１８１話 さくさく攻略 モンスターの種類が増えてるけど
「ほんと、広いフロア……どのくらいの広さなんでしょうね」
今日からはぐいぐい行くって決めてるから、魔力は手脚に注いでる。
……というか深いところなのか、魔力、かなり回復するんだよね……まぁレベルダウンしてるなら魔力の総量も少ないわけで、「気がする」だけかもだけどさ。
走る必要はなくなったし、必要なのは引っ張ると疲れるスリングショットを構えてるあいだの両腕と胸筋と背筋。
あとは歩くときの両脚と腹筋と背筋。
必要最低限の補助で最大限のパフォーマンス。
僕、こういうのを地道に調べるのが好き。
最小限の力で最大限の効率って、男のロマンだよね？
【もうスライムとかラビット相手じゃ、スリングショットをクイックリリースで瞬殺だもんな】
【なんなら狙いも付けてないまであるよな？】
【多分無意識でつけてるんだぞ】
【ああ……】
【ハルちゃん、フォームがちゃんとしてるから】
【無駄に洗練されてるんだよな】
【世界スリングショット連盟の名誉会長になったハルちゃんだぞ、住む世界が違うんだ】
【勝手に名誉会長にされてて草】
【だってその方が人の入りがケタ違いだし……】
【一応事務所さんがOK出したらしいし……】
【ああ、ハルちゃん、全部丸投げにしてたもんねぇ……】
【「めんどくさくなければ何だって良いですよ」って言いそう】
【すごく言いそう】
「でも、この……ほぼ一本道のダンジョン」
感覚的に僕よりレベルが低いモンスター相手は、もう意識しなくて適当でも片づけられる。
と言うことは、少なくともスライムよりは数レベル上ってことかな。
だから死体の残る場所だけ意識すれば良くって、脳の処理能力を最適化できていろいろ考察中なんだけども。
「お昼休憩を除いて、今日歩いたのは……えっと、４、５時間くらい。 魔力で補助しつつ、移動距離を優先して早歩きですので……時速４キロくらい。 ということは、最大で２０キロくらい進んだわけなんですけど」
僕は、索敵スキルに光る、次の部屋にいる複数のモンスターをじっと見る。
「あの部屋からどんどんと強いモンスター、出て来る形になってますね。 ……反対側に向かってたらどうなってたのか。 もう戻るのめんどくさすぎて諦めてますけど、気にはなります」
【まじか】
【索敵スキル便利過ぎ】
【スキルはレベルよりダウンしにくいから残ってたのかな？】
【ハルちゃん本人のレベルが極端に落ちてたから、発揮できるレベルまで機能しなかったって言うパターン？】
モンスターが廊下でうろうろしてる数も、昨日に比べたらものすごく増えてる。
普段はそれぞれの部屋で湧いたモンスターたちが、数が多くなったら獲物求めて廊下に……っていう感じだから、多分。
「これ、階層は同じでも先に進むほど下の階層……みたいな特殊ダンジョンかもですね。 実際、進むほどにモンスターの強さも数も上がっていきますし」
【かしこい】
【そんなのあるの？】
【できそこないのダンジョンも結構あるから、まあ？】
【やたら狭い部屋と通路ばっかりだったり、モンスター居なかったり】
【その逆とか、１部屋に上下の階段がタワーみたいになってるタイプもあるもんな】
ま、とりあえずなんとかなりそうだから急ごう。
……なんか、胸騒ぎしてきたし。
◇
「ぴぎー！？」「ぐもぉ！？」「きゃんっ！？」「にゃんっ！？」「もーっ！？」「ひひーんっ！？」「ちゅんっ！？」
【ああ、画面いっぱいにモザイク】
【グロ】
【大惨事】
【そらそうよ】
【なぁにこれぇ……】
【ハルちゃんが暴れたんだ、こうなるさ】
次の大部屋にはたくさんのモンスター……だけど、多分ただ多く湧いてただけで、一斉に飛びかかってくるタイプじゃないから落ち着いて１体１体。
脚の速いのとか飛んでるのとかを優先して狙撃。
あと突進してくるのも狙撃。
それ以外の遅いのとか、万が一で攻撃受けてもレベル的に大丈夫だろう弱いのとかは無視して、死体で通れないってことにならないように、ある程度ポイントを誘導して。
【しゅごい】
【小走りで駆け回るハルちゃん】
【こんなにアクティブなハルちゃんはレアだぞ】
【ついでにこの狙撃技術もな】
【ハルちゃん、ちゃんと優先度決めて立ち回ってるな。 めっちゃ参考になるから後で観返そう】
【俺も】
【でもモンハウだなんてついてないね】
【モンハウじゃないぞ？ だってハルちゃんに気づいてないモンスター、結構居るし】
「……でもっ、結晶化はしませんし死体は残っちゃいますけど……ちゃんと経験値、貯まるので問題はありません、ねっ」
「こけー！？」
【草】
【というか待って、もうコカトリス出て来てんの！？】
【えっと……普通のダンジョンなら、低くて３０階層のボスか】
【ってことはさ、さっきハルちゃんが言ってた……】
【ああ、横に長いダンジョンなのかもな】
【しかもそれがボスとしてじゃなくって、普通にポップしてるって……】
【……低くて５０階層だな】
【マジ！？】
【まぁ、これまでの基準で……だからもう分かんないけど】
【一本道のダンジョンって厄介だよなぁ……】
【しかも事前情報なしだからな、もうハルちゃんの経験則に頼るしかない】
【じゃあ引き返せば地上に出られるってこと？】
【どうだろう……ループ状になってたら、結局反対側の先もこうなってた可能性も……】
【え？ じゃあさ ハルちゃん、どうやって地上に出るの？】
【あっ】
【あ】
【え？】
【えぇ……】
【悲報・ハルちゃん、出られない】
【何その地獄】
【出口のないダンジョンとか、ハルちゃんでも無理じゃね……？】
「……ふぅ、あとは残党処理だけ……ですけど、やっぱり宝箱とかもないですね……」
【おい、さらっと２０体くらい倒してるぞハルちゃん】
【しゅごい】
【つまりは２０体のグロ画像が】
【しゅごくない】
【草】
【現場はさぞ凄惨だろうに……】
【ああ、ちょうど裏でやってるるるえみの方も、地獄絵図で女の子たちが吐いちゃってるし……】
【何それ何時間何分何秒のとこよ観たいからはよ】
【草】
【欲望に忠実過ぎる】
【ひでぇ】
【見た目もひどいけど、臭いもひどいらしいぞ】
【視聴者でさえ具合悪くなるやつ続出だから気をつけろ】
【でもなんでハルちゃんの方は何ともないの？】
【だってハルちゃんがへーぜんとしてるから……】
【うげぇってなってたのも最初だけだしな……】
【今も普通にモザイクの間を縫うように歩いてるし……】
【何なのこの幼女】
【天使だよ？】
【ああ、種族が違うから気にならないのか……】
【もうそれが正解としか思えない】
【もし人間だとしたらやばすぎるメンタル】
【死体の海を涼しい顔して歩く幼女……】
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