88 卒業式・前編
「お別れ…か。」
大雪が降って、ケンカ別れのようなものをしてから数日、今日は卒業式だった。
式が終わったところで、クラスメイトや上級生達は、校舎を出た後もその場に残って言葉を交わしたりと、別れを惜しむ姿が見られるけど、残念ながら私にはそのような相手は居ない。
なので、その光景をずっと眺めているのも気まずく思い、私は独り人気のない場所を求めて歩き始める。
すると、校舎裏まで来た所で、私と同じ考えだったのか、見覚えのある姿が階段に座っているを発見する。
「あらっ、あんたも1人なのね。私もちょっと気まずくて抜け出してきちゃった。って…驚いた。泣いてるの?もしかして。」
「っ!?…っせーな。泣いてねーよ、別に。」
仲間を見付けたと思って、私は彼女に話し掛けるのだけど、何故かびっくりように肩を揺らして、メリッサは真っ赤になった目をこちらへ向ける。
「何しに来たんだよ。こんな所に。」
「いやぁ、皆お別れの挨拶とかしてるから気まずいな~って思って、静かな場所に来てみたんだけど、あんたも同じ理由…?じゃ、無さそうね。」
「なんだよ。」
「うーん。卒業する先輩にフラれて泣いていたって訳でも無さそうよね。」
「はっ?ふざけるな。ブッ飛ばすぞ。」
ここには私達以外の姿が見えない事から分かるように、卒業式の日にわざわざ来るような場所ではない。
なら、彼女がどうしてこんなところで1人泣いていたのか、適当に理由を聞いてみるけど、当然そんな理由な訳も無く、メリッサに怒られてしまう。
その後は、私は時間を潰す為だけに来たので、そのままどちらも口を開くこと無く時間だけが過ぎていく。
「………先輩達に挨拶しなくて良いの?」
だが、彼女がここを立ち去る様子も無いので、私はメリッサの隣に座ってそう問いかける。
何だかんだで、彼女は初等部からこの学校に通っているので、知り合いも多いだろうが、私は彼女が同じ大陸の人と話すのを避けている節があることに気付いていた。
「うるせーな。別にお前に関係ねーだろ。」
「来年も、サク先輩達が卒業するときもそうするつもり?」
「っ……。」
私には、彼女の高等部以前の交遊関係は分からない。
けれど、こうして誰にも知られずひっそりと泣いている姿から、今の先輩達との状態が本意で無いことぐらいは伝わってくる。
「なんであたしにそんな構うんだよ。放っておけよ!!」
大声を出してそんな風に私を睨み付ける姿も、サク先輩からの話を聞いた後だと、不思議と怖くない。
「あなたの言う通りに放って置いても良いんだけど、受けた恩を返さないのも気に食わないから、1回だけ言うわ。」
「恩って何だよ。あたしは別に…何も…」
そして、年末の頃を思い出しながらの私の前置きに困惑の表情を見せる。
「難しい事は考えなくて良いんじゃない?」
「…っ!?」
そんな彼女に私は、あの日メリッサから言われた言葉を伝える。
「期待に応えられないって自分で思うなら、無理しなくても良いんじゃないの?」
「そんな…こと…分かって…
「分かって無いから、今独りでこうして泣いてるんじゃ無いの?」
今のメリッサは、子どもだ。
先輩達から教わっていた頃から成長出来ずに、体ばかりが大きくなってしまっただけの、只の子どもだ。
「年末に、こう言ってくれてありがとうね。おかげで抱えてた不安を取り除けたわ。けど、あんたは結構プライドだけは高いのね?」
だから、私は彼女に改めてお礼を伝えると、彼女が気付いていない部分への口撃を開始する。
「はぁ?」
すると、彼女は当然反撃の意思を見せて立ち上がるが、私は口撃をやめない。
「だって、人にはああ言ったくせに、自分では出来ないことがあるって認められないから、『自分はまだ本気を出してないだけだ。』みたいな態度で居るんでしょ?」
「んだとぉ?」
「メリッサ、おとなになりなよ?」
「ぶっ殺す!!」
ついにそう言って、私の胸ぐらを掴んでくるけど、それでも私は口撃を続ける。
「へぇ―。こんなことする元気はあるくせに、先輩達に会う勇気は無いのね。元々気弱だったって話はホントだったのね。」
「っおらぁ!!」
「…ぐっ」
それに堪えきれなくなったのか、勢いを付けた拳が胸の下辺りを捉える。




