57 魔力針
「この『魔力針』、3本も針が付いてるんですね。」
私は、スイネグ先輩の腕についてる魔道具、『魔力針』を近くで見せてもらうと、そんな感想を漏らす。
「そうだな。一応元の状態から見た目はほぼ変わってないが、使えそうな部品はそれぞれに改造して魔道具にしている。」
「えっ、元々こう言う見た目の道具があったんですか?」
「確か遠くの大陸にある『腕時計』って言うのよね?」
「ニューホーン大陸の機械で、時計を携帯出来るぐらいに小型化したものだ。」
どうやらこの魔道具は、あまりにも交流が少ない為、幻の大陸とも呼ばれてるニューホーン大陸にある、『腕時計』と言う道具を改造して作られた物らしい。
以前にスイネグ先輩が、偶々2個だけ入手することが出来たらしいのだが、1つだけ分解したら構造が複雑すぎて、こちらの時間に合わせることも出来なくてそのまま放置していたそうだ。
「この長針が今のところはもう1つの魔力針、短針が加工した魔石、後は一応この細い針が、周辺に魔素濃度が濃い場所がある時に、反応してそちらを向くようになっている。」
「これ、けっこう使うの難しそうですね。」
「いや、そうでもない。基本的には何も操作をしなくて良いように設計したからな。」
スイネグ先輩が、魔道具の仕組みを説明してくれたけど、私にはこれを使いこなすのは難しそうだった。
と言うか、魔道具を作ったり、それに合わせて魔石を加工したりと、本当にこの人は私と2年しか生きてる時間が変わらないのだろうかと疑いたくなる。
「その設計もね~、文化祭が終わってそんなに経ってない時に、あーちゃんと楽しそうにお喋りしてたかと思ったら、いきなり私にも協力しろとか言ってきてびっくりしたのよね。」
「えっ!?これって、そんな最近に作られたんですか??」
「そうよー。あーちゃんが文化祭の日の噂について聞いてきたと思ったら、2人で難しそうな話を始めて、つまらないわーって思ってたらあれよあれよあれよと言う間に。」
私はセイラ先輩の話を聞くと、文化祭が終わり、後夜祭は皆と参加したいと思っていたら、レアちゃんの姿が見当たらず、メリッサちゃんに文化祭で姿を消した人がその後どうなったのかを聞いても答えをはぐらかされて、とっても心配したことを思い出す。
「レアちゃん…文化祭が終わった後、噂の事を調べてたのかな?レアちゃんらしいけども…。」
「なんにせよ、あいつの持ってきた情報が役に立ったのは確かだな。」
「そんなつれない言い方して…2人であーでもないこーでもないって、言い合いながらそれを作ってたじゃない。」
「ふぇぇ~。れ、レアちゃん…本当に何してるの!?」
「子どもの喧嘩みたいなものだから心配しなくて大丈夫よ。本当にスイネグは良い助手を貰ったわね。あっ、助手と言えば、この前あーちゃんに紹介された子はどうだったの?」
レアちゃんの行動力にはよく驚かされるけど、す、スイネグ先輩と言い合いなんて、私はあの目に睨まれただけで怖いのに、レアちゃんに恐れる心は無いのだろうか。
セイラ先輩は子どもの喧嘩って言うけど、私がスイネグ先輩と喧嘩しようとしたら、延々と正論を繰り出されて何も言えなくなっている姿しか思い浮かばない。
それと、レアちゃんが紹介した人というのは、ワタリ君の事だろうか。
確か、同じ班になった人で、話していると少し気になるところはあるけれど、優秀そうだから紹介したって言ってた気がする。
「どうだったの?と聞かれても、特に興味がなかったから何もしてないが。」
「えぇー!せっかくあーちゃんから紹介されたのに!?よく第一訓練所に居る青髪の子って言ってたわよ?」
「第一にはたまに行ってるが、俺の記憶に残って無いなら大したこと無いんだろう。」
けれど、どうやらスイネグ先輩からの印象はそんなに良くない、と言うか気にしてすらいなさそうだった。
レアちゃんと同じで魔術を使えるとも聞いてたのにいったいどうしてなんだろう。
私がそんなことを考えていると、セイラ先輩がその疑問をスイネグ先輩にぶつけてくれる。
「あら、そうなの?ここの大陸出身だから、今のあーちゃんよりも上手に魔術を使えるらしいけど。それに、Aクラスの中でも魔法の知識はトップクラスだとも言ってたわよ?」
「はぁ、お前には何回この説明しなければいけないんだ?俺は別に魔術が使える奴が助手に欲しい訳じゃない。後、ベネウッド大陸出身の奴から、今更俺が欲しい情報なんか出てこないだろう。ただ俺の言うことを聞くだけの奴は欲しいとは思わん。」
「ふーん、そっかー、なるほどね~。」
けれど、スイネグ先輩はその意見を不機嫌そうに一蹴する。
だと言うのに、セイラ先輩は何故かニヤニヤとした顔で、納得した素振りを見せる。
「さて、じゃあそろそろ休憩も終わりにして作業を再開するかい?いやぁ、この書類の山を見ると、ぼくは救護班で良かったとつくづく思うよ。」
「あら、下級生の面倒を見ながら救護班の仕事をするのも大変じゃないの?」
「うぅ、ご迷惑をおかけします…。」
「あっはっは!全然気にしなくて大丈夫だよ。試験の日まで、一緒に頑張ろうね。」
「は、はい!頑張ります!!」
そして、最後にサク先輩が休憩の終わりを告げると、私達は気合いを入れ直して、目の前にある書類の山を崩しにかかるのだった。




