123話 『泉』2
こちらは本日2回目の投稿です。今日の1話目がまだの方は前話からお楽しみください。
伸びをしたり体を動かしてみたりして、「よしっ!」ってもっかいぐるって回ったあと、「んーっ!」と伸びをするるるさん。
この子って、いちいちの動作が何でも大きいんだ。
「で……ここって……」
「あの下の階層……か、ノーネームさんが転送してくれた場所ですね。 この空間の周囲、地形が『探知できない』から分かりませんけど」
むーんと念じてみても、この泉のある洞窟な空間の外は分からない。
単純に僕の魔力がまーた空っぽになってるせいか、それとも相当深くまで落ちたか転送されたか。
――それとも、あの怖いくらいの魔力で吹き飛ばされちゃったか。
もしかしたら全部かもだけどね。
「……んー、ダメだ。 スマホ、電波通じない」
「僕のもですね」
時間は分かるけども、それ以外の機能が使えないただの板になったスマホ。
電波が通じないって不安だよね。
【え?】
【電波通じない?】
【いやまああんだけのことがあったからそりゃそうだけど】
【じゃあなんで俺たちるるハル観れるの?】
【そりゃあノーネームちゃんのおかげだろ】
【ああうん、もうノーネームちゃんのおかげってことでいいや……】
外との連絡手段はないけども、とりあえず僕たちは平気だし……多分えみさんもリリさんも無事。
今はそう思うしかないよね。
「じゃあ私たちふたりっきりかぁー」
「そうなりますね」
【●REC】
【●REC】【●REC】
【何を期待しているんだい? ノーネームちゃん】
【隔離された空間に女の子ふたり、何も起こらないはずはなく……】
【女の子ひとりと男の子です!】
【男の娘です!】
【ショタです!】
【うわ出た】
【塩撒け塩!】
【しっしっ!】
【どっか行け!】
【そんな扱い!?】
【草】
ぐっすり寝た感覚があるだけあって、特にふらついたりせずに立ち上がって歩けるっぽい……魔力は無いけどね。
「るるさん、一応、脱出するまではリストバンドのボタンに片手置いてくださいね」
「うん……ここでまたモンスター出ても……あ、私の剣も無い……」
「スリングショットはありますけど……この階層のモンスターに有効な石はそんなにないので、もし危ないって思ったらすぐに押してください」
「うん、ハルちゃんもね!」
るるさんの安全をとりあえずで確保してから改めて周囲の観察。
――ダンジョンでは一般的な、水のあるフロア、または部屋。
洞窟な壁や天井は鍾乳洞のようで、ダンジョン特有で灯りもないけども本が読める程度には明るいのは変わらない。
そして――部屋の中央には、泉。
願いの泉。
「……ハルちゃん」
「はい。 願いの泉……とうとう、来ましたね」
【あああああああああ】
【あああああああああ】
【あああああああああ】
【聞いちゃダメなの!】
【始原うるさいぞ、ミュートすっぞ】
【始原数人分のアカウントで露骨に工作すんな】
【草】
【荒ぶる始原】
【けど願いの泉って何?】
【あああああああああ】
【始原うるさいってば】
【じゃあ見るな聞くな】
【え、やだけど】
【どうしてそんなこと言うの!!】
【どうした始原、いつもらしくないぞ】
こつ、こつ。
ふたりで泉へ近づいていく。
【ああ……】
【もうおしまいだ……】
【うう……】
【ハルちゃん……】
【始原たちが絶望している】
【始原のアカウント、こんなに同時に動いてるのは珍しいな】
【本当だ……コメント欄に5個くらいデフォルメハルちゃんが】
【群がってきてて草】
【……そういや始原って、ハルちゃんのことよく知ってるよな】
【じゃあ今のも?】
【願いの泉……いや、まさかな……】
【なんとなくどういうものか分かっちゃうよね】
【名前は単純すぎるからな】
「ハルちゃんが、戻れるんだね……ようやく」
「そうなりますね」
【あああああああああ】
【あああああああああ】
【あああ……もういいや……】
【どうした始原、そこで諦めるのか!?】
【もういいもん】
【もうバレちゃったもん】
【俺たちだけの秘密じゃなくなったんだもん……】
【古参の最後の希望が……】
【草】
【始原が幼女と化している……】
【けど、ハルちゃんが戻れる……?】
【戻るって何に?】
【天使に?】
【それだ】
【さすがに……え? マジでハルちゃん人外!?】
【ウソと言いきれないどころか納得できちゃう】
【なるほど、これが始原が隠したかったものか】
水面には僕たちの顔が、はっきりと映っている。
色とりどりの光。
きらきら光る光。
水底の地形。
――前に1回、見たことがある光景。
「えっと、これってハルちゃんが去年見たのと」
「はい、同じです。 僕が、この体になったときのと。 もっとも、小さくなる前ですからもっと上から見てましたけどね」
完全におんなじじゃないけども、ダンジョンは個体差あるし、多分同じってことでいいんだろうね。
なにしろこんな空間、普通はないんだからさ。
「あ、そっか。 ハルちゃんって私より」
「身長、それなりに高かったですからね」
【えっ】
【ハルちゃん……?】
【背が高かったって……】
【もしかして:ハルちゃん、本当の意味で合法ロリだった】
【本当の意味?】
【解析班! ここにいるか!?】
【おうよ】
【あ、いた】
【うわっ……】
【出た……】
【なんで呼ばれて出て来たらそこまで言われるんだよ俺!?】
【草】
【ごめん……でも正直ねぇ……?】
【うん……】
【やっぱり……】
【リアルでは会いたくないなって……】
【泣くぞ!!】
【で、どうだったよ】
【急に冷静になるなよ!?】
【はよ】
【お前ら……まぁいいや。 で、本当だよ。 やっぱりハルちゃん、「1年前のあるとき」から身長低くなってるわ、これ。 今までずっと「そんなことあるはずない」ってことで、頭の上の配信機材変えたって結論だったんだけどさ】
【でも今でも頭の上に乗っけてるカメラ、もっと高いところって……かと言って浮いてる動きじゃなかったし】
【そのときを境に歩幅も変わってるし、なにより武器、全部一新してるんよ。 しかも変えた当初はあのハルちゃんが攻撃外しまくりでさ】
【は?】
【マジ?】
【マジマジ。 ほら、以前始原がさ、「ハルちゃんが一時期具合悪そうだった」って言ってたじゃん?】
【そうだっけ?】
【そうかも……】
【あ、ハルちゃんwikiに書いてあった】
【すげぇ】
【でさ、それって1年前なのよ】
【「こんなこと言ってもなー」って、解析班の中での内緒だったのよ……もうバレちゃってるけど。 始原の反応見たら正解だったっぽいな】
【……るるちゃんたちが今言ってた……】
【え、じゃあもしかして】
【ハルちゃん……】
【……1年前までるるちゃんより背が高かった!?】
【つまり成人女性!?】
【お姉様!?】
【なにそれすっごく興味あるんだけど】
【ぼんやりお姉さん……いいね】
あと数話で最終話です。
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