249話 狩りの開始
この子たちと、言葉は通じない。
でも、数字の概念は通じる。
「……次の部屋……んと、45匹かな」
『『ん!』』
【45匹……多いな】
【その数はモンハウの規模なんですけど……】
【あるいはワンフロアの大部屋のね……】
【でもこのダンジョンだとデフォの数】
【やっぱ難易度高いよね? ここ】
【単純にモンスターの数も多ければ、どう見てもレベルが高いからな……】
【地球の同じモンスターと比べても、明らかに強いよね……】
【有識者によると、全部ワンランクかそれ以上上位個体だってよ】
【ひぇぇ……】
【ド、ドロップの数も経験値も貯まりやすいし、いざとなったらハルちゃんっていう最終兵器が控えてるから……】
僕が両手で数をばばっと動かすと、5人がいっせいにうなずく。
部屋が近づいてきたらする、もうおなじみの動作。
さらにはノーネームさんが【45】って数字を頭の上に。
ノーネームさんのそれは数字のカウンターにもなるから、敵の残りの把握にものすごく便利。
数字。
さすがにこれは、言葉が通じなくても分かり合えたからね。
目の前に適当な物を置いて数字と比べさせたら、初日で100くらいまでの数字――僕の知ってるアラビア数字ってのを覚えてくれたんだ。
こういう戦いしてばっかの生活だと、100まで分かれば充分。
特に、僕の索敵スキルを活かすためには……ね。
『――――』
『――!』
僕の索敵を元に、すぐに話し合って攻撃とかの相談をし始める子たち。
こういうときには言葉が通じない悲しさが僕を襲う。
まぁそもそも僕、戦いに参加させてもらえないんだけどね……なんでだろ。
【でもやっぱ、部屋の外から中のモンスターの数分かるっていうこの索敵はチートなんよ】
【天使だからね】
【やっぱり人間には無理じゃねぇか!!】
【ハルちゃんの講座をがんばって聞いてた斥候職に謝って!!】
【結構多くの人が1からやり直したのに……】
【草】
【そういやそんなことあったな】
【初期のころはハルちゃんのこと、まだ人間だって思ってたからなぁ……みんなが】
【俺、がんばってハルちゃんの言う通りにしたのに……】
【ま、まあ、実際索敵スキルと隠蔽スキルはすっごく上げやすくなったから……】
【結局誰も再現できてないハルちゃんのスキル まぁ女神だったならしょうがない】
【せ、世界中で斥候職の索敵と隠蔽の平均が底上げされたから……】
【俗に言うハルちゃんショックである】
『――、ある』
『あるあ!』
相談はすぐに終わったらしい。
まぁここ最近のいつものだし、モンスターの数も普通だし。
で、ぎゅっと腕をつかんでくるのは……今回は白髪の妹さんと赤毛の子。
今回は君たちが、僕の見張りなんだね。
でも、絶対腕を上げさせないっていう意志を感じる。
数字とか方向とか指示するためでも、絶対離してくれないんだ。
「……もう魔法はしないのになぁ……信じてくれないもんなぁ……」
【ハルちゃん? 多分誰も信じてないよそれ?】
【ここの視聴者たちさえ誰も信じてないよ?】
【おとなしくしてなさい!】
【こんだけ経っても警戒されるハルちゃん】
【だって……ねぇ?】
【1度やらかしたからね、よっぽどのことがないと解放されないよね】
【あの危険性を肌で感じただろう子供たちだ、多分絶対解放してくれないよ】
左右で魔力が高まる感覚。
子供たちが、魔法の準備を始めている。
……こういうのも、僕がこの体に――1年前に女の子になってから初めて知った感覚。
でも、この5人――なんと全員、魔法が使えるらしい。
しかもついででまたまた全員、遠距離武器を扱えるらしい。
すごい偶然もあるよね。
だってみんな魔法適性があって、みんな遠距離武器適性があるんでしょ?
いいなぁ……男のときの僕には無かったからなぁ、魔法の適性。
まぁダンジョン適性そのものがなかったよりはずっとマシだけどさ。
そんなわけで、全員がおんなじことできる以上、戦闘中はローテで役割を変えるのが王道。
走ったり攻撃したりで疲れるのと、魔法を放って魔力を消耗するのと。
それを上手に分散すると継戦能力が高くなる。
最初のころはそれができてなくって、攻撃担当と魔法担当で固定してて……で、あっという間に疲れちゃって撤退してた。
それを僕が、こう……言葉が伝わらないなりにみんなを指さして「あっち」とか「こっち」とかやってるうちに分かったらしく、以降は綺麗にローテしてムダのない戦闘ができてて満足。
みんな頭も良ければ戦闘経験もあったからか、あっという間に理解してくれてすっごく楽だった。
それこそ、もし僕がここで居なくなったとしても……このあたりの、僕の知ってる範囲だと中級者ダンジョンで生きていけるくらいにはばっちりだ。
ちなみに毎回最初は年下の2人――白髪の妹さんと黒髪の弟さんが、僕の担当になる。
多分幼いから体力も少なくって、だから他の子たちに守られてるんだろうね。
でも、そんな2人に両腕を抱きしめられて守られてる僕って……。
【♪】
「ノーネームさんはいいですね。 僕、捕まってますよ。 両手、解放してくれないんですよ。 助けてください」
【当然】
「ひどいなぁもう……」
【♥】
「何楽しんでるんですかノーネームさん。 ちょっとは味方してください」
【草】
【ノーネームちゃん、言うようになったよね】
【だいぶ打ち解けてて草】
【しかもこれ、ハルちゃんの肩とかに乗ってるっていうね】
【ノーネームちゃんにとっては最高の環境だね!】
「ハルちゃんがこれから何やらかすのか気になる」「おもしろい」「TSロリっ子はやっぱり最高」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。




