75 2学期終了
「先輩達会えなかったねー。」
終業式も終わり、2学期最後のホームルームの後、私とレイナは先輩達にお世話になったので、挨拶だけでもと思ったのだけど、なにやら3年生は終業式の後もやることがいっぱいのようで、スイネグ先輩達も教室には居ないようだった。
このままそこで待っていても、会えるか分からないので、ひとまずサヤカ達が待っているAクラスの教室へ戻ることにする。
「忙しいなら仕方無いわね。」
「うーん、残念。色々と教えてもらったからお礼言いたかったんだけどなぁ。」
「そうねぇ。私も先輩達と会っていなかったら、校外学習を無事乗り越えられたか分からないし、そう言う意味ではあなたにも感謝ね。ありがとう、レイナ。」
「えっ、えぇ!?わ、私何もしてないよ!レアちゃん!?」
教室に戻る途中で、私がそう言うとレイナは驚いた声をあげるけど、これは紛れもない私の本心だった。
「だって、先輩達に会ってなかったら、きっとあの熊に私は殺されてたわ。」
「そ、そんなこと無いよ!だって、レアちゃんとサヤカちゃんの2人で倒せたんでしょ?」
「運が良かったからよ。それも、スイネグ先輩から貰ったこれがあってこそだしね。」
そう、今までも何度か、先輩達に会わなかったらどうなっていたのか。
考えられるだけでも、私が乗り越えるのが困難だったと思われる状況が幾つも思い浮かぶ。
例え、それらの障害をどうにか取り除けたとして、今回の班で森へ行くことは変わらなかっただろう。
そして、同じように熊と出会ったとして、発動できる魔術の威力は、恐らく今の私とそう変わらないと予測できる。
だが、その力を発揮できる場所が限られているうえに、その場所を探す為の道具、つまりは魔力針を持っていなければ、結局は森の外へ逃げる途中で熊にやられてしまっていただろう。
それを思うと、今私がこうしていられるのも、目の前の彼女が繋いでくれた縁のおかげなのだとも言えるだろう。
だからこそ、私はレイナを抱き締めて、もう一度しっかりと彼女へ感謝の気持ちを伝えるの。
「ありがとね。レイナ。」
「おっ、戻ってきたか。ん、どしたんだ?そいつは。」
そうして私達はサヤカ達が待つ教室へ戻ってくるのだけど、レイナが『わひゃうっ?!』と言ったきり『あぅ…あぅ…。』としか言わなくなってしまったので、仕方無く彼女の手を引きながら歩いていた。
そんな状態のレイナを見たメリッサが不思議そうな顔をするが、レイナは皆が居るところに戻ってきてようやく我に返ったのか『な、何でもないよっ。』と言って、この後の予定について話し始めるのだった。
「うーっす。帰ったぞーって…おぉー、旨そうだなー!」
あの後私達は、早い時間に学校が終わったので、すぐには寮に行かず街でぶらぶらとしていたのだけど、途中でサヤカが『わたしはやることがある。皆はご飯食べないで帰ってきて。』と言うので、彼女から数時間ほど遅れて学校に帰ってきたのだが、サヤカ達の部屋の扉を開けると、そこには彩り豊かな料理達がテーブルにいっぱいの光景が広がっていた。
「ん…。用意間に合った。皆、ナイスタイミング。」
「お、お邪魔しま~す。メリッサちゃん、大きな声出してどおしたの?って、わぁ。すごく良いにおいがするよ。」
「私もお邪魔するわ。…なんか随分と豪華な食事が並んでるわね。」
私やレイナだけでなく、メリッサも目の前の光景に驚いている様子からして、彼女もこの事を知らされていなかったのだろう。
「これ、すごい美味しそうなお料理だけど、1人で街から運ぶの大変じゃなかった?」
「ん、平気。全部手作り。材料も食堂で貰ったので足りたから。」
「意外ね。あなたちゃんと料理出来たのね。」
しかも、どうやらこの料理達はサヤカの手作りらしい。
わざわざこの日の為に、前もって食堂の人に声をかけたりして準備していたのだとか。
そして、私達が料理の出来ぐあいに驚くばかりで、彼女の手作りと言う事実をいまいち飲み込みきれていない様子に、不満気な表情を見せる。
「失礼な。何でわたしが料理が下手だと?」
「そりゃあ、いつもお昼にでっかいおにぎりしか持ってこないから、てっきり。」
「お米だって美味しい。」
「だからってそれだけなのは…。」
「そう言えばたまに弁当とか作ってたな、こいつ。」
「そうだったのね。」
サヤカは頬を膨らませながらそう抗議するけど、今までちゃんと料理してるところを見たことが無かったのだから、私達がそう思うのも仕方無いだろう。
更に、お昼がいつもおにぎりだった理由には、さすがのレイナも呆れた顔をしてしまう。
何はともあれ、せっかく私達も帰ってきたので、残りの準備を手伝ってやり夕食の用意を整えていく。
「それじゃあまぁ、年越しには少し早いけど…今年は皆お疲れ様!来年もまたよろしくね!!と言うことで…
「「「「かんぱーい!!!!」」」」
そして、何故か私が乾杯の音頭をとっての食事会が始まるのだった。




