252話 僕の、この体の能力ってなんだろう
子供たちから戦闘を禁止されちゃってるもんだから、僕は本当にヒマ。
というか、腕上げるだけで羽交い締めにされるって……何?
僕、そんなに恐い存在じゃないよ?
かといってお酒飲んでるだけでもヒマすぎる。
ここに来るまではお酒飲みながら本とか読んでたけども、ネットどころかタブレットもないから時間つぶしもできない。
その上、今はひとりぼっちじゃないとは言ってもこの子たちとは言葉が通じない。
つまり、会話で時間を潰せない。
だから……どうせなら、プラモデルとかクラフト系のゲーム、電子工作みたいに時間ばっかりかかるこの作業をしたい。
だから、そのために材料をいっぱい持って帰るんだ。
【危険】
【危険】
【オネガイ】
【危険】
「だから大丈夫ですって。 あ、そこで浮いてると風が罠のセンサー押しちゃって吹っ飛びますよ、ノーネームさん」
【!?】
【怖】
【危険】
【離脱】
【オネガイ】
【草】
【ノーネームちゃんですらドン引き】
【ノーネームちゃんの必死の願いもあっさり切り捨てられる】
【ハルちゃん、お話聞いてはくれるけど我が道を行くタイプよね……】
【けどやっぱ危険なんだな……ノーネームちゃんが止めるほどって】
【お前は対戦車地雷を素手で解体できると本気で思っているのか?】
【思わない】
【無理】
【こんなに鼻歌とか雑談混じりでなんて人類には到底無理】
【この映像がハルちゃんのって思わなかったら絶対見れない】
【草】
【全否定の視聴者たちで草】
【だってハルちゃんだし……】
【人外のノーネームちゃんですら危険って連呼するレベルだし……】
【ノーネームちゃんが頼もしいと思える日が来るだなんて……】
◇
「……そういや僕、どうしてこんなに簡単に罠分解できるんだろ」
ふとした疑問に、手がぴたっと止まる。
ちょっとだけ大きくなった……けども大人の男の手よりはずっとちっちゃくて細いそれは、電線とかを使ってないけど複雑な仕組みのそれを解体している。
……こんなの、男のころには思いもしなかったのに。
そもそも僕、電子工作とか興味も知識もなんにもなかったのに。
【ハルちゃん!?】
【やめて……こんな危ないことしてるときに疑問持つのやめて……】
【あの、手元狂ったらどかーんなんですけど……】
【いくらハルちゃんでも、治癒魔法も使えないんだから……】
【え? ハルちゃん、女神になってるんだから治癒魔法くらい使えるでしょ?】
【え?】
【いやだって、空飛べるし光の弓矢召喚して殲滅できるし】
【ダンジョン融解させるふぁいやーぼーるも撃てるしな!】
【草】
【ふぁいやーぼーるやめて、おなか痛い】
【でもそうだよな……幼女のころはできなかったっぽいけど、元の姿に近づいたハルちゃんなら……】
僕の両手は、「ここを間違って押しちゃうと爆発する」ってスイッチを取り外そうとしてて……力を逆に込めたらそうなるって、「なぜか」分かってる。
「………………………………」
知らないのに知ってる感覚。
羽を使って空を飛ぶのもそうだし、その羽を動かすのとかもそう。
前の体なら、そのフロアの、しかもせいぜい何部屋か先までしか分からなかったはずの罠やモンスターの配置も、上下のフロアまで見通せて。
その上に光る弓矢を出して両手で持てる感覚とか、あの魔法を撃つ感覚とか。
……この体になってから、無意識でできてたやつ。
ううん、それを言ったら、魔王さんの異空間で魔力を吸い上げる感覚でさえ、元の僕じゃとても――――――。
「………………………………まぁいいや。 できてるんだから便利ってことで」
かちゃかちゃ……かぽっ。
「お、火薬。 そこそこの量」
【良かった……良かった……】
【唐突に自分に対して疑問を抱いたハルちゃんで怖かった……】
【なんか治癒魔法も使おうと思えば使えそうだけど、ハルちゃんが痛がるのなんて聞きたくないし想像もしたくないし……】
【ハルちゃんのお気楽な性格で助かったね】
【ハルちゃんは脳天気で居てもらわないとダメだってよく分かったな!】
【ノーネームちゃんがツッコミに回るレベルでボケてもらわないとな!】
【恐怖】
【HELP】
【タスケテ】
【草】
【ノーネームちゃん! がんばれノーネームちゃん!】
【ノーネームちゃんが匙投げるレベルか……】
【自分の推しがやべーことしてるのに止められないノーネームちゃん……】
【おいたわしい……】
【ノーネームちゃんにこのワードを言うことになるとはな……】
起爆装置と切り離した火薬を、その箱ごと取り出して。
周辺の……金属製の部品使ってないだけで、普通に機械なその中身のパーツをいくつか取り外して。
「よし」
【よし、じゃないが】
【ハルちゃんだし……】
【ハルちゃんが今、袋に入れたそれね? 間違って爆発したら半径5メートルくらい吹っ飛ぶのよ?】
【ダンジョン仕様でHP減るだけとは言っても痛いし、治癒魔法必須よ?】
「あ、矢の罠の部品と矢も回収しないと」
【しなくていい、しなくていいよハルちゃん】
【それより子供たち見ててあげて……】
【というか子供たち、なんで気にしてないの?】
【だってお前、この子たち、ハルちゃんが爆発物扱ってるって知らないよ?】
【あー】
【ハルちゃんがお手製のロケット作ったりロケット砲作ったり、爆発の罠と落とし穴の罠コンボで急降下するって知らない幸せよ……】
【草】
【あらためてちょっとおかしいハルちゃんの所業】
【ちょっとか?】
【うん、女神とか天使視点では】
【もうそれでいいや……】
なんか頭の上でずっとポップさせてるノーネームさんが、なんか疲れた顔してふよふよと着いてくる。
「もう、ノーネームさんったら心配性ですね」
そんなノーネームさんをそっと両手に乗せて、頭をくりくりと撫でてあげる。
【♥】
【♥】
【嬉】
【ノーネームちゃんが悶えている】
【かわいいね】
【あ、撫でられるのに夢中でないないされないいいいいい】
【草】
【ちょっとディレイあったけど、お望み通りにないないされたな!】
『ある?』
『わな』
『わな!』
「あ、もう積み終えたんだ。 早いね」
目をつぶって撫でられる様子が猫みたいで、ノーネームさんをひたすら撫でてた僕は子供たちに声をかけられた。
「あ、昨日作ってみた押し車。 いっぱい入ったね」
手押し車……農家の人が持ってる、あれ。
この子たちが毎回両腕に抱えて、その日の窪みまで何十往復するのを見てたらなんか申し訳なくなった僕が作ってみたやつ。
「タイヤがなかったから桶の周りので代用してて、押してると手が痛くなりそう……ごめんね」
タイヤは1個……それも木を丸めただけのやつ。
だからかバランスも悪ければ、ダンジョンの凸凹した地面の上じゃ押しにくいことこの上ないやつ。
「どっかでゴムのタイヤとか出てきたらなぁ……ここにあるか分からないけど」
そうしたら、この子たちの生活がもっと便利になるのにね。
……上質なドロップ品は、深い階層になるほどに。
だから、この子たちを鍛えてもっと深いところに行かないとね。
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