184話 イスで遊んでたら忘れてた、地震、そして
僕は正気に戻った。
「すごいですねこのイス、見てくださいこんな曲芸も! …………じゃないじゃない、何やってたんだ僕、早く出ないと……」
【うわぁぁ急に冷静になるな!】
【草】
【いきなり『すんっ……』ってしてて草】
【子供ってはしゃいでたと思ったら一瞬で興味切り替わるから……】
【やっぱりお子ちゃまハルちゃん……】
【いつにない笑顔だって思ってたら急にいつもの真顔だよ!】
【かわいい】
【うむ】
【今の、年長さんなうちの子とそっくり……】
【お父さん!】
【残念、お母さんよ】
【何やってるんだお母さん、自分の子供もっと見てやれよ】
【大丈夫、娘と一緒にハルちゃんを観ているわ。 娘が好きなのよ。 なんならこの1ヶ月、この配信にくぎ付けで良い子なの】
【草】
【英才教育過ぎない?】
【ハルちゃんを好きすぎる幼女とか……】
【幼女は幼女を惹きつけるんだ】
【でもせめてコメントしてるとこはみせないでやって?】
【果たしてハルちゃんの配信が英才に繋がるかは不明だが】
【お母さん? 娘さん、将来ちょっとおかしくなったり飲んだくれになっちゃうから、ほどほどにね??】
【草】
「よっと……遠心力で吸い付いてるかと思ってましたけど、これ、なんか横とか向くと靴が床に張り付くんですね。 あ、手も置けば思いっ切り引っ張らないと剥がれない程度にマグネットな感じ」
なんか楽しくなっちゃってたけども、冷静になってみればなんかやばい気配も迫ってるし、ついでに上下逆になってるって気が付いた僕。
……うん、この体のせいなんだ。
この体、ときどき僕を離れて無心になるから僕は悪くない。
お医者さんも「できる範囲で良いので、気をつけてくださいね……」って言ってたし。
よし。
【でも良かった……ようやく思い出してくれた……】
【ちょっとー、画面酔いしちゃってるんですけどー】
【珍しく嬉しそうだったもんなぁ】
【遠心力使って宙返りしてるつもりだったのハルちゃん……】
【やっぱりちょっとおかしい……】
【ま、まぁ、子供はこういうの好きだからさ……】
【こんな日の光も来ない、誰も居ない、居るのはちょっとおかしいモンスターばっかり……ストレス溜まってたんだな】
【ああ、お酒の量も多分増えてたもんな】
【今日なんか歩きながら何回も……】
【あれ? ってことはハルちゃん、今飲酒運転?】
【あっ……】
【草】
【ま、まぁ、緊急事態ってことで……ね?】
【今ごろダンジョン協会とか関係各所とか政府とかに連絡殺到してそう】
【してそう】
【職員さんたちかわいそう】
【めっちゃかわいそう……】
【まーたハルちゃんが悪さしてるよ】
5分10分乗り回して……はしゃいではいないよ、ただ動くかどうか確かめただけなんだ……特に問題はないって分かったイス。
ついでに、読み方が分からないモニターにある、多分で燃料のメーターも50%くらいあるっぽい。
「どう見てもダンジョン関係の新技術ですし……ダンジョンの魔力とかで回復するものなら、1ヶ月で半分は回復するんですね。 このイス」
【しゅごい】
【でもやっぱイス呼びで草】
【何もかも、制作者のセンスの無さが悪いんだ……】
【そらそうよ……】
【ちらっと映ってた説明書にもネーミングとかなかったもんな】
まぁいいや、便利なら便利で。
これなら僕自身の魔力を節約しながら移動できるし、索敵スキルと組み合わせたら相当楽になる。
さらには万が一でモンスターに囲まれたりしてもこれで突破できるし、なんならさっきみたいな地震で危なくなっても……って。
「あ、さっきの地震……そうだ、ヤな予感してるから逃げなきゃ」
【ようやく思い出したハルちゃん】
【良かった……良かった……】
【急に不安そうになったと思ったら、急におもちゃで遊びだしてて不安だったのよ……】
【やっぱりハルちゃん、お子ちゃま】
【ハルちゃん天然っぽいし……】
【精神が肉体年齢に引っ張られているのか、素でこうなのか】
【るるえみ、なによりくしまさぁんの発言切り抜き何回も観たけど、多分素だよ】
【そうか……ならばよし】
【JKでこれとか素敵すぎる】
【本の虫な文学少女で呑兵衛で子供っぽくておとなしいとか、ダンジョン関係に熱心だったりウィリー好きだったり、もはや良く分からなくなってきた自称JKハルちゃん】
【もはや属性の塊よ】
はしゃぎすぎ……てないけど、とにかく部屋の真ん中くらいに居た僕は、加速を付けて部屋の出口へ。
――夢中でつい忘れちゃってた「それ」は、もうすぐ近く。
頭の上。
逃げなきゃ。
……索敵スキルに、これでも引っかからない。
ってことは、ダンジョンの外から?
いやいや、どんだけ深いところか浅いところか分からないけども、ダンジョンの壁とか天井とか床は、基本的には壊れないもの。
壊れるとしたらダンジョン内の罠だったり、「ボス級のモンスターの必殺技」くらいしか――。
「っ!?」
どんっと大きな振動。
体の中まで揺さぶられるよう。
「……きゅ、急停止っ!」
ちょっと迷ったけども、やっぱり体に染みついてる方の判断を選択した僕は、出口じゃなくて近くの壁に全速で飛行。
イスがちゃんと着地するのももどかしく、飛び降りて転びかけて、きちゃない袋からあのときに同行してくれてた誰かの盾を斜めに立て掛ける。
【ハルちゃんめっちゃ俊敏】
【でもとりあえず大丈夫そう】
【けど今度の地震は】
【なんかでかいぞ】
【こわいよー】
【おい、世界中のライブとかニュース見て回ろうぜ】
【そうか、今地震のニュース入ったら場所が分かるか】
【地下とは言え、ハルちゃんが立てないくらいの地震なんだ、地上でもニュースになるくらいは……】
【しかし地震のニュースにはかなりラグがあるからな……】
【都市部とかだったらすぐに分かるけど、そうじゃなかったら……】
ごつん、ごつんって落ちてくる壁から剥がれた石。
さっきまでよりもおっきいのが、どすどす落ちてきてる。
……でも、ダンジョンの中でこんなことってのは、よっぽどのことがないと。
それこそ爆発の罠を多重起動したときとか、僕はムリだけども強い魔法をぶっ放したとき。
あとは、あのときみたいにおっきなモンスター……それこそ、「ノーネームさんが入ってたあのドラゴンくらいの強さの」――。
「っ……」
僕は「それ」の気配で、体が固まったまま、本能的に頭を上に。
――――――――――そこには、あるはずのダンジョンな天井がなくなっていて、きらきらした何かが広がっていて。
「――――――――――GAAAAAAAA――――――――――!!!」
【えっ】
【うわっ!?】
【なんか最近聞いたぞ】
【この声ってまさか】
【ハルちゃん逃げてー!!】
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