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193話 龍の花嫁

「それに、僕、この通り……そうです、まだ1歳。 人間は20歳にならないと結婚できない……って、僕の故郷では決まっているんですよ」


【え?】

【20歳?】

【……あー、なるほどな、異世界の異種族だからこそのハッタリか】

【あー】

【言葉は通じてるけど、こんだけドラゴンの方から話しかけてきてるもんな】


【でも……1歳?】

【あれだろ、JKからJSになったっていう】

【あー】

【JKハルちゃんから幼女ハルちゃんになったタイミング……確かにウソじゃないな】

【ファンタジー定番の、ウソが分かる魔法とか使われてもギリ大丈夫かも?】

【ハルちゃんかしこい】

【こんな土壇場ですごい】


うん、ウソは言ってない。


最悪結婚させられても「そういうものなのか」って異種族ミスコミュニケーションで乗り切る算段だ。


うまく行けば、いろいろ好きにされちゃうまでに19年って言う時間を稼げる算段。


僕に嫌われたくないんだったら、僕の常識はできるだけ守ってくれるはず。


このドラゴンさんが僕のことを気に入ってるからこそできる、荒技。

力技とも屁理屈とも言うね。


『……我の世界の人間族は、10年も生きたら子を』

「僕の世界じゃ、人間は強くないんです。 10歳にもならないで子供産ませられたら死んじゃいますよ?」


これは本当。


って言うか10歳って……やっぱ近代以前の基準だよねぇ……。

って言うかドラゴンさん、この見た目の僕を孕ませようと……?


「僕が子供産む前に死んでも良いなら好きにしても良いですけど」


『む、それは困る。 貴様には最低でも千は子を成してもらわねば』

「え、千回も子供産むのはちょっと……」


ええ……。


僕、千回も出産させられるの……?


【おい、話の流れがおかしいぞ】

【流れ変わったな】

【何か具体的になってきてる】

【俺たちのハルちゃんが!】

【るるちゃんのハルちゃんだろ】


【待って、ハルちゃんなんか具体的すぎる交渉してない?】

【千回産むとか】

【ハルちゃんが千人の子供のママだって!?】

【ミニハルちゃんが千人……?】

【……ありだな】

【通報しました】

【やー、ガチペドはないっす】


【お?】

【あ?】

【やるか?】

【お前らこんなときにどうでもいいことでケンカするんじゃねぇ】

【だって考えてみろよ  これ、全世界生中継NTR実況だぞ?】


【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】

【       】


【あああああ】

【あああああ】

【俺のハルちゃんが! ハルちゃんが!】

【どこの龍の骨とも分からないやつに!】

【この汚れなきロリが……ロリが……!】

【あんまりだぁ!】


【草】

【みんな瀕死になっている】

【む、むごい……】

【だけど実際そうっぽいんだよなぁ……】

【ドラゴンが人間の姫をお嫁さんにってのはマジだったのか……】

【そもそもハルちゃんと話してるしなぁ……】


『――それで、どうだ』


ずいっと乗り出してくるドラゴンさん。


……いや、「どうだ」じゃないんだけどさ……。


やだねぇ、こうやって圧倒的な優位に立ってる人……じゃないけど……って、無自覚で言うこと聞いてくれるって思ってるから。


まぁ実際聞かざるを得ないんだけども。

これが力と立場の差だ。


……でもなぁ。


命と貞操っていう究極の二択が、まさか僕に訪れるだなんてね。


そういう場面は本の中でも当たり前のようにあったけども……そっか。


自分が女の子だと、そういう場面だと身の危険ってのと自分のプライドとを……こうして比べさせられるんだ。


これが、女の子になるってことなんだね。


男だったらこんな場面……よっぽどな物好き相手じゃないとないもんなぁ。

せいぜいが労働力として酷使される程度だもん。


改めて便利で無害だった男の体。


ノーネームさん、早く返して?


あ、今は困るよ?

「騙したな!」って怒ってぷちゅってされちゃうから。


『……貴様の世界の住人で、保護したい者らと始末したい者らも挙げよ。 敵国の人間や、あるいは貴様が殺したくて仕方のない人間たちを我が代わりに葬ってやる』


僕が命と貞操と男としての自我について考えていたら、渋ってるって誤解されたらしい。


『人間は小さすぎる上に目障りな動きばかりするから、半分くらいは間違えてしまうかもしれないが……全部よりは良いだろう?』


……って言うか、このドラゴンさん、本気で僕のことお嫁さんにしたいんだね……なるべく力任せじゃなく、自分からってところにかなりの知性とかを感じる。


でも半分……いやまぁ、僕だって「ひよことかハムスターのオスメスを完璧に分けてください」って言われたら「半分くらい間違えるかもよ?」って言うだろうけどさ。


「……僕に、殺して欲しい人なんて、居ません」


『居ないはずは無かろう。 貴様のような存在が、こんな迷宮に居るのだ。 敵勢力から追われたり、味方勢力から疎まれて放逐されたのだすう?』


あ、なるほど……戦いのある世界の価値観だとそうなるのかぁ。


確かに、よく考えたら命の危険のあるダンジョンに潜ってるとか、その時点で正気の沙汰じゃないよね。


現代の安全なテクノロジーと狂気な配信文化のせいで潜ってるけども、そういうのがなければ命知らずの一発逆転以外じゃ、まず敬遠する場所だもん。


誰かからこんなところまで逃げてきた。

そう、思うのは不思議じゃない。


けど。


「居ないんです。 僕に、殺してほしいほどの人なんて、誰ひとり」


【なんだなんだ】

【また流れ変わってるな】

【やべぇ、ハルちゃんの声だけだと全くついていけねぇ】

【なんで求愛から戦争の話なんだ】

【分からん】

【ハルちゃん翻訳してー】

【無理だろ、こっちのこと完全に忘れてるっぽいし】

【まぁ会話の流れはなんとなく分かるから……】


「……僕の世界は……そりゃあ愚かな人間ですから、比較的落ち着いてはいますけど1年中どこかで戦争して殺し合ってるんです」


『ならば、その愚かにも同族で殺し合う勢力を』

「でも」


足元のぶにぶにとした両手の……柵にするようになっている長い爪を見つつ、それでも言う。


「僕は、僕の世界が好きです。 キライな人も……いるかもですけど、でもあなたに殺してもらいたくない。 人間のことは人間で、この世界のことはこの世界で完結させるべきなんです。 僕は、見たくないような汚い部分も含めて、僕の世界が好きなんです」


【ハルちゃん……】

【いい子すぎ】

【もしかして:ハルちゃん、今ガチで世界救ってる】

【このドラゴンが偽物とは思えないしな】

【世界に手を出す出さないって話してるんだったら、やろうと思えば本当に……】


「ハルちゃんがこれから何やらかすのか気になる」「おもしろい」「TSロリっ子はやっぱり最高」「続きが読みたい」「応援したい」と思ってくださった方は、ぜひ最下部↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
千wwwドラゴン基準やべぇわwwwしかも「最低」でもだもんなぁww あぁダンジョンがガチな世界ならまぁ、ハルちゃんの見た目で一人ってのは訳アリしかないよなぁww
[一言] ハルきゅんマジ天使やでぇ・・・
[一言] ハルちゃん頑張れ!スケールがでっかい求婚の果てにある世界の命運がかかってるから!!
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