187話 ドラゴン戦2
空飛ぶイスに乗ってからの僕は、とにかく速度と機動性を活かす戦術を採ってみた。
相手はドラゴン、しかも特大のでかさのやつ。
それなら、ノーネームさんよりもずっと遅いはず。
……まぁ、強いからこそでっかくても素早いって事もあるから、油断はできないんだけどね。
先入観は怖い。
だから、とにかく観察。
ひゅんっ……がいんっ。
弾かれる……けども、場所による。
「GRRRRRR――!」
「……ダメージは、通ってる。 後はただの繰り返しだね」
ドラゴン。
特徴は何と言っても長い翼に尻尾、そしてブレス。
……つまりはノーネームさんとの戦いでやってたのを思い出せば良いんだ。
ノーネームさんみたいに「普通のモンスターみたいじゃない、生きているモンスター」として。
ノーネームさんみたいに「賢くて、特定の数パターンでルーチンな動きじゃなくて、考えて動くモンスター」として。
――「知的生物」として。
「人類以外の知性生物」として。
「天敵」として。
そうじゃなかったら取り越し苦労、そうじゃないと分かれば切り替えたら良い。
でも。
「GRRRRRR――――!」
「おっ……と……今のは結構きわどいところだった。 行動パターン読まれてきたかな」
「そう」だった。
つまりはノーネームさん「みたいな」ドラゴンさん。
ま、ノーネームさんじゃないんだけどね。
……理由?
単純になんか雰囲気違うなーってのと、あと、戦闘スタイル……性格が完全に違うから。
なんて言うか、ノーネームさんはおとなしくって、基本こっちの動きを見てからのカウンターが多かった気がする。
それに対してこのドラゴンさんはけんかっ早いし、力任せ。
強引。
傲慢。
そんな印象があるから。
ドラゴンさんたちでも、そうやって性格がばらばらなんだね。
まるで人間みたいだ。
まぁノーネームさんの本体がドラゴンなのかは分からないけども。
「あとは、被弾しないのを最優先に……スキがあればスリングショットで、こうっ!」
「GRRRRRR――――――――!?」
うん、眉間にクリティカルヒット。
痛そう。
でも、君の攻撃も痛いから良いよね?
【えぇ……】
【なぁにこれぇ……(畏怖】
【これさ、この前のノーネームちゃん戦越えてない?】
【越えるもなにも別次元だぞ】
【だよな】
【やべぇ、ハルちゃんの動きが速すぎて追いつけない】
【本当、最初期にいちいち驚いてたのを思い出すな】
【ああ、ハルちゃんの行動パターン知らないとな……】
【それを思うとドラゴンさんかわいそう】
【でもハルちゃんにケガさせたから許さない】
【それな】
【でもさ あのときはるるえみリリに抱っこされながらノーネームちゃんにやってたのを、ここで単騎完成させるとは……】
【まーた繋がっちゃった?】
【繋がってしまったな……】
【繋がったって言うか完成したって感じだけどな】
【細かいことはいいじゃん?】
【一体感だよ一体感】
【始原もそう思います】
【草】
【緊張感なさ過ぎて草】
【だってこれ、なんかもう……すっごいからさ、まるでゲームのトレーラーみたいなんだもん……】
【それだ】
◇
「……ここでガス欠……っ」
【えっ】
【あっ】
【そういやどのくらいだ?】
【もう30分以上全速で駆け抜けてたな】
【たった30分なのか……】
【いや、あのドラゴン相手にもう30分だぞ】
【しかも獲物は石で、ひたすらちくちくちくちくしてな】
【単純作業なはずなのに手に汗握る30分だった……】
すぷすぷすぷす。
イスさんが少しずつ速度を落としていく。
この前と同じように、やっぱりいきなり止まるタイプじゃなくって、余裕持って降りられる設計みたい。
ネーミングセンスもなければデザインセンス壊滅だけども、使いやすさは抜群だ。
つまりは機能性重視ってやつだね。
【ああ、ハルちゃんが堕ちていく……】
【おい、撃墜されたみたいに言うなよ】
【でも状況としては合ってるじゃん?】
【合ってるけどさ】
【なんなら合いすぎている】
【草】
【だから真面目にやれと】
【だってハルちゃん自身が……】
【ハルちゃんだもんなぁ……】
【ハルちゃんだもんねぇ……】
【もうそれでいいよ……】
【ガチのピンチ過ぎるのにこの空気よ】
【だってもう何回目だもん】
【なんかハルちゃんって、通常のダンジョン配信じゃありえないピンチばっかじゃね?】
【確かに】
【えーっと、るるちゃん救出でしょ? リリちゃん救出でしょ?】
【で、前人未踏の500階層、どう見てもやべー難易度だった300階層以下の全部の階層でしょ?】
【ノーネームちゃん戦でしょ?】
【ミサイルでしょ?】
【ミサイルは違くね?】
【ハルちゃんのためにノーネームちゃんががんばったっぽいから、実質ハルちゃんのおかげってことで】
【もうそれでいいよ】
【お前ら、ハルちゃん堕ちたぞ】
【知ってる 現実逃避したいんだ】
【ああ……】
【けどなんでドラゴン、襲ってこないんだ?】
【ブレスも撃ってこないな】
【あれじゃね? 今までにない動きだから警戒してるとか】
【だな】
【どう見てもハルちゃんの動き見て戦ってるし】
【ノーネームちゃんみたいに自律してるもんなぁ】
とすっ。
「……さぁ、ここからは鬼ごっこです」
ぷすぷすとも言わなくなったイスさんをきちゃない袋にしまった僕は、そんな僕の動きをじっと見下ろしていたらしいドラゴンさんを見上げる。
「……おっきいなぁ……でも、負けませんよ」
【かわいい】
【いちいち表現がかわいいハルちゃん】
【目の前には絶望しかないはずなのに……】
【ハルちゃんには諦めるってことがないんだろ】
【まぁ、実際それなりにダメージ出したしな】
【そうそう】
うん。
イスさんのおかげで、ここまで削れたんだ。
ドラゴンさんの片方の翼には何十もの穴が空いていて、胴体からは血がしたたり落ちていて。
「GRRRRR……」
片目は塞がって、飛び方もちょっと不安定。
……後は、君と僕との体力勝負だね。
「ここからもできる限り、暴れてみせるよ」
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