70 これで…終わり…?
「こ、今度こそ…やった……?」
もうもうと土煙が立ち込める中、私は肩で息をしながらそう呟く。
「凄い…爆発だった…。」
同じように疲れた表情をしたサヤカも、何かを呟いてさっきまで熊が立っていた場所へ目を向ける。
「なっ!?」
「そ、そんな…。」
彼女が驚いたような声を出したので、私も思わず顔を上げる。
すると、煙の向こうから黒い影がこちらへ近付いてくるのが分かる。
「う…嘘でしょ…?」
そして、疲れと驚きで動けずにいる私の頭上から、熊の手が振り下ろされるのを眺めていると、『レアっ!』と言う声と共にサヤカが私を抱え、横に転がるのを感じる。
そこで、私もハッと我に返り即座に体勢を立て直そうとするが、ズズン…という音の後に不自然なほどの静けさが広がる。
「………死んでる…?」
私はこれ以上追撃を喰らわないように、離れて熊の様子を見ていたが、煙が晴れた後も動く様子の無い熊に、サヤカがそう呟やいて近付いていく。
「どうやらさっきのは、ただ倒れてきただけだったみたいね。」
「うん、衝撃で気絶してるわけでも無さそう。」
「そうね。ここまで派手にやるつもりはつもりは無かったんだけど。うぅ…剣、ボロボロにしちゃってごめんね。」
「ん、良いよ。……よいしょっ。………まだ直せる範囲…かな?」
そのまま高威力の魔術を当てるだけでは、熊の高い魔力耐性に、攻撃を耐えきられる可能性があると考えた私は、体に突き刺した剣を伝導体に、熊の体内に直接ダメージを与えようとしたのだけど、どうやらサヤカの剣が私の思っていた物とは少し造りが違ったみたいで、魔術が柄の部分に触れた瞬間大爆発を起こしたようだった。
彼女の掛け声と共に、熊の体からズルリと引き出されたそれは、刀身はぬらぬらとどす黒い赤に染まり、柄の部分もボロボロであったが、サヤカはそう言うとビュンと首の辺りに一振りし、何時ものように腰へ剣を差し込む。
そうして、完全に熊が絶命したのを確認すると、私は安心すると同時に全身の力を抜いてドサッと地面に座り込む。
「レア…?」
その音を聞いて、サヤカが心配そうにこちらを振り向くが、私は軽く手を振って大丈夫だとアピールする。
「ようやく終わったのね。」
「うん。なんとかなったみたい。お疲れ様、レア。」
「あんたもね。それで、この後はどうしよっか。一応動けないことは無いけど、救難信号出しておく?」
「そうだね。」
サヤカも周りに敵が居ないのを確認したのか警戒を解き、私達はお互いを労い合う。
そのついでに、休憩した後の行動を決めようとしたのだけど、サヤカは私の提案を聞くや否や、そう言って信号弾を打ち上げる。
「ちょっ…サヤカ…!?」
「どうしたの?」
「打つのが早いと言うか、なんと言うか…。」
「別に、わたしが打たなくても、賛成したらレアも打つつもりだったでしょ?」
「それはそうだけど…。…はぁ、ありがとうね…サヤカ。」
恐らく彼女も、私がリタイアの意味ではなく、この熊の事を報告するために救難信号を上げようとしていることは想像がついてるのだろう。
けれども、救助隊の人達にその意図が伝わるかは分からない。
だから、1度サヤカに確認をしたら私が信号弾を打ち上げようと、腰の辺りを探っていたのだけど、サヤカはそんな私の考えも読んで、班長として先に信号弾を上げてくれたのだろう。
私はその優しさに、それ以上は何も言わずに、ただ感謝を告げる。
そして、信号弾を上げてから数分後、少し遠くの方から『……ぁぁあーーーちゃーーん!!!』と言う声が聞こえてくる。
「もうきた!?」
「ちょっと早すぎない?」
救助隊は上級生がメンバーに多いとはいえ、何故こんなにも早くあの先輩の姿が見えるのだろう。
「助けに来たわよー!私が来たからには安心しなさい!!って…あれ?もう終わってるの?」
「おい、1人で突っ走るなと何度言えば…。」
「はぁ…ふぅ…。ま、待ってください…。あっ、本当にレアちゃん達だ。」
1人先陣を切って走ってきたセイラ先輩に続き、スイネグ先輩、レイナと見知った顔と他数名、上級生らしい人達が到着する。
お互いに聞きたいことは色々とあったけれども、ひとまず救助隊に状況を簡単に説明すると、私達は彼らと一緒に学校へと帰るのだった。




