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オルタナ外伝ーアルトレア物語ー  作者: 絃芽こう
1学年 新しい学校生活

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49 ここに来た理由

「ふぅ、終わったわよ。どう?少しは楽になった?」


私は、魔力を回路に流し終えると、そう言ってリュウレンの手を離す。


「はぁ、一応少しは魔力操作出来るようになってんだな。…さっきまでよりはマシになった。」

「そ、なら良かった。」


上手くいく保証は無かったけど、それでもこの方法でなんとか出来たことで、私はほっと一息を吐く。


「あの時の事とか、魔力操作を教わったりとか、借りを作ってばかりで気持ち悪かったからね、ここで少しは返せたみたいですっきりしたわ。」

「ふん、そこまで期待はしていなかったが、思ってたより役に立ったみたいだな。」

「やっぱりあの時私を助けたのは、これの為?」

「さあな。」

「大方、アリアス大陸出身の人なら、この症状に対処出来ると思ったとかそんな感じでしょ?」


私の予想が当たっているか分からないが、リュウレンはそれに答えない。

そして、彼は布団から起き上がる。


「もう動いて平気なの?」

「あぁ、思っていた以上に効果があったみたいだ。魔力を回路に通すこと自体は試したことあるが、いったいどういう原理だこれは。」

「そうね。ねぇ、前に試したときに魔力を通してくれたのはあなたの家族?」


私は、リュウレンが思っていたよりも早く回復したことに驚くが、彼の方も長年悩まされ続けてる症状が、突然解消され驚いてるのだろう。

疑問に思っていることを次々と私に聞いてくる。


「あぁ、そうだ。親にやってもらったけど、そん時は大して効果が無かった筈なんだが…。」

「うーん、嬉しいんだか嬉しくないんだか微妙なんだけど、今回は私が未熟だったから逆に良かったのよね。」

「詳しく教えてくれ。」

「あくまでも予想よ?」


これから話すことは全て仮説であり、正しいとは限らないと言うことを前置きして、私はまず、体内にも空気中にも魔素と言うものが存在し、それが1~3個の塊によって形成されていると言うことを簡単に説明する。


「それで、メリッサから話を聞いたときに、体調不良の原因に魔素が関係してるんじゃないかって思ったんだけど、今日の状態は、去年までとそんなに変わらないように感じたのよね。」

「だったら違うんじゃねえのか?」

「ううん、今日1日ずっともやもやしてたんだけど、この部屋に入ったことでようやくその正体に気付けたの。」


もしもこの私の予想が正しければ、スイネグ先輩の理論の証明にも繋がる。

そう考えると、私は今知識の最先端に居るのだと言う興奮が抑えきれない。


「おい、勿体ぶらないでさっさと続きを話せよ。」

「あっ、ごめん。それでね、私が気付けた理由なんだけど、あなたはこの部屋の中と外で魔素の濃さが全く違うのは感じられる?」

「………いや、分からねえな。けど、確かにこれは魔力酔いに近い感じがするな。」


リュウレンはそう言って部屋に戻ると、ベッドに腰掛けて私が話すのを待つ。


「実は今、この部屋の外は3個の魔素の塊が多い、つまりはアリアス大陸のような環境になってるの。」

「………。」

「しかもそれが朝起きたときからなんだから、違和感に気付けない訳よね。」

「それが魔力が濃いってやつか。」

「そう。だけど、この部屋だけは違う。」


私は、今居る部屋だけが魔素の薄い理由として、恐らく彼が無意識に空気中の魔素を取り込んでしまっていること。

以前家族が対処しようとした時は、彼らの操る魔力の濃度も濃く、効果が得られなかったこと。

そして今回は、私の魔力に3個の塊の魔素が少ないために、彼の魔力を薄めることが出来たのであろう事を説明する。


「ここまで聞いて、分からないことはまだまだあると思うけど、私が説明出来ることはこれ以上無いかな。」

「要するに、この症状に対処するには、またお前に頼るしかねえってことか…。」

「嫌なら別に良いけどね。私は自分の理論を証明するついでに借りを返しに来ただけだから。」

「まさかこんなに早く返されると思ってなかったけどな。」


私が話はこれでおしまいとばかりに立ち上がると、リュウレンも大きくため息を吐いて背中から倒れ込む。

これでこのまま自分の部屋に帰っても良かったのだが、私はもう1つ借りを返すためにキッチンへと向かう。


「あの時の私と違って、あんたは自由に動けるみたいだけど、今日はその部屋から出ない方が良いと思うから、一応晩御飯だけ簡単なの作っておくわよ。」

「別に…要らねえよ。」

「良いのよ。これで貸し借り無しって事にしたいんだから、そこで寝てなさい。」


そう言って、早速料理に取り掛かろうとすると、突然寮の入り口からガチャガチャッと音が鳴る。

いきなりの事に驚いてしまうが、テーブルに置いてあるお弁当箱を見て、持ち主が取りに来たのではないかと考える。

私が来たときには元々鍵が開いていたので、どうすれば良いのかと狼狽えていると、リュウレンが扉の方へ『まだ中身を食べ終わってねえんだ。すまねえが、明日洗って返す。』と声を掛ける。


「………追い返して良かったの?」

「今開けるわけにもいかねえだろうが。」

「そうね、正直私もここに居るのはあまり見られたくないし。いつの間にか後夜祭?って言うのも終わったのかしら。とりあえずこれを作り終わったら早めに帰るわ。」

「あぁ、そうしてくれ。」




「一応これ、冷めても大丈夫だから。」

しばらくして、ご飯を作り終えると私は彼にそう声を掛ける。


「…あぁ、今日は助かった。」


すると、そんな風に短くお礼の言葉を伝えられる。


「鍵、そのままで良いの?」

「あぁ、あとで自分で閉める。」

「そう。それじゃ、もう行くわね。」

「……今日の事は、誰にも言うなよ。」

「そんな事言われなくても分かってるわ。私だって知られたくないし。」


最後に私は、彼にまだ魔素が濃いのであまり外出しないようにと注意をすると、外に人の気配が無いことを確認して、自分の部屋へと戻る。




「はぁ、今日はなんか凄く疲れたなぁ。」

寝る準備を整えて、布団に突っ伏すと私はそう呟く。


「明日になったら、もう元に戻ってるのかな。まぁ、そうじゃなかったら色々大変か。」


最初の頃は、何故かリュウレンに敵視されてたり、環境に馴染めなくて辛い思いもしたけど、入学から半年してあいつの態度も幾らか軟化してきてるし、頼りになる先輩もできて、少しずつだけどこの学校に来て良かったと思える日が増えてきてる。


「まぁ、今日は単純に体調が悪かったからってだけかもしれないけど。」


そうして1日を振り返り、明日スイネグ先輩に会ったら、今日の事を何から話そうかと考えているうちに、気が付けば私は、深い眠りに落ちてしまっているのだった。

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