120話 地上にて
ここまで来たら最終話まで1日2話投稿。
こちらは本日1回目の投稿です。昨日の2話目がまだの方は前話からお楽しみください。
ダンジョンの入り口を正確に突き破り、空を飛んできた速度そのままに1階層の床に接触した飛翔物。
それは一瞬の間に「魔方陣を展開し」「周囲の地形と300階層程度までをスキャンし」「火薬と調合された魔力という新エネルギーを爆発させ」「最も効率的なインパクトを直下へ下ろし」――轟音とともに全てのエネルギーを放つ。
それと同時に500階層に居たドラゴン「の形をしたもの」は「その飛翔物の魔方陣を解析し」「術式を展開し」「下ろされたエネルギーと同等以上の魔力を計算し」「ダンジョンを構成するほぼ全ての魔力を消費して」真上にブレス「の見た目をした物質」を吐き出した。
それらは上から下からダンジョンのあらゆる構造を破壊しながら進んで行き――――250階層付近で衝突。
【さっきからなんにも見えーん!!】
【ノーネームちゃーん!! 見えないのー!】
【ハルちゃんどこー!?】
【ちょ、俺、避難してるんだけど、こっちめっちゃ揺れてる】
【そりゃミサイルだもん、揺れるさ】
【いや、音とか振動が尋常じゃなくって】
【それよりハルちゃんたちは!?】
【真っ白でなんにも見えない】
【草】
【草じゃないが】
【いかん、やばいのに普段の感覚でつい】
【えっ】
【あの、避難所】
【配信画面!】
【どれよ!?】
【さっきダンジョンの入り口から避難してきた……待機してた、くしまさぁんたちがいるとこ!】
【くしまさぁん! どこの配信にいるの!】
【避難所にえみちゃん!?】
【リストバンドか!】
【リリちゃんも!?】
【いや、リリちゃんはどうやら居ないらしい】
【は!? 何で!?】
【分からん!】
【でも何でこのタイミングで?】
【え、ハルちゃんとるるちゃんは――】
先ほどから混乱しかない地上と地下。
地下数百メートルでせめぎ合った「魔力」というエネルギーの塊。
それらは数秒の死闘を繰り広げた後――下からのそれが勝ち。
【うぉっ!?】
【え、ちょ】
【あの、テレビ】
【ダンジョンからなんかすっごい光】
【真上に上がってる!!】
ダンジョンそのものを完全に破壊しようとしたその力は、ダンジョンの中からの力により反転させられ――ダンジョンの存在した空間という大穴を砲身とした光の弾丸となり。
――――――空の彼方へと、突き抜けて行った。
『――っ! 地上からの攻撃で――』
その弾丸は、「たまたま」「ついでで」。
……その真上に浮かんでいた合衆国軍の軍事衛星を貫いた。
◇
【悲報・ノーネームちゃん、合衆国軍から先制攻撃される】
【えぇ……】
【こんなのってある??】
【目の前で起きてるだろ?】
【あの、中継のカメラ……ダンジョンからずっと空にブレスっぽいのが出っぱなしなんですけど……】
【周囲の雲がぽっかり晴れててしゅごい】
【怖いけど綺麗な光がずっと……】
【何あれ、あれが合衆国軍の新兵器か何か?】
【なんであんなのぶっ放すの……】
【ハルちゃんじゃあるまいし……】
【いきなりぶっ放す系ロリじゃないはずなのに……】
【草】
【お前!】
【そういうとこだぞ】
【ダメだ、やっぱり普段のノリになっちゃうわ】
【ハルちゃんとノーネームちゃんに調教されすぎた俺たち】
【というか今さ、一瞬停電したんだけど】
【俺も】
【データが! データがぁぁぁ!】
【草】
【SNS見た限り、本州全土だな】
【マジか】
【あのミサイル……何なの……?】
【わからん】
【そんなことよりハルちゃんは! るるちゃんは!?】
【落ち着け小僧】
【あ、始原】
【始原!!】
【さっきから居なかったじゃん!!】
【ちょっと所用でね】
【ノーネームちゃーん! ノーネームちゃーん!】
【ノーネームちゃん! ハルちゃんのできたてイラストよ!】
【……………………………………いない……】
【反応が無い……】
【ありえない……】
【ノーネームちゃんのあの執着心なら意地でも来るはず……来ないってことは……】
【ノーネームちゃん……】
【配信画面は……切れてないよな?】
【これ、ダンジョン内に整備された電波使ってるだろ? じゃあ切れてるんじゃ?】
【でもストリーム中のままだし……】
各テレビ局も、民間人の配信画面でも誰1人として全容をつかめずに慌てるばかり。
幸いなことに軽傷者以上の被害が報告されていないのと、10年前の記憶から避難誘導には従うという意識が根強かったために、影響の強かった地域の人々は各避難所や安全な場所に退避中。
ミサイルと思しき物体が空から降ってきて――落ちたと思ったら地上からまばゆい光の柱が立ち上って数分。
揺れも強い風も続いてはいるものの、当初ほどではなくなり……少しずつ恐怖心の薄れてきた人々は屋内から顔をのぞかせる。
【ハルちゃん……】
【るるちゃん……】
【リリちゃん……】
【今、巻き戻して有志で検証した】
【リリちゃんまでは間違いなく転送されてるわ】
【なら大丈夫か……?】
【ああ、えみちゃんも避難所に飛んだからリスポーン地点は更新されてる】
【じゃああの爆発の巻き添えにはなってないか】
【どこかで目でも回してるんだろ……そう思っておこう】
【リリちゃんの配信が切れてるってことはかなり離れたところに飛ばされたっぽい?】
【分からん】
彼らの想う先は……恐らくは大丈夫だろうというリリから離れ、残りのるるとハルに。
そんな、混乱の最高潮。
突如2人の配信が復活。
そして配信カメラのレンズから10センチの、どアップで映ったのは。
【!!!!】
【映った!】
【あっ(心停止】
【あっ(尊】
【やば、心臓の薬薬……】
【なぁにこれぇ!!!(歓喜】
【突如として映る、ハルちゃんのお顔】
【ハルちゃんおねんね中……】
【あっあっあっ】
すやすやと寝入る、幼子の顔。
【いきなりのガチ恋距離は駄目だって】
【あっあっあっ】
【今ので何人があの世へ召されたか……】
【死んでねぇよ!?】
【危うく救急車呼ぶところだったけど大丈夫】
【え、もう呼んじゃったんだけど】
【え?】
【え?】
【草】
【始原同士でコントしてるんじゃねぇよ草】
【よかった……とりあえずいつものだ……】
【あ、ハルちゃんのカメラからはるるちゃんのガチ恋距離】
【つまり?】
【るるハルは……うっかりでちゅーするくらい顔を寄せているということだ……!】
【寝相次第でちゅーしちゃうね】
【なるほど】
【それは素晴らしい】
【けどノーネームちゃんが反応しない……】
【とりあえずハルちゃんたちが起きるまで待とうぜ】
【呼吸も正常、顔色も悪くないし汗も……うん、魔力を限界まで使って寝ちゃっただけっぽい。 あくまで見てる限りだけどな】
【気絶とかならとっくに、な】
【リストバンドで強制転送されてるはずだしな】
【つまりは大きな衝撃とかはなくって命の危険はないけど、さっきの戦闘で疲れたところで軽く気を失う感じで寝ちゃった感じか】
【とりあえず安心した】
【よし、状況は分かんないけどちょっと兵士さんたちの配信画面行って盗み聞きしてこよう】
【あ、俺も!】
【誰か英語分かるやつ、いつもみたいに字幕で解説はよ】
【ダンジョンの周辺に居た兵士さんたちも中継のまんまだからぜぇんぶだだ漏れなんだよねぇ……】
【こんなときになってもノーネームちゃんの執念が光るな!】
【絶対許さないって言う確固たる意志を感じる】
【こっちに顔出さなくてもストリーミング続けてるあたり、ガチで怒ってるしな】
【じゃあそれに乗っかって盗み聞きしちゃえ】
【そうだそうだ】
【ハルちゃんたちを危ない目に遭わせたんだ、許せないもんな!】
一応の最終話まで&その先を応援してくださる方は、おもしろいと思ってくださった話の最下部↓の【☆☆☆☆☆】を最高で【★★★★★】に&まだの方はブックマーク登録で最新話の通知をオンにしていただけますと励みになります。応援コメントやフォローも嬉しいです。




