04 焦りの理由
「おはよーう、レアちゃん」
「おはようレイナ」
「休んでたわりに元気そうだね。もうすぐテストだけど大丈夫なの?」
教室に入るなり、レイナが大きな声で私に挨拶をしてくる。
彼女は、私と同じアリアス大陸出身なのだが、こちらの大陸に来てから才能を開花させ、入学から僅か1ヶ月で進級を待たずしてAクラスに移動してきた。
出身地同じと言うこともあって、私はよく彼女に、魔力に関してのアドバイスを貰っていた。
「実は、実技のために頑張ろうとしたら、無理し過ぎちゃったみたいで倒れちゃったのよね」
「大変!頭打ったりとかしなかった?怪我が無いか診てあげるね」
「心配しないで。元気になったからこうして授業に出てるわけだし」
「はいはい。レアちゃんの言うことがあてにならないのは知ってるよ。簡単に診察しちゃうからね」
レイナはそう言うと、私の言葉を無視して私の体を見始める。
彼女は元々は風魔法が得意だったのだが、この大陸に来てから簡単な治癒魔法も使えるようになっていた。
「先輩に風魔法が得意な人が居て、その人にこういう使い方を教わったんだぁ」
なんてレイナは言っていたが、だからと言ってそんなに早く、クラスが変わるほど上達するものなのだろうか。
「こっちでの魔法の使い方の方が私の性に合ってたみたい」
とか、そんな理由で新しく魔法を覚えられたら誰も苦労はしない。きっと、彼女自身の才能も合わさってこの結果が生まれたのだろう。
「うんっ。怪我は無し!バッチリ健康体だね」
「だから平気だって言ったでしょう」
朝からそんなやり取りを終えると、授業が始まり、あっという間にお昼になる。
昼食の席では、レイナ以外の友人からも休んでいた理由を聞かれるが、同じように答えていく。
誰からもリュウレンを事を聞かれない辺り、あいつも他の人には、知られたくなかったのだろう。
あの出来事を言いふらされる事が無さそうで少しほっとしていると
「それにしても、アルトレアがテストにびびって故郷に逃げ帰ったなんて噂が出たときはびっくりしたよ」
と、聞き捨てなら無い言葉が出てきた。
「ちょ、ちょっとメリッサちゃん。それは…」
と、レイナが止めようとするが
「別に遅かれ早かれ本人の耳に届くんだからいいだろ」
と言われてしまう。
「レアは逃げない。強い子だから」
それまで無言で会話を聞いていたサヤカは、一言それだけを言って、再び手に持ったバーガーに大きな口でかぶり付き始める。
「別に言われるのはかまわないんだけど、誰がそんなこと言ってたの。まさかリュウレンとか?」
「ううん。リュウレンくんはむしろ学校に残ってるだろって言ってたよ」
「へぇ」
私は、リュウレンが事実を知っているとはいえ、わざわざ噂を否定してくれていたことに驚く。
「リュウレンは、『あいつがテストぐらいでびびるなら最初の時に恥ずかしくて帰ってるだろ』って言ってたよ」
「はぁ~。珍しい事があるって感心してたのに結局あいつはそう言うやつだよね」
「リュウレンくん、どうしてレアにちゃんに意地悪ばかり言うんだろうね。こんなに頑張っているのに」
「向こうに居たときと同じように魔法が使えたらいいんだけどね」
そんな話をしているうちにお昼の時間は過ぎていく。
そして、私は憂鬱な気分になりながら、午後からの実技の授業の用意を始める。