248話 ひと狩り行こう
「はい、これ持ってて。 ……や、だから良いから。 毎回いちいち正座して受け取らなくって良いから」
この子たち、とにかく僕のことを熱心に見てくる。
だからこうして両手を上げて頭からカメラを下ろす仕草しただけで、すぐに全員が座って……膝が痛そうな座り方してるんだ。
「……はい。 あ、だから着いて来ないでって……もー」
【ハルちゃんを下から見上げるアングル!!】
【ふつくしい……】
【ハルちゃんの綺麗なお膝から上が……】
【1日に何回もハルちゃん映してくれるから俺歓喜】
【視聴者全員だぞ!】
【でもこの盛大な儀式 ただおトイレ行くだけなんだよね……】
【草】
【心底困ってるハルちゃん……かわいい】
【かわいい】
【女神リングに女神の羽、女神の服なハルちゃん】
【でもまだ一応は人間なんだね】
【この美しさで人間はウソでしょ】
【しかもおトイレって……ふぅぅぅぅぅ】
【草】
【毎回必ずないないされるよな、お前たち】
以前にるるさんが言ってたみたいに、王冠に見えなくもないカメラ。
それが、じっと僕を見てくる……気がする。
さすがに無いとは思うけども、もしまだ配信されてるんなら……トイレとお風呂はちょっとねぇ。
【一緒】
【一緒】
【♥】
【?】
「や、いくらノーネームさんでもやですよ……僕だってトイレ、他の人に見られるのは恥ずかしいんですから」
【悲】
【?】
【一緒】
【??】
「だからダメですって。 おとなしく待っててください」
【ノーネームちゃん!! ずるいぞノーネームちゃん!!】
【ノーネームちゃん!! 職権乱用だぞノーネームちゃん!】
【この人外……さりげなくハルちゃんと毎回おトイレ行こうとしやがって……】
【体を持ったからか自己主張が激しくなったね、ノーネームちゃん】
頭の上にぴこぴこって一緒に居たいメッセージを出し続けるノーネームさんは、子供たちの手の中。
じっと見上げてきて、ひざまずきながらもやっぱり一緒にトイレに行きたさそうな子供たちも振り切って、なんとかトイレへ。
1日に何回ものこれ……もう何日も経ってるのにまだ続けるの……?
というか、女の子はともかく男の子はだめでしょ……ああいや、僕の主観的にはむしろ男の子の方はよくって女の子の方こそだめなんだけどね。
まぁみんなお風呂とかタオルで拭ったりするときは一緒だし、小学校……高学年には行ってないだろう小学生男子相手に恥ずかしがるもんじゃないし、そもそもこの子は黒髪の女の子と双子……二卵性双生児ってやつかな……っぽいし、この年ごろなら別にやらしい目的でもないだろうし。
「ふぅ」
ダンジョンの壁ってのは、全部が全部綺麗に塞がってるわけじゃない。
だから、探せば結構凸凹してるし、上から落ちてきた岩とかあるし……亀裂とか穴もある。
しゅるっ。
そんな外っていう環境で、用を足す。
抵抗はあるけども、これは男の頃からやってたことだし、慣れればそこまででもない。
そもそも、トイレが恥ずかしいってのは他人あってのもの。
人が居ないならどうってことはない。
そう、例えばお尻丸出しでも。
「……っ」
……ちょろっ。
「ふぅー……」
こんなサバイバルな状況下で恥ずかしがる必要もないけども……それ言ったら、そもそも出かけた先でるるさんとかが連れションとか誘ってきたし、隣の個室同士でお互いに聞こえちゃったりしてたから今さらなんだけども。
でも……なんかやじゃん?
現代社会で、別に見られなくても良い生活してたらやっぱりやじゃん?
だから僕は、こうしてひとり別の場所でこっそりと……いや、大胆に。
……みんなに知られてる時点で、あんまり意味はない気もするけども。
でも、中身は男で体は女の子っていう複雑な身の上を伝えることもできない以上、できるだけ僕から距離を取るしかない。
……そもそも、あんなにべったりされるのは疲れるし。
あの子たちのに比べたら、るるさんのなんて全然だったんだなぁ。
◇
「じゃ、今日もひと狩り行こっか」
『あるて、――ひとかり!』
『ある、――――――、――かり!』
【ごらんよ 子供たちが中途半端にハルちゃんの言うこと分かって、一部は言えるようになったせいで……見事に蛮族だよ】
【草】
【蛮族で草】
【みんな ひとかり いく おいしい たべる】
【めがみ したがう】
【めがみ こわい まほう つかわせない】
【草】
【おなか痛いからやめろぉ!!】
【それにしても数日で、ようやくちょっと言葉が分かる程度か】
【いやあ、あの感じ、多分ハルちゃんの言うことはそこそこ分かるけど肝心の発生が難しいっぽいぞ】
【日本語って発音だけなら簡単な部類なのに……】
【それ言ったら、そもそも俺たちどころか地球のどこの言語の人も、あの子たちの言ってること聞き取れてませんし】
【しゃべるの聞く限り、特段口の構造が、とかじゃないみたいなんだろうけどなぁ……】
【まー、地球の言語って……ざっくり言えば一応は単一の種族のもんだし】
【あー】
【言語も文字も、一応は何千年単位で繋がりあるもんねぇ……うっすいけど】
【異世界じゃ別の「人種」どころか「種族」の中の「人間族」な可能性もあるのか】
【ああ……】
【ファンタジー世界の種族ってのがこんなところで響くとはな……】
僕がいろいろ話す中で「狩り」ってのは分かるようになったらしい子供たち。
僕がそう言ってリュック……はないから、ドロップ品の中にあった布の袋……もちろんきちゃない袋さんみたいにたくさんは入らない……普通のやつを手にすると、みんないっせいに荷物を取りに行く。
……それは良いんだけども、全員が全員、持ってくのをまるで軍隊みたいにまとめて置いてあって、さっと身に付けて一瞬で僕に追いつくのはちょっと怖い。
【訓練された少年兵だこれ!】
【草】
【だよなぁ】
【ハルちゃん? もっと子供は優しく教育してあげて?】
【でも乗り気なのは子供たちの方だし……】
【ハルちゃんの真似しようってすっごく積極的だもんなぁ】
【この行動の全部が全部、ハルちゃんのまねっこの産物だし】
【まぁ自分たちの生命に関わるしな】
【ハルちゃん任せも危険だしな!】
【危険(部屋ごと融解】
【危険(ハルちゃんが羽とかで守らなきゃ人体もじゅわっと】
【ひぇっ……】
【あれを間近で見たんだ、ハルちゃんに任せきりも怖いって思ったんだろうよ】
【しごく真っ当で常識的な判断だな!】
【ハルちゃんよりも常識的な子供たち】
【だってハルちゃんだし……】
【女神様に人間の常識を説いてもしょうがないし……】
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