07 レイナの提案
「突然大声を出してどうしたのよ」
私は、いきなり大きな声を出されてびっくりしてしまい、集中が途切れたことに少し怒りながらレイナに問いかける。
「実はここに来る前に、先輩から『ぼくが直接教えるのはダメだけど、君から魔法を使うときの感覚を教えてあげるのはどうかな?』って言われたの」
「た、確かに!もしかして教えてくれるの!?やっぱり向こうで魔法を使うのと感覚がちがうんだ」
私はレイナの言葉を聞いたとたんに、思わず彼女を押し倒さんばかりに飛びかかってしまった。
「お、落ち着いてレアちゃん。揺さぶらないでぇ~」
「ごめんごめん。そんな抜けがあることに気が付かなかったから、つい興奮しちゃって」
彼女の声を聞いて私は急いで手を離し、早く話してくれと視線で訴える。
「も~。そんな目をしてるけど、試験が終わるまではダメだよ。今感覚の違いをを教えたら、レアちゃんが試験までに無茶をするのが目に見えるもん。だから今日は私と風魔法の練習」
意外と頑固な所があるレイナに、私はどうにか教えて貰えないかと食い下がってみる。
「そう言うレイナも結構無茶してるんじゃないの?じゃなきゃたった1ヶ月そこらでAクラスまでは上がってこれないでしょ」
すると、彼女は歯切れ悪く
「わ、私は先輩が見てくれてるから…」
と言う。
「自分も無茶してるのに私には我慢しろって言うんだぁ」
「別に意地悪で言ってるんじゃないもん!私じゃちょっと、倒れたときの応急処置みたいのが出来ないから…。本当はすぐに教えてあげたいんだけど、ごめんねレアちゃん」
「分かったよ。それじゃあ試験が終わったら絶対に教えてもらうからね」
彼女が本気でそう思っているのが分かるので、私はそう言って大人しく引き下がる。
「うん、約束する。だから今日はよろしくね」
「全く仕方ないなあ」
そう約束して私たちは、試験を無事に終えられるようにと集中し始める。
「普通に風魔法を使うとやっぱりレアちゃんの方が上手だね」
「これぐらいならCクラスの人達でも出来るから、Aクラスの面子を保つならもうちょっと工夫したいんだけどね。せめて氷が出せればなぁ」
「私は風属性しか使えないから分からないんだけど、氷はどの属性から変化させたものなの?」
「実は私向こうに居たときは、6属性とかあまり気にしないで使ってたから、何がどの属性から変化したやつなのかあまり分からないんだよね」
「そうだったの?確かに向こうだとイメージとかで魔法を使うこと多かったもんね。それじゃあ今は…」
「今は授業でそれぞれの属性の特性を聞いて、私なりに向こうで使ってた魔法をこっちの理論に近付けようとはしてるんだけど。この感じだと、6属性以外はもう少し授業を受けないと使えるようにはならないかな」
レイナと話ながら試行錯誤してるうちに、私は少し疲れを感じてきたので、もうそろそろ練習を終わりにしようかと彼女にはなしかけようとしたら、彼女から
「そういえば、レアちゃんは海水浴ってしたことある?」
と聞かれた。
「海水浴?」
「そう。こっちの人たちは、暑い日に海に行って泳いだりして遊ぶらしいんだけど」
「海で泳ぐって…。あんな魔物が居るところで、近付くだけでも危ないのに」
「やっぱりレアちゃんもそう思うよね。私も最初先輩から聞いたときはびっくりしたの」
「それで、その海水浴がどうしたの?」
「別に泳がなくてもいいんだけど、試験が終わったら皆で息抜きに行ってみない?こっちの方では魔物が少ないから、私達が思っているよりも安全なんだって」
レイナが、先輩からどういう風に聞いたのか分からないが、私には、海は魔物がいっぱいで危険だというイメージしか無いので、海水浴と言うものに不安しか感じなかった。
しかし、せっかく嬉しそうな彼女の提案を自分の気持ちだけで断るのは申し訳ないので、私は一旦サヤカ達にも海水浴の事を聞いてみて、そこで行くかどうかを決めようとレイナに言ってその日は解散した。