114話 地下と空の最終決戦 その3
ここまで来たら最終話まで1日2話投稿。
こちらは本日1回目の投稿です。昨日の2話目がまだの方は前話からお楽しみください。
すっごく高いところから見てくる目から目を外さないようにして、戦闘を指揮して、撃ち続けて……どのくらい経ったんだろう。
みんなの息はずいぶん荒くなってる。
それはもう、ダンジョンで鍛えられなければ到底無理な時間を走り続けているから。
でも、多分。
「ふぅっ、ふぅっ……ハルちゃん!」
「あと少しで倒せます」
「あと少しだって!」
「分かりました!」
「はいっ!」
【結構すぐに雑魚が倒されてバカでかいドラゴン戦になって10分、ようやくか】
【雑魚(普通のパーティーなら1体数十分レベル】
【ま、まあ、ハルちゃん基準のモンスターだし……?】
【もはや新種しかいないもんな】
【見応えあって手に汗握るのに安心できる戦闘だよな】
【分かる】
今の僕はリリさんに抱っこされている。
足がぷらぷらしている。
最初はるるさん、次はえみさんに代わってもらって……ものすごく鼻息が荒くて心配だったけども結構安定感のあるだっこをされつつ、さっきまでと同じようにドラゴンさんをちくちくちくちく撃ち続けて。
そうしてえみさんも疲れたからリリさんになってちょっとして……やっぱり鼻息が荒くて心配だったけどもすっかり慣れた僕は、そろそろこの銃用の弾を使い切りそうになるところで、ようやく倒せそうになったらしい。
【安定感はあるにしてもひやひやするな】
【だってあれ、20階建てのビルくらいよ? 胴体】
【尻尾まで入れたら何十階なんだろうねぇ……】
【考えたくない大きさだな】
【回避の方向間違えただけでもぺちゃんこ】
【まぁその前にリストバンド使えるだろ、動きは鈍いし】
【ハルちゃんが確実に急所を狙っていくからな】
【3人に当たりそうな攻撃になると、ドラゴンの頭じゃなくてその部位狙って弾くもんな】
【それにしても、なんでこう全弾……走って抱っこされてる状態で当てられるんだ……】
【ヘッドショットロリだから?】
【そうかも……】
【そう思わないとやってられない圧倒的実力差】
この銃と弾で100発近く、それでようやく倒せそう。
最初見たときよりもすっごくタフだった。
……このドラゴンさん、一体何レベルなの?
【え、ちょ、良いところで】
【どうした】
【なんかスマホのアラームなったと思ったら政府からの緊急何とかで俺の地区、避難だわ】
【マジかよ】
【はぁ!?】
【あ、また臨時ニュース】
「……あとワンショットで倒せそうです」
「分かりました!!」
「すんすんすんすん!」
「リリさん、うるさいです」
「申し訳ありませんハル様!!」
【草】
【申し訳なくなさそうなリリちゃん】
リリさん、良い子なんだけどなー。
おっぱいもえみさんほど意識しなくて済んでいいんだけどなー。
でもずっと首筋嗅がれ続けるし、やたらおっきい声で返事してくるんだよなー。
「じゃあ合図をしたら止まってください」
「はい!」
大分弱ってるドラゴンさん。
すっごく強かったし、このバカみたいに広い空間で好き勝手飛び回られたら大変だった。
でも、まだ僕のレベルで何とかなる範囲だったらしい。
まぁ遠距離職はある程度レベル無視できるし。
ここが良いところだよね、飛び道具って。
あと、こうして走らなくても済むし。
……いや、るるさん以外なら普通に走っても良かったんだけどね……だってなんか罪悪感あるじゃん……僕、男なのにって。
「リリさん」
「はいっ!」
「えみさんとるるさんはできるだけ距離取ってください」
「はーいっ!」
「ようやくですか……!」
ドラゴンさんが弱くなったブレスをるるさんたちに吐く。
その瞬間を狙って、僕はゆっくりと引き金を引く。
かちん。
「これで――終わりです」
ぱぁんっ。
「……………………………………っ」
「そ、そろそろ倒れてよぉ……」
「……走り続けて、さすがに……っ」
「……………………………………」
……どしん。
さっきまでゾンビみたいに起き上がってきたドラゴンさん。
ビルみたいなでっかいのが、ようやく倒れた。
【やったか!?】
【おいやめろ】
【いやでも、ハルちゃんのヘッドショットを100発くらいよ? さすがに倒れてくれないと……】
【そうだぞ、もし倒れなかったらハルちゃんでも倒せないってことに】
【なにそのムリゲー】
【ま、まあ、このダンジョンがハルちゃん仕様で特別なだけだから……】
「……やったぁ!」
「やりましたね!」
「……ふぅ……あ、すんすんすん……」
ずっと走り回ってた3人は座り込んでる。
そりゃそうだ、いくらレベルと魔力で上乗せされてるからって、あんなビルみたいのから逃げ回り続けてたんだもん。
……これ、僕だけじゃ確かに無理だった気がする。
いや、無理だったんだろう。
「……………………………………」
でも。
――――まだ、僕は見られてる。
「……はぁ、はぁ……どうしたの、ハルちゃん」
「……………………………………」
「結晶化するまでは……ふぅっ、確かに警戒しなければ……」
「すんすんすん……そうですね」
【草】
【リリちゃんが正直過ぎる】
【もはや呆れて振り返りもしないハルちゃん】
【あのジト目がまた良いんだ……】
【分かる】
【でも確かに、ずいぶん掛かってるな。 結晶化】
【ハルちゃんが警戒するのも分かるか】
【でもさすがにこれだけ戦ったら】
「――――グォォォォォォ!!」
びりびりびりびり。
肌がびりびりする声。
【えっ】
【ウッソだろ】
【おいさっきの! 詠唱しただろ!】
【してねぇよ!?】
【草】
【草じゃないがやばい】
【ていうかほんとどんだけタフなの……?】
【HP削れ切ったモンスターがあそこまで動けるのか……?】
【最後のブレスが来るかも】
【逃げてー】
「……みなさんっ」
「うそ……」
「るるっ! ……立ちますよっ!」
「……ハル様の攻撃を100受けてもなお……いえ、これは……!」
空間が振動するほどの雄叫び。
うるさいけども、そんなのを気にしている場合じゃない。
……変なモーションされる前にとりあえず撃たないと。
かちゃんっかちゃんっ。
「えっ」
【えっ】
【あっ】
【弾切れ!?】
【そっか、ハルちゃん、このために弾節約してたって】
【……ってことは、もう攻撃手段は】
【いや、あるぞ ただ……】
……しょうがない。
いそいできちゃない袋に銃を、続けて弓矢を。
急いでるから、どんなやつかはもう適当だ。
今は時間が大切。
何本かを掴んで指の股に挟み、弦にぱちんとつけてすっと引き上げる。
【がんばえー】
【多分これが最後よハルちゃん】
【よし、まだ吠えてるだけだな!】
【きっと負け犬の遠吠えだよハルちゃん!】
【おい、そんなこと言うと】
……ひゅんっ。
僕の放った矢が4本飛翔していく。
弾丸と比べるとものすごく遅い。
羽でばさっとやられたらずれる。
でも、なんとなくだけども、あれはもう羽ばたけない。
そんな直感で、矢の視線からでっかい頭へ近づいていく。
「もう倒れてぇー!」
るるさんの叫ぶ声。
……もう充分遊んだでしょ、ノーネームさん。
そろそろおしまいにしようね?
僕も眠くなってきたしさ。
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