188話 ドラゴン戦3
【ハルちゃんがんばえー】
【がんばえー マジで】
【ここで倒せないと……】
【リストバンドないし、救護班なんか到達できないし】
【未だにここがどこかって分からないって言うね……】
【そもそも天井がぽっかりして、その上に異世界風の何かが広がってる時点でここは普通じゃないんだぞ】
【一本道オンリー、しかもレベルがちょっとずつ上がってくワンフロア構造ってだけで……ねぇ?】
【ドラゴンさん出て来るまでなら、まだちょっとずつなんとかなりそうだったのに……】
【でも、ハルちゃんはやる気だぞ】
【がんばえー!】
【視聴者が軒並み幼児に……】
「ふぅっ」
魔力を全身に補充。
疲れて溜まった乳酸菌……じゃない、乳酸的な色々が抜けていく。
軽いケガも治って、くじいた足も腕もいつも通り。
……きゅぽんっ。
「んくっ……ぷはっ。 景気付けのお酒。 おいしいですね」
ぱりんっ。
飲み干したお酒の瓶をわざと投げ捨てて叩き割って、ちょっと怖くなってた気持ちも立て直す僕。
こういうのって、クサい演技でちょうど良いくらいなんだよね。
【草】
【やば、ちょっとかっこいい】
【ちょっと?】
【ううん めっちゃ格好良かった今の】
【幼女なのに惚れそう】
【分かる】
【この金髪幼女からあふれる漢よ……】
【きゅんっ……】
【ああ、女子が女子に惚れるってこういうことなんだ……】
【なんなら女の子が男に惚れる瞬間の気持ちも、ちょっとだけ……】
【今なら分かる……】
【ああ……】
【私たちのサーバーはこちらよ<URL>】
【姉御 良いところなんだから黙ってなさい】
【そういうことばっかしてるから、来ただけで蜘蛛の子を散らす感じでコメント止まるんだぞ】
【帰って?】
【邪魔】
【要らない】
【草】
【やだ、最近私、避けられてる……?】
【もしかして:自覚なし】
【ある意味ハルちゃんと同類だな ある意味でだけど】
【やだ、私嬉しい】
【やべぇ、姉御は無敵だったわ】
【知ってた】
◇
「……はぁ、はぁ、はぁ……」
それから1時間。
30分。
10分。
それとも、5分。
僕の中の時間感覚がめちゃめちゃだけども、最低でも10以上のブレスはかわせたはず。
だけども。
【ハルちゃん、息上がってる……】
【あんだけ走って転げ回ったら……】
【あのイスのすごさ、改めて分かったな】
【あとちょっとっぽいのに……】
【空からブレスばっかやられて攻撃通らないもんなぁ】
【卑怯】
【ドラゴンのくせに!】
【ノーネームちゃんを見習え!】
【そうだそうだ!】
【適度な高さで攻撃受けたりしてたフェア精神をだな!】
【ノーネームちゃんも何か言ってやって! ずるい同族に!】
【……いない……】
【そうだよなぁ……ハルちゃんのピンチ……の前の大活躍ではしゃいでなけりゃおかしいんだもんなぁ……】
【ノーネームちゃん……どこ……ここ……?】
【ここには誰も居ません】
【怖いこと言うなよ】
【なぁ、あのドラゴン何なんだ? あのノーネームちゃんの何倍のHPあるだろ?】
【スリングショット、しかもただの石ころでの攻撃だって、何百発食らってかなりダメージ負ってるのは分かってるのに……】
【あー、リジェネですねー。 巻き戻してみたら、15分くらい前の段階までは塞がってたお目々、いつの間にか空いてますねー】
【リジェネ使ってくるボスモンスターとかアリ!?】
【ずるい!】
【ずっこい!】
【卑しい!】
【ドラゴンのくせに卑しい!】
【いやまぁハルちゃんだって魔力でケガ治してるし……】
【ハルちゃんはいいの!】
【幼女だからいいの!】
【草】
「GRRRRR……」
高いところ……天井があった場所でばっさばっさやりながら、回復した僕を見てじっと考えているドラゴンさん。
僕が治癒魔法でちょっと回復するあいだに、あっちはずいぶんと回復。
……こういうところで継戦能力の差が出るんだね……悪手だったかぁ。
【戦闘パターンは完全にノーネームちゃんみたい】
【ああ、本当にハルちゃん観察して対応してるよな】
【おんなじパターンじゃ攻撃かわされちゃってたし】
【だからこそ、こうして高いところから一方的な遠距離に切り替えてるし】
【かしこい】
【お馬鹿だったら良かったのにね】
【いくらハルちゃんが弱ってる後衛職だって言っても……あの頻度でのブレスとか、逃げる方を予測してのブレスとか、殺意満載だったもんな】
【長距離範囲攻撃とか卑怯でしょ……】
【尻尾でいきなり叩きつけられたのもあったな】
【それもどうにか全部回避してたけど……】
【ちょっとずつ食らったり、爆風で吹き飛ばされたり、巻き上げられた石とかで……】
【回復量的にも、もう……】
【ここからは長引くほど、ドラゴンだけが回復して……】
……強い上に頭が良くて、さらに警戒心が強いんじゃあ。
もう、どうしようもない気がする。
……そっか。
「……これじゃまるで、あのときみたい」
でっかいドラゴンを見上げて、ぽつりと漏れる言葉。
「あのとき……るるさんを助けたときの、あのときのるるさん。 るるさんはきっと、こんな気持ちだったんだね」
【ハルちゃん!?】
【まだ大丈夫、諦めないで!】
【せめてコメントが読み上げられたら】
【俺たちがいるって伝わるのに……!】
あのときは、たまたま僕が助けることができてた。
でも今は、そんな味方は存在しない場所。
じゃ、男らしくこの身1つで切り抜けなきゃね。
それが、男ってものでしょ?
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