、ハルちゃん】
【多分女神とか天使の中でもちょっとおかしいんだと思うよ】
【同族からも「なにあれしらん……こわい……」ってなってそう】
【同族からは「あれと一緒にしないで」って言われてそう】
【それな】
「……結構な威力だなぁ」
ぱしっ、と手に戻って来た輪っかを手にした僕。
さっきの半分くらいの攻撃で倒せたって思うと、このコモンの弓矢の3倍くらいの攻撃力……しょぼくない?
あ、いや、手元に戻ってくるからコストゼロって考えると良いのか。
魔王さんが来る前のあのダンジョンだったら、攻撃した武器に血とか肉とかついちゃうからやだけど、結晶になるやつなら綺麗なままだから何回でも使えるね。
……今の、しようとしてしたわけじゃないのに、「なぜか」こうすればダメージ出せるって無意識で思って。
………………………………。
まぁいいや、コストゼロで攻撃できる遠距離攻撃手段が増えただけだし。
「……鳥さんたちの強さは分かったかな」
地上では、あいかわらずにバカ吠えしてるライオンさんたち。
……こうして高いところから見ると弱っちいね。
そっか、これが鳥とかの感覚なんだ。
「あ、ノーネームさん」
【!!!!】
「急降下しても良いですか?」
【!?】
「良いんですね、じゃあします」
【待】
【オネガイ】
【草】
【待って】
【待ってハルちゃん、ノーネームちゃんびっくりしてる】
【ノーネームちゃん言ってない、なんにも言ってない】
【お返事してないよハルちゃん、せめて待ってあげて?】
【視聴者総出でノーネームちゃんの援護】
【でもやっぱりハルちゃんには届かない】
【まぁねぇ……配信できてるとか思ってないっぽいし……】
【ま、まあ、一応聞いてあげるだけ優しいから……】
【聞いてあげる(聞いてあげるとは言っていない】
【聞いてあげる(ただの報告】
羽を、意識してくっつける。
背中の裏で、ぴったりと。
……ひゅんっ。
お腹が浮く感覚。
飛行機で乱気流に巻き込まれたときに何回も感じる、あの感覚。
あれ、僕は大嫌いだった。
まずもって怖いし、気持ち悪いし。
……でも、今は。
「――あはっ、落ちてる」
【ひぇっ】
【じょばばばば】
上下が逆になって、天井に落ち始める感覚。
その天井にはライオンさんたちがこっち向いてきゃんきゃん吠えてて、それがすごく滑稽で。
【ハルちゃん!?】
【心臓の弱い人は画面から目を離してください】
【あの、なんでハルちゃんジェットコースターしてるのぉ……?】
【ジェットコースターっていうか自由落下系の絶叫系っていうか】
【飛行系種族の本能なんでしょ……】
【ああ、急降下爆撃ってこういう……】
【なぁにこれぇ……】
【これが、獲物を狩るときのワシとかタカとかの視点……】
【怖すぎて草も生えない】
【こわいよー】
【大丈夫、見てる人みんなびびってるから】
【ハルちゃん以外はな!】
【やっぱりこの天使、ちょっとおかしい……】
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