85 2月14日 前編
「上手に出来てるかな?」
私は今日、レイナと一緒にアップルパイを作っていた。
私達が、なんでいきなりそんなことをしてるのか。
それは、スイネグ先輩から聞いた、『2/14にチョコレート?だとかお菓子を、想い人やら家族やらに贈る風習があるらしい。』と言う話を、皆の前で話したのがきっかけだった。
その話を聞いてしばらく、レイナはなにやら悩んでたようだったのだけど、今日の朝、突然『レアちゃん!助けて!!』と言ってきたのだ。
私は最初、何事かと思ったのだけど、どうやら街でチョコレートなるものが見付からず、代わりに贈るなら何が良いのかも分からず、私に相談しに来たと言う訳だ。
けれど、私も別にその風習に詳しい訳でも無く、街でお菓子を買うには高価過ぎるので、結局自分達でお菓子を作ろうと言うことになったのだ。
そして今しがた、複数人に渡せるもの、料理をあまりしたことの無いレイナでも作れる物、として条件を満たしたアップルパイを作り終えたところだった。
「それじゃ、渡しに行くのね。」
「うん。けど、レアちゃんも一緒にだよ?」
「あんたまさか、最初からそのつもりで…。」
「え…えへへ…。」
「やけに2人で作ることにこだわると思ったら…。」
なんてやり取りがありつつ、私達はアップルパイを渡す相手を探しに行くことにする。
まずは、試験が終わってのんびりしてるであろう、サヤカとメリッサの所へ向かう。
「わ、思ったより残ってるね。」
教室には、サヤカ達以外にも寮に戻らずお話しをしている人達が、ちらほらと居るようだった。
「せっかく2.4年生が校外学習なのに。」
「あと1ヶ月半で、このクラスも終わりだからね。皆同じクラスになれたらいいんだけどな。」
「だったら、治癒魔法の練習やめればいいんじゃねぇの?」
「で、出来ないよ!?そんなこと!」
「お帰り、2人とも。」
中に入ると、サヤカ達もすぐに気付いたようで、私達も彼女達の周りの席に適当に腰かける。
ちなみに、この前今年度最後の試験があったわけなのだが、そこで私はサヤカと練習した甲斐もあって、無事レイナに実技テストでリベンジを果たしていた。
「お、意外と旨そうじゃねえか。」
「初めてにしては上出来。」
「そう言えば、ここにいる人はレイナ以外料理出来るのよね。」
「う…うぅー。」
意外なことに、このメンバーの中で料理をしたことが無いのは、レイナだけであった。
それでも、皆からアップルパイを『美味しい』と言って貰えた事で安心したのか、少し4人で話したあと、ようやく本来の目的、3年生の先輩達の所へ向かうことになる。
「おや、2人で来るなんて珍しいね。どうしたんだい?」
「あ、あの…これ、今日は感謝を伝える日だって…それで…」
「あぁ、そう言うことか。スイネグから聞いたのかな?」
「あの…いつもありがとうございます!!」
「私も、一応…ありがとうございます。」
私自身は、サク先輩と顔を合わせるのは久し振りで少し気まずかったのだけど、彼はそんなことを全く気にして無いようで、嬉しそうにレイナからの贈り物を受け取る。
「アップルパイか。」
「は、はい!あの…レアちゃんに教えてもらいながら…」
「うん、上手に焼けてるね。2人ともありがとう。ちなみに、パイにした理由って何かあるのかい?」
「えっと、レイナでも簡単に作れそうかなって思ったので。」
「そっか…。じゃあ、皆で一緒に食べないかい?」
包みを開けて中身を確認すると、先輩は少し考える素振りを見せると、そう提案する。
私は最初、断ろうとしたのだけど『せっかく持ってきてくれたのに、1人で全部食べてしまうのは勿体無いからね。』とか、『レアちゃん、お願いー。』なんて言われたら断りきるのも難しく、結局サク先輩が用意してる場面を眺める事になる。
「それにしても、あーちゃんとこうして話すのは随分久し振りな気がするね。どうだい?スイネグ達とは上手くやれてるかな?」
「は、はい。今のところは…。」
「良かった。2人ともなかなか癖が強いからね。紹介した手前、心配ではあったんだよ。」
「………そうですか。」
「けど、その贈り物を見る限り、どうやら杞憂ですみそうだね。」
「うっ…まぁ、はい。お世話になってるので…。」
パイの切り分けが終わると、普段からレイナとは会っているからなのか、サク先輩は主に私の方へ会話を振ってくる。
その際に、色々と突っ込みたい所はあったけども、私の持ち物にも目敏く気付いても、そう軽く触れるだけで済ませてくれる辺り、あのおしゃべりな先輩よりはましなのかもしれない。




