54 あれってもしかして?
「森の中でも使えそうな水魔法と、試験の日までに何か新しく覚えられそうな魔法が無いか確認してたんですよ」
ワタリは、フレアに突然話を遮られた訳なのだが、特に怒ることもなく返事をしてるところを見るに、こう言うことは良くあるのだろう。
さすがにこの状況で、彼女を無視するわけにはいかないので、私はさっき彼が何を言いかけたのか聞くのを諦めて、2人の会話に耳を傾ける。
「ワタリは真面目だねぇ~。いつも使ってる魔法だけじゃだめなの?」
「森の中だから、姉さんが考え無しに撃つ炎魔法にも対処出来るようにしとかないといけないんだよ。」
「ちょっと!ウチが山火事でも起こすとでも思ってそうな言い方じゃん!」
「起こしそうだから釘を刺してるんだよ。」
確か自己紹介の時に、フレアは炎、ワタリは水魔法が得意だと言ってたが、もしかしてワタリが水属性が得意なのは、彼女の影響もあるのかも知れない。
とまぁ、そんなことは置いといて、ワタリがどれくらいフレアの魔法に対処出来るか試したいとのことで、私とサヤカはせっかくだからと、魔力操作の練習をしながら、その様子を見学させてもらう。
「それじゃあ、いくよーっ☆ブレットファイア!!」
「…4、5、6、7…多いな。アクアバレット!」
「おぉっ?詠唱破棄して対処された!?」
「これぐらいなら余裕だよ。」
「なら、フレイムショット!」
「我を守り、敵を欺け…ウォーターベール!」
早速とばかりにフレアが激しい攻撃を仕掛け、それをワタリが防いでいく。
その様子からも分かるように、フレアは攻撃特化の魔法、ワタリは防御に特化した魔法を得意としているようだが、私はそれを見ているとあることに気付く。
「ざんねーん、全部防がれちゃったか☆」
「危ないなぁ。どうして姉さんの魔法は、いつも威力に全振りなんだ。」
「ワタリももう少し威力のある魔法を使ってみたら?」
「ボクもちょうどそれについて悩んでたんだ。水属性だから、姉さんの魔法を抑え込むのは簡単なんだけど、魔物に対して有効な魔法があまり無くてね。」
「な、なんだとーっ!?ウチの全力の攻撃を受けて、もう一度同じことを言ってみろー!!」
最終的に、ワタリがフレアの魔法をほとんど相殺したところで、一旦練習を終えるのだが、彼の一人言なのか分からない呟きにフレアが怒り出す。
私とサヤカは、辺りが火の海になったら大変だと、慌てて彼女を止めに入りつつ、ワタリの魔法について気になった事を尋ねてみる。
「ねぇ、ワタリは水属性の魔法しか使えないの?」
「そうですけど、それが何か?別に複数属性が使えるからって、それが優秀さの証明にはならないですよ?」
「それはそうなんだけど…、ちょっと気になった事があって…。」
「気になったこと?」
ワタリは、私に指摘されたことと内容のどちらにも嫌気が差したのだろう、ムッとした様子で返事をする。
私だって、魔法で2属性使うのが大変なのは分かってる。
ただ、さっき彼がフレアと魔法を撃ち合っているのを見て思ったのだ。
「ワタリが使っているのは、魔法じゃなくて魔術じゃない?」
「何ですかそれは。急に変なことを聞きますね。」
「あ、えっと、そうよね。私と同じ魔法の使い方をしてるって思って…」
「貴女と同じ…ですか?」
「うーん、先輩の言葉を借りると、アリアス的な魔法って言うと何となく伝わるかしら。」
そう、彼が使っていたのは恐らく魔術だった。
それならば、魔法と違って私から教えられることもあるかと思ったのだけど、まずはその2つの違いをどう説明するかが問題だ。
「成る程、ボクの父はアリアス出身だし、ボク自身も父から魔法を習っていたから、特徴が出てしまうのも理解はできます。しかし何でそれが気になったのですか?」
「そうね、もしかしたらなんだけど、魔物に有効な魔法を覚えられるかもって…」
「試験まであと1ヶ月も無いのに、そんな曖昧な理由で時間を無駄にしたくないんですけどね。」
けれど、ワタリは魔法と魔術の違いに心当りがあったのか、思っていたよりも早くその事に理解を示す。
そして、そんな風に憎まれ口を叩きながらも、私の言うことを実践しようとする気持ちはあるようで『それで?何を教えてくれるんですか?』と、教わる準備は万端のようだった。




