72 皆で街へ
「そっか。メリッサちゃんって、今回が初めてだったんだ。」
今日私達は、街にいつもの4人で遊びに来ていた。
「かぁ~、レイナですら経験があるって、なんか負けた気分になるなー。」
「え、わ、私だけ!?」
「くっそー。ムカつくぜ。お子さま扱いしやがって。」
「ム、ムカつくってなんで?それに、お子さま扱いなんて、そんな…。」
校外学習も終わり、久し振りに皆で集まれそうとなので、喫茶店でのんびりしようという筈だったのに、どうしてこんなことに!?
「ごちそうさまでした。うーん、この後は何しようかな。」
休日のある日、私は朝食を食べ終えると、そう呟いて席に着いたままボーッとしていた。
というのも、昨日別れ際サク先輩に『試験も終わったんだし、息抜きも必要だよ。明日はぼくのところに来なくて大丈夫だよ。』なんていきなり言われたので、最近は先輩に魔法を教わったり、一緒に出掛ける事が多かった私は、突然1人になってどうやって息抜きをすれば良いのか悩んでいたのだ。
そのまましばらくやりたいことを考えていると、後ろから『あら、レイナ。もしかしてあんたも暇なの?』と声をかけられる。
半ば上の空でいたので、気のせいかと思ったけど、私の名前を呼んでいた気がしたので振り返ってみると、そこには見慣れた顔が並んでいた。
私がどうしたのと聞くと、レアちゃんに『それはこっちの台詞よ。』と言われてしまう。
話を聞いてみると、どうやらレアちゃんもスイネグ先輩に同じようなことを言われたみたいで、サヤカちゃんを訓練所に誘おうとしたところを、反対にそれを聞き付けたメリッサちゃんに、街へ遊びに行こうと誘われたらしかった。
それで、3人で出掛ける準備をしていたところ、珍しく私がまだ1人で座っていたので声を掛けに来たらしい。
『それで、どうする?あんたも来る?』なんて言われたら、私の返事は『もちろん!!すぐに用意するから待っていて!』しか無かった。
「またずいぶんと久々じゃねぇーか?こうして皆で街に来るのは。」
そんなことがあって、私達はしばらく街を回った後、ある喫茶店でひと休みしていた。
「そうだねー。皆いつも用事あったもんねー。」
「まぁ、こいつは休日暇になってたのを隠してたけどな。」
「別に暇な訳じゃ無いけど。」
「遊ぶ時間ぐらいはあるだろ?」
「まぁまぁ、最近は良く2人で出掛けてたんでしょ?」
お店に入ると、メリッサちゃんがしばらく皆と遊べていなかった事に、愚痴を言い始めるので、それをレアちゃんが宥めている。
サヤカちゃんは、何時もの事だとでも言うように、軽く受け流しているけど、私も巻き込まれないようにと、静かにカップを傾ける。
「で、どうだったんだ?お前らの班は。」
「どうって?」
「おいおいおい、お前らだって魔物と戦ったんだろ?それともまさか、採集依頼だけしか受けてないとかじゃ無いよな!?」
「採取も討伐もやってたけど、なんであんたはそんなに興奮してるのよ。」
しばらくすると、自然と話題がこの前の校外学習の話に移って行くけど、メリッサちゃんはなにやら興奮を隠せない様子で話し始める。
私がメリッサちゃんのそんな様子を不思議に思っていると、『あー、そう言えば、あたし以外は全員そういうの経験したことある奴ばっかりだったか。』と、突然一人で納得したように頷く。
「そっか、メリッサちゃんって今回が初めてだったんだ。」
そうして話は最初の場面へと戻っていく。
「まぁ、これだけしっかりと守られてるなら、遭遇する機会なんてこういう時しか無さそうよね。」
「あぁ、そうだな。マジで今回の校外学習、楽しみにしてる奴は多かっただろうな。」
「実力を見誤った人も居たみたいだけど…。」
「うん…。やっぱり遠くの方まで無理しちゃってる班は、信号弾を上げてくれても、すぐには向かえなかったね…。」
メリッサちゃんは、校外学習で魔物と戦えた事が新鮮だったんだろう。
嬉しそうにあの日の話をしてるけど、私は間に合わなかった現場を思い出して少し憂鬱な気持ちになる。
「その辺りはサヤカの言う通り、自分達の判断とか運とか含めて、自己責任の領域じゃない?あんたが気に病むことじゃ無いわよ。」
「分かってはいるんだけどね…。」
「そう言えば、セイラ先輩も救助隊だったのね。あの時信号弾を上げてすぐに走ってきて、びっくりしたのよね。」
そんな私の事を気遣ってか、それとも純粋に気になっていたのか、レアちゃんがそう話し始めて、話題がセイラ先輩の事へと移っていくのだった。




