47 文化祭・後編
「それじゃあ、行ってくるね。」
「うん、気を付けて。」
お昼休みが終わると、私は救護室へ向かうレイナとメリッサを見送っていた。
「さて、私はどうしようかな~。」
午後にはレイナが居なくなってしまうので、残った3人で外の屋台等を見に行くのかなとか思ってたのだけど、お昼ご飯を食べようとしたときに、サヤカが『ちょっと気になることがある。』と言って教室を出たきり帰ってこないし、メリッサも『あたしも救護室に着いて行こうかな。一応世話になったし、挨拶ぐらいしておくか。』とか言ってレイナと一緒にいってしまった。
なので、結果的に今は私一人が教室に取り残される形になってしまい、この後の文化祭をどう楽しもうかと考える。
だがまぁ、せっかく色々な出し物があるのだし、一人で回ってみるのも悪くないだろうと思い教室を出ると、「ま、待って…。良かった、まだいた…。」と、息をきらせたサヤカがこちらへやって来るのが見える。
「戻ってきたのね。」
「うん、あれ?レアしか居ないの?」
「そうね。2人はもう救護室に行っちゃったから私だけよ。」
「そうなんだ。この後は?」
「特に決めてなかったけど、どうする?外の屋台でも見に行こうか?」
「良いね。わたしレアと一緒に行けるの楽しみにしてたよ?」
この後の予定が決まると、私達はお喋りしながら外へ向かう。
「ねぇ、お昼はどこに行ってたの?」
「えっと、少し気になることがあったから。」
「気になること?」
「うん、朝メリッサがお化けの話をしてたけど、それ以外でも変な噂があるとか色々…」
「へー、噂か。例えばどんなの?」
「あんまりちゃんと覚えてる訳じゃないけど…」
そう言ってサヤカが、メリッサから聞いた話を教えてくれるが、内容を纏めると、今年はたまたま休日だったけど、文化祭は曜日に関係なく10月31日に行われる。前日まで元気だったのに、この日になると突然体調を崩す、酷いときは亡くなってしまう人がいる。それと関係があるのか分からないが、朝にはいたはずの人が、文化祭の終わり頃には姿を消していると言う話だった。
「それで、一応元気かどうか様子を見てきたの。」
「そうだったのね。最後の話はともかく、必ずこの日に開催するってことは、お化けとかの話はあながち只の伝承って訳じゃ無いのかも知れないわね。」
「う、うん。それでね、昨日メリッサから渡されてた物があるんだけど…」
サヤカが聞いたものは、季節の変わり目だから体調には気を付けろと言う話にしては日付が限定過ぎる。
それに、ちゃんと覚えてる訳じゃないけど、今日ここで感じる空気は、去年までのこの時期と大して変わらないように思える。
それなのに、一体何故この大陸でだけ、しかも10月31日に限定してこんな話が伝承されているのか。スイネグ先輩に教えて貰いたいことがまた増えたななんて考えていると、サヤカが懐に手を入れて、何かを出すべきか出さぬべきかとモジモジとし始める。
「ん?何を貰ったの?」
「えっと…これなんだけど…。」
「あれ?これってもしかして、さっきスイネグ先輩が着けてたみたいな?」
「うん…狼耳のカチューシャ…。」
「あら、持っているならどうして着けないの?」
「あの…少し…恥ずかしくて…」
「良いじゃない!せっかくだし着けてみなさいよ。」
サヤカはそう言うと、すぐにまた仕舞おうとするが、私はそれを押し留める。
「うぅ…、どう…かな?」
「とっても似合ってるわよ。かわいいわ。」
「そう…、ありがと…」
彼女はカチューシャを頭に付けると、顔を赤くしながらこちらを見上げ感想を求めるので、私は素直にそう答えてやると恥ずかしそうにお礼を言って俯いてしまう。
しばらくして、カチューシャを外そうとするサヤカを宥めて2人で屋台巡りをしていると、少し離れた所から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「だーかーら、別にあたしが今1人なのは、友達が居ないからじゃねぇっつうの!」
「そんな大声出してどうしたのよメリッサ。」
「おぅ、お前らちょうど良いところに。ってか、結局その耳持ってきてたんだな。」
「うぅ、み、みるなっ!」
何やら言い争いをしてたようだが、メリッサは私達を見付けるとニコニコと近付いてくる。
そんな彼女を見て、サヤカがカチューシャを外そうとしたり、メリッサそれを止めようと腕を押さえ付けたりとしていたが、私は取り敢えずそれを無視して屋台の方に行く。
「おや、君はあの嬢ちゃんの知り合いかい?」
「知り合いって言うか友達ですけど、さっきは何を…
「おい、だから言っただろう!あたしが1人で居たのは偶々だって。」
「そうかそうか、そりゃ良かった。」
「とか言う、あなたは…」
屋台に近付くと、何故か知らないおじさんがいて、その人から話し掛けられたのだが、どうやら以前に広場で屋台を出していたみたいで、そこでメリッサと知り合いになったらしい。
そして今日は、火の扱いもあると言うことで、手伝いに来てくれてるそうだ。
「今度友達を連れてきたらサービスしてやるって言ったんだがな、いつも1人で来るから心配してたんだ。」
「まったく余計なお世話だってのに…。」
「友達と言えば、レイナとは一緒に居ないのね。」
「あぁ、あいつなら外の見回りがあるって言ってたけどどうせ………、おっ、やっぱり居たな。向こう見てみろよ。」
メリッサは、当初の目的であった先輩への挨拶を済ませたようでレイナとも既に別れていたみたいだが、彼女の指差す方向を見ると、見回りと言う名目でサク先輩とのデートを楽しんでるレイナの姿を見付けることが出来る。
「なんだかとっても楽しそうね。あれは…邪魔しちゃ悪いかしら。」
「おうおう、青春って感じで良いねぇ。お前さん達もちゃんと相手を見付けるんだぞ。」
「うっせーよ!だからそう言うのが余計なお世話だって言ってんだろ!!」
「メリッサ、落ち着いて。」
レイナ達の様子を見て上機嫌になってたメリッサだったが、おじさんの一言で再び言い争いになりそうになったところを、サヤカが抑える事でその場を納める。
その後、『約束してたからな。ほら、サービスだ。』と言って、無理矢理押し付けられた串焼きを手に、私達はメリッサから過去にあった文化祭の話や、狼人間など仮装の元となった化け物達のお伽噺を聞きながら、文化祭の残りの時間を楽しむのだった。




