90 雪解け
「み、皆…。この前はごめんなさい」
卒業式が終わり、休日を挟んで登校するなり、レイナは私達にそう言って頭を下げる。
あの後メリッサは無事お世話になった先輩を見送ることが出来たみたいなのだけど、その時に、どうらやレイナとも話をしたみたいで、なんとか和解することが出来たようだった。
「まったくねぇ。ケンカ別れみたいにならなくて良かったわ」
「メリッサは繊細だから、優しくしてあげないと、すぐ泣いちゃう」
「おい、てめぇが泣かされてえか?」
「ちょっと、ちょっと!ストップ!やめてー!」
そもそもの原因が、メリッサを心配しての事だったので、その気持ちが伝われば仲直りもあっという間だった。
今もこうしてじゃれあっているんだから、2人の間にわだかまりはもう残っていないのだろう。
「こうして、皆と同じ教室にいれるのもあと少しなんだね」
「長いような短いような1年だったな」
「わたしはメリッサと同じ部屋のままだから、レアが一番ひとりぼっちになっちゃう」
「寂しくなったらいつでも私の部屋に来てね?」
私達は、段々静かになっていく教室で、そうやって1年を振り替えるけど、サヤカが言うように、私が一番皆との関わりが薄くなるだろう事は分かっているのだけど、そうやって心配ばかりされるのも癪に障るので、レイナに一言、言い返しておく。
「どうせあんたは、いつでもサク先輩の所に居るでしょ?」
「なっ、なっ…。そんなことない!レアちゃんだって、いっつもスイネグ先輩の所に居るでしょ!?」
「おぅおぅ、お前らは青春してるね―」
「あんたは余計なことを言うな!」
なんて、いつものやりとりをしたところで、この騒動は一段落ついて、めでたしめでたし、と言いたいところだけど
「おい、アルトレア。ちょっと来いよ」
という声が掛かり、私にはまだ平穏な時間は訪れないようだった。
「で、こんな所に呼び出して何の用?」
自分のクラスから離れた空き教室に入ると、私はリュウレンにそう問い掛ける。
放課後に誰も居ない教室に男女2人でと言うのは、人に見られれば勘違いを起こしそうな場面ではあるが、私とリュウレンに限ってそれはあり得ない。
私はそう思って教室の真ん中の席に座るけど、リュウレンも同じ考えなのだろう、ドアの鍵を閉めるとそのまま私の前に腰掛ける。
「別に大した話じゃねえが、クラスが変わるかもしれねえから、その前に一応な」
「そう言えば、聞いたかもしれないけど、校外学習の評価、私達の班は幾らか加点されるそうよ。良かったわね。ほぼ確実にSクラスに上がるんじゃない?」
正直それが無くても、リュウレンは十分高成績は収めているだろうが、彼の言葉を肯定するように、私は告げる。
「あぁ。なんかそれっぽい事はスイネグって先輩に聞いたな」
「あら、先輩と面識があったのね」
「いや、この前初めて話した。その時に色々聞いたんだ。魔物の事もそうだが、俺の体質の事も、お前の事も」
「私の事も?」
「そうだ。なぁ、アルトレア。お前はなんであの人の助手なんかやってんだ?」
すると、彼から意外な話が出てきたのでそう問い返すが、どうやら彼の今日の本題は、それに関することだったらしい。
「なんでって言われると…
改めて、私がスイネグ先輩の助手になった経緯を思い返すと、流されるままに勝手に話が進んでて、気が付けば知らない先輩2人に、面倒をみられることになっていた訳だ。
けれど、セイラ先輩はともかく、スイネグ先輩は、本格的な指導の前に今後の展望を述べて、私にどうしたいか最終決定権を渡していた。
あの頃は純粋に、見返してやりたいとか私の事を認めさせてやるって気持ちで着いていってたけど、メリッサからのアドバイスで、すっかり憑き物が落ちた私が、今もこうして彼に師事しているのは
「あの人の驚いた顔を見たいから?なのかな」
考えてみれば、思っていた以上にスッと口からこぼれ出たが、きっと、それが本心だからなのだろう。
「それが、理由なのかよ…」
だが、自分から質問してきたくせに、リュウレンはその答えを聞くと、イラついたような表情をする。




