60 わ、私が…?
「アイスバレット!!」
「良くやった、ワタリ!いくぞ、お前ら!」
「てやっ!」
「たぁ!」
森の中に入って数時間、私達はそこそこ順調に探索を続けていた。
今も小型の魔物をサヤカが発見し、ワタリが牽制、そこにリュウレンが畳み掛け、最後にカツミとサヤカが魔物を前後から挟み込みとどめを刺す。
「……よし、燃やし終わったよ☆てか、ウチももう少し魔物と戦ってみたいんですけど。」
「そうは言っても、君が使えるのは火属性だろ?戦闘中に飛び火したら面倒だからね。」
「もぉ、そんなに不器用じゃないよ?」
「ちょうど良い場所があるし、処理が済んだならあそこで休憩する?」
「ちっ…」
私達は危なげなく魔物を倒したが、またしても戦闘に参加できず、後処理だけを任されたフレアが不満そうにしている。
カツミが彼女に森の中だからと、我慢するように呼び掛けているが、私はその様子を尻目に、少し開けた場所を見付けたのでひとまず休憩を提案するが、リュウレンから舌打ちをされてしまう。
こいつが私に当たりが強いのは珍しい事では無いけど、ここまで露骨に不機嫌な事を隠そうとしないのには、こういう経緯があった。
「おい!いい加減にしろっ!!何でいちいちお前が指示を出してるんだ!!」
それは、私が3回目ぐらいの休憩を提案したときだった。
私達は森に入ると、基本的には縦1列、先頭からサヤカ、ワタリ、真ん中に私とフレア、そして後方にカツミとリュウレンと言った順で並んで行動をしていた。
最初は基本に則ってサブリーダーのリュウレンが先頭、リーダーのサヤカが最後尾の予定だったのだが、サヤカがはぐれると最後尾だと魔法が使えずに誰も気付かない可能性があると言うことで順番を入れ替えたのだ。
ちなみに、2回目の休憩のタイミングで私とワタリの位置も入れ替わっている。
私は、森に入ってからちょうど良さそうな開けた場所を見付けると、時々、他に提案する人も居ないので、『そこで少し休まない?』と声をかけていた。
リュウレンは、まだ休憩は必要無いと突っぱねようとするが、サヤカは『良いよ。それじゃあ、私ともう1人周りを警戒して。』と、提案を受け入れてくれる。
それが気に入らなかったのか、何回か同じことを繰り返したところで、リュウレンが先程のように大声を出したのだ。
「指示って…。私は別に、提案をしてるだけで、従ってくれなんて言ってないわよ?」
「だから、それがうざってえんだよ。まだ森に入って大して時間も経ってねぇのに、こんなに何回も休憩してちゃ、あっという間に日が暮れちまうぞ!?」
「まぁまぁ、落ち着いてよレンレン。」
森に入ってからしばらく経ち、私達は依頼にあったものを幾つか採集出来てるとは言え、魔物にはまだ遭遇すらしていなかった。
他のメンバーはともかく、彼はこの校外学習で最高点を目指しているので、まだ1体も討伐出来てないことに焦りを感じるのは理解出来るのだが…
「それに、さっきから休憩休憩うるせえけど、疲れてるやつなんか誰も居ねえじゃねぇか!それとも、お前が置いてかれたくないからそう言ってるのか!?」
「違うわよ。初めて来る場所なんだから、次に何時休めるかなんて分からないでしょ?だから一応聞いてるのよ。」
実際、彼の言う通りまだほとんど歩いてるだけなのだから、疲れている人は居ないだろう。
けれど、私が休憩を提案している理由はもう1つある。
「それに、疲れるまで行動して、いざって言う時に動けなくなったらどうするのよ。」
「だとしても、わざわざお前が言うんじゃなくて、先頭に居るサヤカに任せろよ!」
「わたしの事呼んだ?」
その理由を説明していると、周りの様子を見終わったサヤカとワタリが帰ってくる。
自分の名前が聞こえたことで、こちらの方に来たサヤカに、私は事情を説明する。
「そう…。だったら、休憩のタイミングはレアに任せる。それでいい?リュウレン。」
「なっ…」
「えっと…私が決めるの?」
「そう。レアの言ってることは正しい。だから任せる。」
「そんな…正しいなんて…。」
私とリュウレンの話を聞くと、サヤカは少し考え込み、こう結論を出した。
それを聞いて、リュウレンは驚いた顔をしているが、私も同じ気持ちだ。
「このメンバーなら、レアが適任。」
「こう言うのって経験が多い人、それこそサヤカとかカツミが指示した方が良いんじゃないの?」
「わたしは皆がどれくらいで疲れるのか分からない。多分カツミも同じ。だから、レアにお願いしたい。」
本当に自分がその役割を担って良いのか不安があったけど、ここで駄々を捏ねて時間を無駄にする訳にもいかないので、私は皆に確認をする。
「私は…あなたが言うならやるけど、皆はそれで良いの?」
「もち☆リーダーがそう言ってるなら従うよ♪」
「ボクも同意見ですね。」
「自分も異論は無いです。」
「リュウレンは?」
「…ちっ。それで文句ねぇよ。」
「………分かった。それじゃあ、その役目…引き受けるわ。」
「うん。」
皆が口々に答えるなか、サヤカに促されつつも、最終的にリュウレンも同意の意を示したので、ここで私に正式な役割が与えられたのだった。




